ドライアイ

【ドライアイの“原因の説明:免疫学の考え方より】

○ 「涙が減っている」以外も多い疾患:原因の根底は、“眼表面の炎症”にあります。

◯ まばたきのたびに目の表面に張る涙:
 3層構造の「涙液層(tear film)」の状態を、眼科の細隙灯顕微鏡でチェックします。

◯ 「涙液層の状態の不安定性」から、目の不快感・みづらい等 様々な自覚症状を伴う
 目が乾く・目がごろごろする・目が痛む・充血する・目が重たい感じがする・なみだ目・自然に涙が出る・外に出ると涙が出る・みえづらい・光がまぶしく感じる 等

“眼表面の炎症をおさえること”を主眼に置いた治療をおこなっています。

✔ ドライアイ以外の疾患がみつかることもあります。

涙液の層構造:それぞれの層の構成成分

涙液層の状態は、細隙灯顕微鏡を用いたフルオレセイン染色検査によって観察されます。

ドライアイに関連する眼組織(眼表面)

* シェーグレン症候群のドライアイ:涙腺に強い自己免疫性炎症を起こしている状態。

Tear Layers(涙液層)[30秒の動画]

・涙は目の表面を潤滑に保って、外界をきれいにみえるようにする役割があります。

・まばたきをすると、tear filmが目の表面に形成されます。

・3つの層にわかれています。

 外側は油の層

 水の層はいわゆる”涙”

 ムチン層は水の成分を目の表面に均一に広げる役割があります。

・目の表面を潤滑に保つのには、3層の構造が完全であることが重要です。

EyeSmart — American Academy of Ophthalmology

ドライアイの定義:

「様々な要因により涙液層の安定性a)が低下する疾患であり、眼不快感b)や視機能異常c)を生じ、眼表面の障害d)を伴うことがある」(2016)

日本眼科学会雑誌「ドライアイ診療ガイドライン」(2019年5月)

ドライアイについて:日本眼科学会雑誌より

○ ドライアイの主なメカニズム(コアメカニズム):
・涙液層の不安定化(まばたきのたびに目の表面に張る なみだの状態が不安定になっている)
・瞬目時の摩擦亢進(まばたきをすることで黒目の表面がこすれる)

○ 診療について:

a) 涙液層の安定性
フルオレセイン試験紙により眼の表面を染色し、涙液層破壊時間(Breakup time, BUT)の測定により涙液の3層構造(油層/水層/ムチン層)の安定性を評価します。

b) 眼不快感
問診により判断します。いまの状態を、遠慮なくおっしゃってください。
質問票(Dry Eye related Quality of life Score (DEQS))を用いることも可能です。

c) 視機能異常
必要に応じて、視力検査・角膜形状解析・波面収差解析などをおこないます。

d) 眼表面の障害
a) と同時に評価します。

シェーグレン症候群に伴う角膜上皮障害等。

涙液の3層構造[25秒の動画]

・涙は目の表面を潤滑に保って、外界をきれいにみえるようにする役割があります。

・まばたきをすると、tear filmが目の表面に形成されます。

・3つの層にわかれています。

 外側は油の層

 水の層はいわゆる”涙”

 ムチン層は水の成分を目の表面に均一に広げる役割があります。

・目の表面を潤滑に保つのには、3層の構造が完全であることが重要です。

EyeSmart — American Academy of Ophthalmology

○ ドライアイの有病率はどのくらいか?
日本での40歳以上の住民を対象にした大規模疫学調査(Koumi Study)では、男性12.5%、女性21.6%であった。

○ ドライアイ発症に及ぼす、外的因子(地域、人種、年齢、季節、性別)は?
地域差   :明確なエビデンスはない
人種間の差 :白人の女性よりもヒスパニック系およびアジア系の女性では有病率が高い
季節    :冬から春にかけて有病率が高い
性別    :女性の有病率が高い
年齢    :加齢が危険因子

○ ドライアイ発症に及ぼす、ライフスタイルの影響(喫煙、VDT作業、コンタクトレンズ装用)は?
喫煙    :ドライアイ発症の危険因子
長時間のVDT作業作業/オメガ3脂肪酸よりオメガ6脂肪酸の摂取量が多いこと
      :ドライアイ発症の危険因子
コンタクトレンズ装用
      :危険因子かどうかは不明

○ ドライアイ関連疾患について
薬剤性角膜上皮障害
 各種点眼により、防腐剤の影響が出ることがあります。他に抗緑内障薬の影響等。
 点眼薬を減らす/中止、または防腐剤の入っていない点眼薬を使用することもあります。

マイボーム腺機能不全
 まぶたの縁に、アクネ菌の感染アレルギーが生じていることがある。

上輪部角結膜炎
 甲状腺眼症にともなうもの 等。

神経麻痺性角膜症
 脳外科手術後、角膜ヘルペス罹患後など 三叉神経の障害。

糸状角膜炎

結膜弛緩症
 結膜がゆるんだ状態:日常診療では数多く遭遇しています。

lid-wiper epitheliopathy
 まぶたの裏の結膜の障害。ソフトコンタクトレンズを使用されている方に多く生じます。

 * 必要に応じて、涙点プラグ・ジクアホソルナトリウム点眼の治療等も考慮します。

ドライアイ[60秒の動画]

・多くのひとがこまっている、”ドライアイ”についてお話します。

・症状はそれぞれでだいぶちがいます:

不快感があることも、涙があふれることもある、充血したり、刺すような痛みがある、熱く感じることもある

・原因もいろいろあります:

アレルギー、大気汚染、喘息の薬を使用中、コンピューターの長時間使用、など。

・自身で解決できることもありますが、どうにもならないこともある。そのときは早めに眼科を受診しましょう。

・ドライアイは、他の全身症状のひとつの徴候であることもあります。

EyeSmart — American Academy of Ophthalmology