Conversation about diabetic retinopathy (English)
【眼科の予防医療:“散瞳”の負担のない診療】
◯ かなり重症になるまで自覚症状が出ません。
○ 血糖が上がることによって、細い血管(網膜血管)が内側から少しずつ傷んでいく病気です。
◯ 早く対応できれば、重い視力障害を残さずに治せる可能性が高いです。
✔ 糖尿病と診断されている方は必ず眼科を受診することが重要です。
✔ 散瞳無し(瞳を開かない)で、眼底の高精細な観察が可能となりました:超広角眼底撮影
(レーザー治療時は散瞳を必要とします。)
[糖尿病]
血液中のブドウ糖(血糖)は、血管にとって悪い働きをすることが知られています。
食事により血糖値が上がると、胃の裏側にあるすい臓は瞬時にインスリンを分泌して血糖を下げます。
この働きが悪くなり血糖値が上がったままになると、血管が内側から傷つけられてしまいます。
長い間この状態が続くことにより、からだの中で最も細い血管を持つ組織(腎臓/末梢神経/網膜)から糖尿病の合併症が現れます。
» 糖尿病と目
アメリカ眼科学会(American Academy of Ophthalmology, AAO)、アメリカ国立衛生研究所(National Eye Institute, NIH)の短時間動画:
右側の日本語訳をご参照ください
網膜とは
網膜でものをみる仕組み[46秒の動画]
・光は角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通って網膜に到達します。
・網膜の中心部「黄斑部」とその周辺の網膜から光はシグナルに変換され、視神経を通って脳に情報が伝達されます。
糖尿病網膜症の診断
非増殖性糖尿病網膜症[27秒の動画]
・非増殖糖尿病網膜症:傷んだ網膜血管から水や脂質が漏れて網膜の中にたまる
これを「硬性白斑」と呼びます(白い点であらわされた部分)
[診察・診断]
眼底診察を行い網膜症の有無/虚血の進行度を判定、次の受診の目安をお伝えします。
必要に応じて眼底写真、光干渉断層計、光干渉断層血管撮影、静的視野検査等の機器を用い、全ての検査結果は画像を提示してご説明します。
(追記)
眼内にはVEGF(血管内皮増殖因子)等の蛋白「炎症性サイトカイン」がたまっています。
増殖糖尿病網膜症[42秒の動画]
・増殖糖尿病網膜症:網膜血管の多くの血流が絶えて、本来あるべき血流が網膜に送られなくなります。
(白っぽく変色している部分)
・網膜は、新しい血管を生やそうとします。
新生血管(異常血管)は、適切な血流を送ることができないばかりか、出血したり網膜の表面に増殖組織をつくり網膜剥離を引き起こす原因にもなります。
・新生血管は目の中の水が排出される部位(隅角)にも出現し、眼圧を上昇させ緑内障による視機能障害にもつながります。
虚血の状態になった網膜は諸悪の根源です。
網膜の細胞が炎症をおこし様々な蛋白(サイトカイン)が目の中にたまって、網膜の血管にさらに悪い働きをします。
・網膜血管の透過性亢進:血管の壁が弱くなり、水が漏れ出てくる
→網膜の中心部(黄斑部)にたまり視力低下:糖尿病黄斑浮腫
・網膜血管新生:網膜の酸素不足に反応して、新しく弱い血管が作られる
→目の中に出血(硝子体出血)
・その他 網膜剥離(牽引性網膜剥離)、続発緑内障 等
散瞳検査で検出する糖尿病網膜症[1分53秒の動画]
・“包括的な眼底検査:失明を防ぐはじめの一歩”
・瞳孔をひらいて眼底の全体を観察することで、医師は糖尿病網膜症の兆候を捉えることができます。
・点眼によってひらいた瞳孔から、医師は鮮明に目の奥をみることができます:網膜、視神経、黄斑部。
・初期の糖尿病網膜症では、網膜細動脈瘤と呼ばれる小さな斑点がみられます。網膜細動脈瘤の血管からは水が漏れてきて、網膜にたまり視力低下をきたすことがあります。
・新しい血管が生えてきて、出血をきたすと重篤な視力低下につながります。
・糖尿病があるひとには、糖尿病網膜症のリスクがあります。
・散瞳検査をおこなうことで、医師は眼底の微細な変化をとらえることができます。
・60歳以上の方は、年に1回眼底検査を受けることが重要です。
・みえ方に何か異常があった場合は、早く眼科医に相談することも重要です。
・人種、年齢、家族歴(ご家族で目の病気になったかたがいる)など、リスクが高いと思われるかたは年に1度以上の眼底検査が推奨されます。
蛍光眼底造影検査[25秒の動画]
・腕から点滴されたフルオレセインと呼ばれる黄色い蛍光色素は、心臓を経由して全身の血管にまわります。
・網膜に到達した画像をを連続して撮影し、色素が血管から漏れ出ている様子や血流の悪い部分を観察します。
EyeSmart — American Academy of Ophthalmology
* 当院ではOCTアンギオグラフィーにて網膜・脈絡膜の血管評価を行っています。
下記:OCTアンギオグラフィーの画像
✔ 造影剤のアレルギーのリスク無く、血管の状態をみることができます。
糖尿病網膜症の治療
汎網膜光凝固[41秒]
・増殖糖尿病網膜症(PDR)の標準治療では、レーザー光線を用います。
・全体的な網膜光凝固:「汎網膜光凝固」と呼ばれます。
・点眼で表面麻酔の後に、網膜にレーザー光線をあてます。ものをみる中心部「黄斑部」を避けた光凝固です。
・光凝固をすることで異常血管を小さくし、目の中への出血および(さらに重症化している場合)網膜剥離の危険を減らすことになります。
網膜光凝固(レーザー治療)
:虚血状態となった網膜の機能を停止することによって、病状の進行を抑えます。
ステロイド後部テノン嚢下注射
:眼球の外側に懸濁ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)を注入、目の中の炎症を抑えます。
抗VEGF薬 -異常血管の増殖をおさえる[48秒]
・抗VEGF薬治療とは、目の中に増えてくる特殊な蛋白:VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)(血管内皮増殖因子)をターゲットとした治療です。
・抗VEGF薬は、
- 目の中の異常血管の増殖を抑える
- 異常血管からの出血を防ぐ
- 目の中に増殖組織がひろがることを防ぐ
等の働きがあります。
・麻酔をした後に、細い針で眼内に直接注射します。
・通常は、複数回・数か月以上の治療を要します。
抗VEGF硝子体内投与
:目の中のサイトカインのうちVEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑えることにより病状の進行を抑えます。
糖尿病網膜症に対する硝子体手術[59秒]
・顕微鏡を用いた手術をおこないます。
・手術器具を眼内に入れて、出血や増殖組織を取り除きます。
・眼内レーザー光凝固:虚血状態となった網膜の機能を停止することによって、病状の進行を抑えます。
・剥離した網膜に対して、ガスやシリコンオイルを入れることもあります。
硝子体手術
:目の中にたまるサイトカインを除去することが主な目的です。
その他 増殖膜の除去、眼内光凝固、網膜剥離の修復等、
かなり進行した糖尿病網膜症に対して行われる治療です。