“冷え性”と緑内障:フラマー症候群 (Flammer Syndrome)

目の病気は自覚症状のないものが多いため、”体質”を知っておくことが発見の一助になる可能性があります。
緑内障診療について

岐阜県の住民検診・疫学調査の結果より、
40歳以上の日本人の5%、70歳以上は10.8%に緑内障があり、
90%は未治療、無自覚の潜在患者であったことが示されています1
通称「多治見スタディ」と呼ばれ、世界的な緑内障疫学研究です。

“冷え性”のあるかたに、緑内障その他の目の病気が起こりやすいことがわかってきました。
フラマー症候群(Flammer syndrome)のご紹介です2

やせていて血圧は低めで、運動を好み活発的、手足は少し冷えやすい:
メタボリックシンドロームと対極で、通常とても健康です。

http://www.flammer-syndrome.ch/en/definition

血管は体の状態に応じて太さを変えて「調節」をすることが知られていますが、
フラマー症候群のかたは血管の形にも異常がありません。
調節に異常があること:
Primary vascular dysregulation (PVD)
~血管の攣縮(Vasospasm):血管が一時的にちぢむこと
が特徴とされています。

http://www.flammer-syndrome.ch/en/terminology

細い血管の調節異常が生じるため、最も細かい血流を持つ目が影響を受けるものと考えられています。
多くは正常眼圧緑内障の状態となります。

・視神経にとどくべき酸素の供給が不安定となる
・酸化ストレスにより神経細胞を傷め、緑内障性視神経症の原因となる

緑内障/視神経乳頭陥凹拡大に対しては、視神経乳頭血管の状態の解析およびOCT血管撮影(OCTアンギオグラフィー)の有用性4も示されています。
OCTアンギオグラフィー(光干渉断層血管撮影)

Optic Disc Vascularization in Glaucoma: Value of Spectral-Domain Optical Coherence Tomography Angiography
https://www.hindawi.com/journals/joph/2016/6956717/

フラマー症候群から引き起こされる疾患:
他には、
・網膜色素変性
・網膜動脈閉塞症
・網膜静脈閉塞症
・中心性漿液性脈絡網膜症
ものがゆがんでみえる
・レーベル遺伝性視神経症

目の病気以外では、
・多発性硬化症
・乳がん
・高山病
・耳鳴り
・突発性難聴
・神経性の無食欲症
・甲状腺機能異常
・狭心症、虚血性心疾患
・むちうち症からの回復が遅い
などが記載されています5

以下にあてはまるかどうかをチェックしてみてください。

フラマー症候群(Flammer symdrome)の特徴:

□ 手足の冷え/冷え性(Cold hands and/or feet)
□ 低血圧(Low blood pressure; blood pressure drops especially at night)
□ やせ型(Low body mass index, Slim)
□ 機敏である(Agile)
□ 運動が好き(Sportive, Athletic)
□ 眠りにつくのに時間がかかる(Long sleep onset time)
□ のどがあまり乾かない(Reduced feeling of thirst)
□ 合わない薬がある(increased response to certain drugs)
□ 香りに敏感になっている(increased smell sensitivity)
□ 痛みに敏感になっている(increased pain sensitivity)
□ 高地での影響を受けやすい(increased high altitude sensitivity)
□ 気象の変化に影響を受けやすい(increased meteorosensitivity)
□ 振動機器を使うことが苦手(increased sensitivity to vibration)
□ 完璧主義(Remarkable assiduousness up to tendency towards perfectionism)
□ 頭痛(Headache)
□ めまい(Dizziness)
□ 耳鳴り(Tinnitus)
□ 筋肉のけいれん(Muscle cramps)

http://www.flammer-syndrome.ch/en/symptoms

(参考)

1. 日本緑内障学会多治見疫学調査報告書, 2012, 日本緑内障学会
2. Konieczka, K., Ritch, R., Traverso, C.E., Kim, D.M., Kook, M.S., Gallino, A., Golubnitschaja, O., Erb, C., Reitsamer, H.A., Kida, T., Kurysheva, N., Yao, K., 2014. Flammer syndrome. EPMA J 5, 11. https://doi.org/10.1186/1878-5085-5-11
3. Flammer, J., Orgül, S., Costa, V.P., Orzalesi, N., Krieglstein, G.K., Serra, L.M., Renard, J.-P., Stefánsson, E., 2002. The impact of ocular blood flow in glaucoma. Progress in Retinal and Eye Research 21, 359–393. https://doi.org/10.1016/S1350-9462(02)00008-3
4. Lévêque, P.-M., Zéboulon, P., Brasnu, E., Baudouin, C., Labbé, A., 2016. Optic Disc Vascularization in Glaucoma: Value of Spectral-Domain Optical Coherence Tomography Angiography. Journal of Ophthalmology 2016, 1-9. https://doi.org/10.1155/2016/6956717
5. Konieczka, K., Erb, C., 2017. Diseases potentially related to Flammer syndrome. EPMA Journal 8, 327–332. https://doi.org/10.1007/s13167-017-0116-4

(注)

レイノー現象(Raynaud’s phenomenon) 、レイノー症候群(Raynaud’s disease)とは別です。

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