目の中の水の循環の変動は「眼圧」としてあらわれます。
水晶体の周りの「毛様体」から産生された水(房水)がくろめの裏(前房)を満たしメッシュ構造をもつ「線維柱帯」を通って、目の外の血管へ流れて行きます。
この間のバランスが悪くなると眼圧が上がり、長い時間をかけて目の奥の神経を傷めていきます。=「緑内障」
眼圧以外に緑内障の進行に関わる因子には、
・視神経の周りの血流
・酸化ストレス
・全身疾患(睡眠時無呼吸症候群、高血圧、低血圧、糖尿病 等)
・喫煙
などもあります1。
緑内障治療の対象でエビデンスがあるとされているのは、唯一「眼圧」を下げることです。
眼圧は一日のうち上がったり下がったりしています。
診察に来られた時間の瞬間のみ測る「眼圧」では、経過をみるには不十分である可能性があります。
目の中でもろくなった組織が小さな粒子(落屑)となって、メッシュ構造の線維柱帯に詰まってしまい眼圧が上がる緑内障:落屑(らくせつ)緑内障
では、日内変動が大きいことが知られています。
- 地域差があり、福岡県筑後地方(八女市・久留米市周辺)で多いことも知られています2。
そのため緑内障の診療では24時間の眼圧変動を知ることが重要となることがあります3。
“働き方改革” の概念がなかったころには一人の若手医師が担うこともありましたが、実際に眼圧の日内変動を測定することは非常に困難です。
2018年センサー内蔵の医療用コンタクトレンズが承認され、実際に使用されるようになってきました。
トリガーフィッシュ(SENSIMED Triggerfish®)4
シリコーン型ソフトコンタクトレンズに組み込まれたセンサーが角膜/強膜の形状変化をとらえ、アンテナを通じて同時に装用するプロセッサからパソコンにbluetooth接続され、「眼圧」を測定します。
・トリガーフィッシュは、終日装用することができる
・よく知られている「入眠時の眼圧上昇」は、トリガーフィッシュによりとらえることができている
とされていますが まだ多くの限界があり、
・正確な「眼圧」ではなく、目の形の変化→眼圧に相関した値 であること
・臨床的なエビデンスは十分でないこと
・眼鏡の金属フレームに干渉すること 等
正確な眼圧との相関は、間接的な証拠のみにとどまるものです。
現在では一部の大学病院/総合病院でのみ使用されています。
(参考)
- Glaucoma history and risk factors
Charles W. McMonnies⁎
J Optom. 2017 Apr-Jun; 10(2): 71–78. - 福岡県筑後地方における落屑症候群の患者調査
荒木理子 , 山本佳乃 , 上原浩嗣 , 伊井田美絵 , 松永次郎 , 劉百良 , 三好和 , 熊野けいこ , 山川良治 (久留米大)
日本眼科学会雑誌 (Journal of Japanese Ophthalmological Society). 2004年; 108 号 p.250. - Twenty-four-hour intraocular pressure pattern associated with early glaucomatous changes.
Liu JH1, Zhang X, Kripke DF, Weinreb RN.
Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003 Apr;44(4):1586-90. - Continuous intraocular pressure monitoring with a wireless ocular telemetry sensor: initial clinical experience in patients with open angle glaucoma.
Mansouri K1, Shaarawy T.
Br J Ophthalmol. 2011 May;95(5):627-9.