目の病気は自覚症状のないものが多いため、”体質”を知っておくことが発見の一助になる可能性があります。
緑内障診療について
岐阜県の住民検診・疫学調査の結果より、
40歳以上の日本人の5%、70歳以上は10.8%に緑内障があり、
90%は未治療、無自覚の潜在患者であったことが示されています1。
通称「多治見スタディ」と呼ばれ、世界的な緑内障疫学研究です。
“冷え性”のあるかたに、緑内障その他の目の病気が起こりやすいことがわかってきました。
フラマー症候群(Flammer syndrome)のご紹介です2。
やせていて血圧は低めで、運動を好み活発的、手足は少し冷えやすい:
メタボリックシンドロームと対極で、通常とても健康です。
![](https://takeru-eye.com/wp-content/uploads/2022/01/The-Flammer-syndrome.webp)
血管は体の状態に応じて太さを変えて「調節」をすることが知られていますが、
フラマー症候群のかたは血管の形にも異常がありません。
調節に異常があること:
Primary vascular dysregulation (PVD)
~血管の攣縮(Vasospasm):血管が一時的にちぢむこと
が特徴とされています。
![](https://takeru-eye.com/wp-content/uploads/2022/01/Primary-vascular-dysregulation-PVD.webp)
細い血管の調節異常が生じるため、最も細かい血流を持つ目が影響を受けるものと考えられています。
多くは正常眼圧緑内障の状態となります。
・視神経にとどくべき酸素の供給が不安定となる
・酸化ストレスにより神経細胞を傷め、緑内障性視神経症の原因となる
緑内障/視神経乳頭陥凹拡大に対しては、視神経乳頭血管の状態の解析3 およびOCT血管撮影(OCTアンギオグラフィー)の有用性4も示されています。
OCTアンギオグラフィー(光干渉断層血管撮影)
![](https://takeru-eye.com/wp-content/uploads/2022/01/Optic-Disc-Vascularization-in-Glaucoma-901x1024.webp)
https://www.hindawi.com/journals/joph/2016/6956717/
フラマー症候群から引き起こされる疾患:
他には、
・網膜色素変性
・網膜動脈閉塞症
・網膜静脈閉塞症
・中心性漿液性脈絡網膜症
ものがゆがんでみえる
・レーベル遺伝性視神経症
目の病気以外では、
・多発性硬化症
・乳がん
・高山病
・耳鳴り
・突発性難聴
・神経性の無食欲症
・甲状腺機能異常
・狭心症、虚血性心疾患
・むちうち症からの回復が遅い
などが記載されています5。
以下にあてはまるかどうかをチェックしてみてください。
フラマー症候群(Flammer symdrome)の特徴:
□ 手足の冷え/冷え性(Cold hands and/or feet)
□ 低血圧(Low blood pressure; blood pressure drops especially at night)
□ やせ型(Low body mass index, Slim)
□ 機敏である(Agile)
□ 運動が好き(Sportive, Athletic)
□ 眠りにつくのに時間がかかる(Long sleep onset time)
□ のどがあまり乾かない(Reduced feeling of thirst)
□ 合わない薬がある(increased response to certain drugs)
□ 香りに敏感になっている(increased smell sensitivity)
□ 痛みに敏感になっている(increased pain sensitivity)
□ 高地での影響を受けやすい(increased high altitude sensitivity)
□ 気象の変化に影響を受けやすい(increased meteorosensitivity)
□ 振動機器を使うことが苦手(increased sensitivity to vibration)
□ 完璧主義(Remarkable assiduousness up to tendency towards perfectionism)
□ 頭痛(Headache)
□ めまい(Dizziness)
□ 耳鳴り(Tinnitus)
□ 筋肉のけいれん(Muscle cramps)
![](https://takeru-eye.com/wp-content/uploads/2022/01/FLAMMER-SYNDROME_-SYMPTOMS.webp)
(参考)
1. 日本緑内障学会多治見疫学調査報告書, 2012, 日本緑内障学会
2. Konieczka, K., Ritch, R., Traverso, C.E., Kim, D.M., Kook, M.S., Gallino, A., Golubnitschaja, O., Erb, C., Reitsamer, H.A., Kida, T., Kurysheva, N., Yao, K., 2014. Flammer syndrome. EPMA J 5, 11. https://doi.org/10.1186/1878-5085-5-11
3. Flammer, J., Orgül, S., Costa, V.P., Orzalesi, N., Krieglstein, G.K., Serra, L.M., Renard, J.-P., Stefánsson, E., 2002. The impact of ocular blood flow in glaucoma. Progress in Retinal and Eye Research 21, 359–393. https://doi.org/10.1016/S1350-9462(02)00008-3
4. Lévêque, P.-M., Zéboulon, P., Brasnu, E., Baudouin, C., Labbé, A., 2016. Optic Disc Vascularization in Glaucoma: Value of Spectral-Domain Optical Coherence Tomography Angiography. Journal of Ophthalmology 2016, 1-9. https://doi.org/10.1155/2016/6956717
5. Konieczka, K., Erb, C., 2017. Diseases potentially related to Flammer syndrome. EPMA Journal 8, 327–332. https://doi.org/10.1007/s13167-017-0116-4
(注)
レイノー現象(Raynaud’s phenomenon) 、レイノー症候群(Raynaud’s disease)とは別です。