緑内障のレーザー治療(SLT)【動画でご紹介】

緑内障に対して、レーザー治療が有効なこともあります。

○目の中の”水の通り道”「隅角/線維柱帯(ぐうかく/せんいちゅうたい)」の通りを良くすることで、眼圧下降をはかります。

目次

緑内障のレーザー治療(SLT)【動画でご紹介】

  • 点眼麻酔の後に、特殊なレンズ(隅角鏡)を付けます。
  • 線維柱帯へ、低エネルギーのYAGレーザーを照射します。
  • 半周あたり50発程度、全周の隅角へレーザー照射をおこないます。
  • レーザー照射サイズは400μmです。パワーは0.8mJ程度。
  • 隅角に詰まった色素細胞が、眼圧上昇に関わっています。
  • [照射後の線維柱帯の内部]炎症細胞・サイトカイン(蛋白)が集まってきます。
  • 炎症細胞(マクロファージ)が、色素細胞をたべます。
  • 組織のダメージなく、線維柱帯の通りを改善します。
  • 毛様体上皮→線維柱帯に向かって、房水は流れます。
    線維柱帯の通りが改善し、眼圧が下降します。
  • 色素の少なくなった線維柱帯(拡大図)
    房水の通りが良くなっています。

(Ellex社 動画より)

「選択的レーザー線維柱帯形成術」Selective Laser Trabeculoplasty, SLT

 通常の外来でおこないます。(保険適用:隅角光凝固術)

○対象:開放隅角緑内障・高眼圧症と診断されたかたのうち、

・点眼が困難なかた(副作用/仕事が不規則/妊娠・授乳中/点眼を忘れやすい等)
・点眼で十分な眼圧下降が得られないかた、

 などへ、適応が考慮されます。

✔ SLTは1995年にはじめて行われて、2001年にFDAの承認を得られて普及してきた治療です1
✔ 最近の臨床研究にて、高い治療効果が相次いで確認されています。
✔ 失われた視野を回復させるものではありません。
✔ レーザー後当日より、通常通りの生活を続けて問題ありません。
(生活上の注意点、気をつけることなどはありません)

SLT:実際の治療の流れ

治療前後の1時間で眼圧測定を行う必要があるため、
平日の9時または14時の来院、
長めに時間を取れる日をご予約いただいています。
(待ち時間を含めて、およそ3時間以内の時間を要します)

治療当日

本日の眼圧測定・前眼部診察・角膜内皮細胞測定後、
一過性眼圧上昇を抑える「アイオピジン」を点眼します。

1時間の待ち時間

商店街をお散歩、院内の紅茶を飲んでお待ちいただくのも良いです。

治療

5-10分程度で終了します。

痛みはほとんどありません。

眼圧測定

前眼部の状態を診察、眼圧測定後
「アイオピジン」を点眼します。

1時間の待ち時間
治療1時間経過後の眼圧測定、診察終了

「アイオピジン」を点眼します。
3日間は少しぼやけて見えることは、予定通りです。
弱い前房内炎症が起こることにより、隅角色素が減っていく過程と考えられます。

1週間後再来

治療1週間経過後の眼圧測定。
必要に応じて、未治療片眼の治療を行います。

緑内障のレーザー治療:第一選択としてのSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)を評価した、重要な2編の論文

○イギリスのThe Lancet誌の臨床研究2
LiGHT(Laser in Glaucoma and ocular HyperTension:緑内障・高眼圧症に対するレーザー手術)研究
718人の開放隅角緑内障・高眼圧症の患者さんを、
緑内障点眼群362人(622眼)・SLT群356人(613眼)の2グループにわけて3年間検討。

✔SLT群74%は、3年間点眼せずに眼圧コントロールができるようになった。
✔医療コストの面でも、費用対効果が改善した。

○日本眼科学会雑誌の臨床研究3
42例40眼の開放隅角・正常眼圧緑内障(Normal Tention Glaucoma, NTG)に対して、SLT第一選択の治療を3年間おこなった。

✔SLT後3年間は、眼圧が有意に下降した。
 (15.8±1.8mmHg→13.5±1.9mmHg; p<0.001, paired t-test)
✔視野障害の進行速度を表す指標(MD slope/VFI slope):3年間の進行速度は緩徐であった。
 (ハンフリー視野計を使用)

* いずれの研究結果も、重篤な合併症がなかったことが記載されています。

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)は、なぜ効果があるのか

隅角へのレーザー照射によって集まってきた炎症細胞(マクロファージ)が、線維柱帯に詰まった色素を食べてしまう(貪食)
以上が、主要なメカニズムと考えられています4

昔に行われていたアルゴンレーザーによる治療(ALT)と違い、組織破壊を起こしません。

(参考)

1.Garg, A., Gazzard, G., 2018. Selective laser trabeculoplasty: past, present, and future. Eye (Lond) 32, 863–876. https://doi.org/10.1038/eye.2017.273
2.Gazzard, G., Konstantakopoulou, E., Garway-Heath, D., Garg, A., Vickerstaff, V., Hunter, R., Ambler, G., Bunce, C., Wormald, R., Nathwani, N., Barton, K., Rubin, G., Buszewicz, M., Ambler, G., Barton, K., Bourne, R., Broadway, D., Bunce, C., Buszewicz, M., Davis, A., Garg, A., Garway-Heath, D., Gazzard, G., Hunter, R., Jayaram, H., Jiang, Y., Konstantakopoulou, E., Lim, S., Liput, J., Manners, T., Morris, S., Nathwani, N., Rubin, G., Strouthidis, N., Vickerstaff, V., Wilson, S., Wormald, R., Zhu, H., 2019. Selective laser trabeculoplasty versus eye drops for first-line treatment of ocular hypertension and glaucoma (LiGHT): a multicentre randomised controlled trial. The Lancet 393, 1505–1516. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32213-X
3.正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術の有用性. 新田 耕治, 杉山 和久, 馬渡 嘉郎, 棚橋 俊郎. 日本眼科學会雜誌 2013年117号4巻, p.335-343
4.Alvarado, J.A., Katz, L.J., Trivedi, S., Shifera, A.S., 2010. Monocyte modulation of aqueous outflow and recruitment to the trabecular meshwork following selective laser trabeculoplasty. Arch. Ophthalmol. 128, 731–737. https://doi.org/10.1001/archophthalmol.2010.85

* ランセット(The Lancet):国際的に最も信頼される、世界五大医学雑誌のうちのひとつとして知られています。

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