「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」とは?

ドライアイ、
の言葉から受けるイメージとは違っても、ドライアイの判断となることが多くあります。

ドライ・アイ=目が乾く
という言葉がとても簡単でわかりやすいですが、
「ドライアイ」には、「乾く」「ドライ」以外の意味がたくさんあります。

日本眼科学会によるドライアイの診断基準は2016年に変更されています1

現在のドライアイの診断基準は以下の通りです。

  1. 涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下であり、
  2. かつ自覚症状(眼不快感または視機能異常)を有する場合、


ドライアイと診断されます2

この診断基準に基づいた話です。

目次

「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」とは?

2つの涙:基礎分泌の涙とは

涙の分泌のされ方には2種類あります。

  1. 情動性分泌:感情に反応して分泌される涙
  2. 基礎分泌:目の健康を保つために常に分泌される涙

嬉しいとき・悲しいとき・感動した時などに出てくる涙「情動性分泌」と、
ドライアイに関わる涙「基礎分泌」は、違う性質を持ちます。

「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」の場合、基礎分泌の涙の状態が問題となります3

基礎分泌の涙は、3層構造になっています。

  1. 油層(脂質層/表面膜):蒸発を防ぎ、涙が目の表面に均一に広がるのを助けます。
  2. 水層(水溶性層):目を清潔に保ち、栄養を供給します。
  3. ムチン層(粘液層):涙液を均一に広げ、目を保護します。

ドライアイと判断する根拠

2つの判断基準を用います。

1. 涙液層破壊時間(BUT)

まばたきをすると表面張力で涙が目の表面に張ります。英語でtear film(ティア・フィルム)、「涙のフィルム」とも呼ばれます4

この「涙の層」の安定性は、眼科で簡単に検査(評価)することができます。

  • フルオレセイン試験紙を下まぶたに少しだけ付ける
  • まばたきすることで色素が目の表面に広がる
  • 眼科の診察室に必ずある「細隙灯顕微鏡」で眼科医が観察する

これにより、以下の点を主に見ています。

  • きれいに涙が張っているか(涙液の3層構造が保たれているか)
  • 涙の層が破壊される時間は?(Break Up Time, BUT)
  • 目に傷がないか

2. 自覚症状(眼不快感または視機能異常)

自覚症状は診療の際の問診でお伺いします。

  • 目が乾く
  • 目がごろごろする
  • 目が痛む
  • 充血する
  • 目が重たい感じがする
  • なみだ目
  • 自然に涙が出る
  • 外に出ると涙が出る
  • 眼不快感とは:目の乾燥感、異物感、痛み、かゆみなど
  • 視機能異常とは:視力の低下、かすみ、コントラスト感度の低下など5

ドライアイの症状は、「目が乾く」以外がほとんどですね

以上の症状がある場合、ドライアイの診断基準に当てはまる可能性があります。

「乾く」「ドライ」ではなくても、「ドライアイ」の原因/対処

涙の3層構造:それぞれの状態がどうなっているか?
と考えます。

ドライアイ
  1. 油層(脂質層/表面膜):蒸発を防ぎ、涙が目の表面に均一に広がるのを助けます。
    マイボーム腺から分泌される脂質(油)で構成されており、涙の表面に浮かんで蒸発を防ぐバリアを作ります。
    これにより、涙が長時間目の表面に留まり、目を潤し続けることができます。
  2. 水層(水溶性層):目を清潔に保ち、栄養を供給します。
    涙腺から分泌される水分で構成されており、涙液の主成分です。
    水層は目の表面を洗浄し、異物や細菌を除去するとともに、酸素や栄養を目の細胞に供給します。
  3. ムチン層粘液層):涙液を均一に広げ、目を保護します。
    結膜の杯細胞から分泌される粘液(ムチン)で構成されており、涙液が目の表面に均一に広がるのを助けます。
    ムチン層は目の表面に涙を保持し、涙の滑りを良くして、角膜と結膜を保護します。

3つの層「涙液層(ティアフィルム)」が協力して機能することで、
目の表面を潤し、保護し、快適な視覚を維持しています。
各層の役割を正しく理解することで、ドライアイの診断や治療がより効果的に行われるようになります6

それぞれの層に対する対処法は以下の通りです。

  1. 油層:目を温めることでマイボーム腺から油を分泌させ、安定化を図ります。
  2. 水層:ヒアルロン酸の点眼で補います。
  3. ムチン層:ジクアス・ムコスタなどの薬剤を使用します。

初めの対応として、目の表面の炎症を抑えることが基本となります。

欧米では、免疫抑制剤(シクロスポリン点眼)を使うことが一般的です。

本邦では保険適応がないため、眼科でとてもよく使用されるステロイド点眼(フルメトロン)を使用します。
0.1%に薄めてあるため、ほとんど副作用が起こらないことが特徴です。

フルメトロンには、眼圧上昇・ステロイド緑内障・白内障形成などの合併症がほとんどありません7

でもごくまれに眼圧が上がることがあるので、ときどき眼科で眼圧をチェックする必要があります。

「眼圧が上がった気がする」
自覚症状につながる眼圧上昇はほとんどありません。
実際の数字を、眼科にある眼圧測定器を用います。

眼圧の測定方法は主に3つ
A. 空気が出てくる眼圧計:眼科検査の最初に使う機械です
B. ゴールドマンアプラトノメーター:緑内障・緑内障疑など、眼圧をより正確に測る必要がある際に使います
C. 新しい眼圧計:iCare

空気が出てくる眼圧計が苦手・緊張が強い(=不正確な値が出てしまうことがある)かたは、
新しい眼圧計:iCareを使用します。

うまく行かなければ、次の方法を考えます。
涙点プラグを考慮されることがあります。

ドライアイに対するIPL (Intense Pulsed Light) 治療は、慎重に考慮される必要があります。

「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」:
眼表面の炎症コントロールを主体に、考えます。

白内障手術後・その他の眼内手術後の違和感

  • 見えるのは見える
  • どうかある
  • 違和感が残っている

白内障手術の後、見えるようにはなっても違和感が残る場合、
「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」:原因となることも考えられます。
涙液層の安定性を高めることが重要かもしれません。

疲れ目・眼精疲労の原因

毛様体筋の緊張と併せて、
「乾く」「ドライ」ではなくても「ドライアイ」:原因の一つと考えられます。
調節機能解析装置を用いて現在の状態を判断します。

ドライアイの診断基準:2016年以前との違い

以前は、涙液分泌量や角結膜上皮障害が診断基準に含まれていました。

  • いつも目の表面を潤している涙(ティアフィルム)の状態
  • 黒目と白目に傷があるか
  • 目の傷があるかどうか
  • 目の傷の程度

2016年の改訂でこれらの項目が外されました。

現在は、涙液層の不安定性(BUTの短縮)と自覚症状のみが診断基準となっています1,2

この変更により、涙液層不安定型のドライアイが適切に診断されるようになりました。

「ドライアイ」の名称から受けるイメージと、実際の状態は異なることがとても多いです。

存在しない名前ですが、
“涙液層不安定症候群”と考えることが「ドライアイ」の理解の助けになるかもしれません。

参考文献

  1. 日本ドライアイ学会, 2016. 日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版). 日本眼科学会誌, 120(4), 284-293. p. 290. https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=309&dispmid=909
  2. ドライアイ診療ガイドライン 日眼会誌123:489-592,2019 https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=315&dispmid=909
  3. Messmer, E.M., 2015. The Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment of Dry Eye Disease. Dtsch Arztebl Int 112, 71–82. https://doi.org/10.3238/arztebl.2015.0071
  4. Zeev, M.S.-B., Miller, D.D., Latkany, R., 2014. Diagnosis of dry eye disease and emerging technologies. Clinical Ophthalmology 8, 581–590. https://doi.org/10.2147/OPTH.S45444
  5. Tsubota, K., Pflugfelder, S.C., Liu, Z., Baudouin, C., Kim, H.M., Messmer, E.M., Kruse, F., Liang, L., Carreno-Galeano, J.T., Rolando, M., Yokoi, N., Kinoshita, S., Dana, R., 2020. Defining Dry Eye from a Clinical Perspective. Int J Mol Sci 21, 9271. https://doi.org/10.3390/ijms21239271
  6. Pflugfelder, S.C., Stern, M.E., 2020. Biological Functions of Tear Film. Exp Eye Res 197, 108115. https://doi.org/10.1016/j.exer.2020.108115
  7. Morrison, E., Archer, D.B., 1984. Effect of fluorometholone (FML) on the intraocular pressure of corticosteroid responders. Br J Ophthalmol 68, 581–584.
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