緑内障/視神経乳頭陥凹拡大

【緑内障の早期発見〜手術を避ける緑内障診療】

◯ かなり進行するまで、自覚症状がありません。
 
◯ 治療方法が発展した現代では、効率的に眼圧を下げることができるようになりました。
 
○ 「予防医学」リスクファクターを知って早期発見できれば、失明に至ることは非常に少ない疾患となっています。
 
✔ “目が悪い”(近視)/40歳以上の方:眼科検診が重要
 
✔ 幅広い意味をもつ「緑内障」の病名(疑い~軽症~重症まで)に対して、説明・理解を大事にした診療
 
✔ 点眼、またはレーザー(SLT)により眼圧下降をはかります。

カメラのフィルムにあたる部分「網膜・視神経」に異常が出ていないか

○ 目の中の水の循環の変動は「眼圧」としてあらわれます。
水晶体の周りの「毛様体」から産生された水(房水)がくろめの裏(前房)を満たしメッシュ構造をもつ「線維柱帯」を通って、目の外の血管へ流れて行きます。

眼圧


 
○ この間のバランスが悪くなると眼圧が上がり、長い時間をかけて目の奥の神経を傷めていきます。=「緑内障」

○ 心配な緑内障か、そうでないか:
「緑内障」のことばには、グラデーションがあります。

https://doi.org/10.1016/j.ajo.2004.04.054

○ 眼圧以外に緑内障の進行に関わる因子には、
・視神経の周りの血流
・酸化ストレス
・全身疾患(睡眠時無呼吸症候群、高血圧、低血圧、糖尿病 等)
・喫煙
などもあります。

○ 緑内障治療の対象でエビデンスがあるとされているのは、唯一「眼圧」を下げることです。
 
 点眼で眼圧下降をはかることが、緑内障診療の基本です。
 
 現在では、レーザーによる房水排出路改善を考慮されることもあります。
 (SLT, selective laser trabeculoplasty: 選択的レーザー線維柱帯形成術)
 
 ✔ 抗緑内障薬を点眼する前のSLT(第一選択としてのSLT治療)が有効であるという研究結果も、増加しています。

緑内障とは
図解でわかりやすく説明します:

✔ 開放隅角緑内障
房水排出路に抵抗があり、眼圧が上がる。
* 多くの緑内障は、この状態です。
 
「正常眼圧緑内障」も重要です。
・循環障害
フラマー症候群
         等

(1) ぶどう膜強膜流出路(副経路)に作用し房水を流す
 :プロスタグランジン関連薬
 キサラタン、ラタノプロスト、タプロス、トラバタンズ、ルミガン
 
(2) 房水の出方を緩くする(房水産生抑制)
 :(2a) β神経遮断薬
 ミケランLA、チモプトール、チモプトールXE
 :(2b) 炭酸脱水素酵素阻害薬
 エイゾプト、トルソプト
 
(3) 線維柱帯・シュレム管(主経路)に作用し房水を流す
 :ROCK阻害薬
 グラナテック
 
それぞれを組み合わせた、合剤(配合剤)も使用します。
点眼回数を減らせることが主な利点です。

✔ 開放隅角緑内障・高眼圧症
房水排出路(線維柱帯)に、低エネルギーのYAGレーザーを照射:SLT
→色素を選択的に減少させ、眼圧下降をはかる。
* 線維柱帯 その他の組織にダメージを与えません。
 
・点眼が困難なかた(副作用/仕事が不規則/妊娠・授乳中/点眼を忘れやすい等)
・点眼で十分な眼圧下降が得られないかた 等

緑内障の分類:開放隅角と閉塞隅角

緑内障の目に、白内障手術をする理由:
隅角(水の通り道)を広くして、眼圧を下げる。


Optic Nerve Fibers(視神経線維)[34秒の動画]
 
・正常の視神経は、100万本の神経線維からできています。
 
・緑内障が進んでくると、視神経がダメージを受けて、視神経乳頭陥凹(へこみ)が大きくなってきます。
 
・そして、見えていない部分(暗点)が広がってきます。
 
・眼科で視野検査をすることで、自覚症状のない暗点を検出することができます。


緑内障について[56秒の動画]
 
・光は角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通って網膜に到達します。
 
・網膜の中心部「黄斑部」とその周辺の網膜から光はシグナルに変換され、視神経を通って脳に情報が伝達されます。
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経が傷めていきます。

開放隅角緑内障[38秒の動画]
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経を傷めていきます。

閉塞隅角緑内障[44秒の動画]
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。房水が流れていく部位を「隅角」と呼びます。
 
・隅角が狭く、房水が流れて行きづらいことがあります。
これを「閉塞隅角緑内障」と呼びますが、頻度は多くありません。
 
・アジア人、遠視(若いころから”目がいい”)のかたはリスクが高いです。

緑内障について[2分20秒の動画]
 
・緑内障は脳の奥に情報を伝達する「視神経」を傷めていく病気です。
 
・幸いなことに、早期発見できればたくさんの治療の選択肢があって、視力を守っていくこともできます。
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経を傷めていきます。
 
・緑内障は初期には自覚症状がありません。適切な治療で進行を止めたり遅らせて、視覚障害の進行を防ぐことができます。
 
・60歳以上、アフリカ系アメリカ人、眼圧が高いかたは特に眼科受診で緑内障評価が重要です。
 
・緑内障が進行して視神経障害が進んでしまうと、戻すことができません。
 
・緑内障と診断されて、適切な点眼治療をすることができれば視覚障害に至ることは少なくなってきました。
 
・高眼圧の方も眼圧下降治療効果があるようです。
 
・リスクファクターのあるかたは、必ず定期的に眼科受診をすることが重要です。

緑内障に対するレーザー手術[3分12秒の動画]
 
・緑内障の治療のため、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)が推奨されることがあります。
 
・眼圧が上昇することによって、緑内障の病態は悪化します。
 
・SLTにより目の中の水の流れを改善させ、眼圧を下げます。
 
・前眼部で「房水」が産生され、正常では線維柱帯と呼ばれるメッシュ構造の組織より適切に排出されます。
 
・緑内障では、メッシュ状の「線維柱帯」からうまく房水が排出されず眼圧が上昇し、目の奥の視神経の障害につながります。
 
・SLTでは特殊なレーザーを用いて、流出路を改善します。
 
・外来でおこなうことができます、終了後落ち着いたら帰宅できます。
 
・麻酔により、目を少し押された感覚がある程度の痛みです。
 
・特殊なコンタクトレンズを眼球に接触させ、レーザーを正確な位置に照射します。
 レーザー治療をおこなったあと、正常に房水が排出されることが期待されます。
 その結果、眼圧が下降します。
 
・合併症として、
 一時的・恒久的な眼圧上昇/虹彩の腫れ/まぶしさ/角膜混濁/虹彩癒着による眼圧上昇/瘢痕化組織/眼痛/視力低下/追加の処置、手術の必要性 等
 一般的な手術に伴うものも多く挙げられます。
 
・代替の治療手段としては、
 点眼治療/緑内障手術
 
・眼科医はレーザー治療の必要性について、十分な説明をおこないます。
 
・レーザー治療を行っても、思うように眼圧が下がらないこともあります。
 治療がされないまま、また治療が不十分であると、
 緑内障は失明につながる疾患です。
 
・不明なことがあれば、遠慮なく眼科医にお尋ねください。
 リスク・効果について詳しく説明をおこないます。
 
・その他一般的な目に関する質問も、なんでも聴いてください。
 眼科医はすべてのひとの視力を守る使命があります。