近視抑制メガネ(MiYOSMART®・Stellest®)

2026年6月、近視の進行を抑えることを目的とした眼鏡レンズ「MiYOSMART®(ミヨスマート/HOYA)」と「Stellest®(ステレスト/ニコン・エシロール)」が日本国内で発売されました。たける眼科では、国内発売の初日から両レンズの処方に対応しています。

近視抑制メガネ MiYOSMART(ミヨスマート)
MiYOSMART(ミヨスマート):HOYA社提供画像

「メガネをかけるだけ」で始められることから、目に直接触れる治療に抵抗のあるお子さまやご家庭にとって、ハードルの低い選択肢です。このページでは、仕組み・対象・費用・受診の流れ・他の治療との比較をまとめます。

初回の検査・ご説明は保険診療です。予約は必要ありません。

近視抑制メガネとは

こどもの近視は、眼軸長(目の前後方向の長さ)が伸びすぎることで進行します。一般的な単焦点メガネは「見えるようにする」ためのもので、近視の進行そのものを抑える効果はありません。

近視抑制メガネは、レンズの中央部は通常のメガネと同じようにはっきり見えるつくりのまま、周辺部に微細なレンズ構造を組み込んでいます。この構造が網膜の周辺部に「近視性デフォーカス(焦点が手前にくる状態)」を作り、眼軸長の伸びを抑える信号になると考えられています。

製品名メーカー技術構造の特徴
MiYOSMART®HOYADIMS中央9.4mmの単焦点部の周囲に、396個の微小凸レンズを蜂の巣状に配置
Stellest®ニコン・エシロールHALT1,021個の非球面マイクロレンズを11の同心円状に配置

2025年10月には日本近視学会が「近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版)」を公表し、MiYOSMART®とStellest®の2製品が推奨品として記載されました。処方の枠組みは「眼科医が処方し、眼鏡作製技能士が作製する」と定められています。

どのくらい進行を抑えられるか

海外のランダム化比較試験では、単焦点メガネと比較して近視進行(度数・眼軸長)を約50〜60%抑えたと報告されています(日本近視学会ガイドラインに記載の平均抑制率は55〜59%)。6〜8年の長期フォローアップデータが蓄積されており、装用を中止した後の明確なリバウンド(進行の反動)は報告されていません。

効果には個人差があり、装用時間に大きく左右されます。「朝起きてから夜寝るまでかける(全日装用)」ことが前提のレンズです。装用時間が短い場合、期待できる効果は小さくなる可能性があります。当院では処方の前に、「1日何時間かけられそうか」を保護者の方と一緒に確認します。

臨床試験データ・参考文献の詳細は、解説記事にまとめています。

対象となるお子さま

  • 対象年齢:MiYOSMART®は5歳〜18歳、Stellest®は7歳〜18歳
  • 調節麻痺下屈折検査(サイプレジン点眼)で、両眼とも等価球面度数 −0.50D以上の近視のお子さま
  • 強度近視の家族歴がある場合や、保護者・ご本人に希望がある場合もご相談ください

斜視・弱視・眼振などの両眼視機能異常、調節異常(偽近視を含む)、症候性・二次性の近視、円錐角膜などがある場合は、ガイドライン上の禁忌にあたります。初回の検査で適応かどうかを確認します。

費用(税込)

項目費用
初回の検査・説明保険診療
処方前検査¥5,500
年間管理料(4回分)¥17,600
レンズ代処方箋をお渡しします。対応眼鏡店での実費

処方前検査以降は自費診療です。年間管理料は、装用開始2週間後の初回確認時にまとめてお支払いいただきます。すでにリジュセア®ミニの管理プログラムに入られている方は、追加の管理料は不要です。

レンズはどこで購入できますか?

MiYOSMART®・Stellest®は、眼鏡店で自由に購入できるレンズではありません。日本近視学会ガイドラインに基づき、眼科での検査・処方箋をもとに、対応する眼鏡店(眼鏡作製技能士の在籍店)で作製する流れになります。当院では処方前検査ののち処方箋を発行し、対応眼鏡店をご案内しています。フレーム選び(上下幅30mm以上推奨)やフィッティングも眼鏡店でご相談いただけます。

受診の流れ

時期内容
初回(保険診療)視能訓練士による検査・近視の現状のご説明。ご自宅でご家族とご相談ください
処方前検査調節麻痺下屈折検査・眼軸長測定 → 処方箋発行
2週間後眼軸長測定・度数確認・年間管理料お支払い
3ヶ月後眼軸長測定・度数確認・グラフ説明
6ヶ月後眼軸長測定・度数確認・効果判定
9ヶ月後眼軸長測定・度数確認・グラフ説明

レンズ中心と瞳孔の位置合わせ(アライメント)が効果に直結するため、定期的な眼軸長測定・度数確認をセットで行います。6ヶ月ごとの検査で等価球面度数が−0.50Dを超えて進行した場合は、レンズ交換をお勧めします(ガイドライン第1版)。装用開始後2週間は、激しいスポーツ・球技・自転車には注意が必要です(新しいレンズへの順応期間)。

ほかの近視抑制治療との比較

近視抑制メガネは、当院で提供している近視進行抑制治療の選択肢のひとつです。「これが一番」という唯一の正解はなく、お子さまの年齢・眼軸長の伸び方・ライフスタイル・ご家族の価値観によって、適した選択は変わります。

治療方法特徴留意点
近視抑制メガネ(MiYOSMART®・Stellest®)日中の眼鏡装用目に触れず、低年齢から始めやすい。脱落率が低い全日装用が前提。スポーツ時の見え方は要相談
オルソケラトロジー就寝中の特殊ハードレンズ日中は裸眼で過ごせる。スポーツ・水泳と相性がよい毎晩のレンズ管理が必要
マイサイト(MiSight® 1day)日中の1日使い捨てソフトレンズ1日使い捨てタイプ。長期の臨床データが蓄積されているレンズの着脱練習・衛生管理が必要
リジュセア®ミニ(低濃度アトロピン点眼)1日1回 寝る前点眼手間が少なく、低年齢から開始できる点眼の継続が必要
経過観察(何もしない)通常のメガネ等これも大切な選択肢のひとつ3ヶ月ごとの眼軸長測定で経過を確認

当院では、「何もしない(経過観察)」を含む選択肢を中立的に並べてご説明し、ご家族と一緒に決めるプロセス(SDM:共同意思決定)を大切にしています。初回にその場で決める必要はありません。

効果が不十分な場合:併用という選択肢

6ヶ月後の評価で眼軸長の伸びが0.10mm以上の場合は、メガネ単独の効果を一緒に評価し、リジュセア®ミニ(低濃度アトロピン点眼)との併用や、他の治療への切り替えをご相談します。併用療法(DIMS+0.025%アトロピン)については、単独より眼軸長の伸びをさらに抑えたとする臨床試験の報告があります。

よくあるご質問

近視は治りますか?

近視抑制メガネは、近視を「治す」ものではありません。将来の進行速度を抑え、強度近視になるリスクを下げることを目的とした治療です。効果には個人差があります。

いつまで続けますか?

近視の進行は一般的に18歳前後で落ち着いてくることが多いとされています。3ヶ月ごとの眼軸長測定で進行が止まったと判断できれば、装用の中止も検討できます。中止後の明確なリバウンドは報告されていません。

MiYOSMARTとStellest、どちらを選べばよいですか?

周辺部の見え方の設計に違いがあり、動体視力を使うスポーツをしているお子さまでは違和感の出方が異なることがあります。対象年齢(MiYOSMART®:5歳〜、Stellest®:7歳〜)も異なります。生活スタイルをうかがいながら、診察でご相談のうえ決めていきます。

眼軸長の推移は、保護者向け「近視管理レポート」アプリでもご確認いただけます。近視進行抑制の全体的なご案内は、以下のページをご覧ください。

初回は保険診療です。予約は必要ありません。気になる方は、診察時にお声がけください。