新型コロナウイルス感染症:眼科診療との関連

[日常診療におけるウイルス性結膜炎への対応について]

眼科診療では日頃より流行性角結膜炎(はやり目、EKC)の発症を非常に恐れており(EKC発症したら2週間出勤停止)、眼科医・診療スタッフは消毒(検査器具・あご台のアルコール消毒・医療者の手洗い/手指のアルコール消毒)を十分に行っています。
医師はひとりひとりの診察の合間にもアルコール綿を触り、感染に備えています。

流行性角結膜炎(Epidemic Keratoconjunctivitis, EKC):アデノウイルスによる結膜炎。非常に感染力が強く、ウイルスが付いたテーブルや椅子、手すり等からも他者への感染が成立することがある。

はやり目(流行性角結膜炎)/治ったあとに気をつけること 

充血が強い方は受付での判断でそのまま別室にご案内して診療・会計まで済ませることができるシステムを、開院日より確立しています。

診療後 医療者は十分な手洗い・アルコール手指消毒を行い、患者さんが触れた部位には全てアルコール消毒を行います。

このシステムにより、感染が疑われる方が待合室を使用されることがありません。

支払いに用いた紙幣・硬貨もアルコール消毒・乾燥し、新しいものと交換しています。

以上より、眼科診療ではウイルス性結膜炎の対応に慣れていると言って良いかと考えます。

新型コロナウイルス感染症の対応として、

「流行性角結膜炎(EKC)と同じ対応」

を続けることに加えて、

「標準予防策(スタンダードプリコーション)の徹底」「個人防護具の使用」

を行っています。

また初診・再診ともに時間帯予約を組み合わせることにより、待合室が混雑しないよう開院時より工夫しています(来院時間の分散)。

待ち時間について/院内ITシステム構成

高い天井(待合室3.65m/検査室・診察室3m)は、換気に奏功していると考えます。

散瞳検査時など長時間の待ち時間がある場合、診察時間まで駐車場や商店街で待っていただくことも可能です。

ウイルス感染症の予防において適切な対応をとる一方で、患者さんにとって恒久的な視力・視野障害をきたさないようにすることが眼科医の任務と考えます。

目次

新型コロナウイルス感染症:眼科診療との関連

アメリカ眼科学会(AAO)の方針を注視して当院でのスタンスの記載を考えていましたが、

先日に日本眼科学会日本眼科医会日本眼感染症学会から見解が発表されました。

現在この見解に基づいた対応を行っています。

以下、引用も含めて記載します。

ご不明な点がありましたら、いつでもお問い合わせください。

よろしくお願いします。

患者さん・全てのかた向け:

国民の皆さまへ(日本眼科学会)
http://www.nichigan.or.jp/news/068.pdf

新型コロナウイルスは口や鼻 といった上気道の粘膜から感染しますが、目の粘膜組織である「結膜」からも感染する可能性があります。

全国の眼科では、日頃よりウイルス性結膜炎の感染に十分に注意しています。そのため新型コロナウイルス感染症に対しても、医師やスタッフがマスク装着や手指消毒の徹底、診察室の換気など、 安全対策を十分に行っております。

むしろ、怖がってしまうあまりに受診を控えすぎて、診察を受けるタイミングが遅れたり、いつも使う目薬が途切れて、病気を悪化させることのないようにしましょう。

・目をさわらない・こすらない、手を洗うこと、をお願いします。

・コンタクトレンズ使用を控えることを推奨します。

 もしくは使用する前と後には、せっけんで20秒間よく手を洗ってください。

・目薬をさす前と後に十分な手洗いをおこなうことをお願いします。

・通院のために外出する際は、事前の体温測定、マスク装着、手洗いの励行など基本的な対策を行ってください。

・のどの痛みや風邪の症状がある場合は、必ず医療機関の受付でその旨をおっしゃってください。

眼科医療関係者向け(日本眼感染症学会)

https://www.jaoi.jp/coronavirus2/

重要な疑問点は以下の通りになるかと思います。

眼科診療を通じて
①患者から医療従事者へ、新型コロナウイルスは感染しないのか?
②患者から患者へ、新型コロナウイルスは感染しないのか?
まずは、
現在までの情報を整理しますと,以下のとおりです。
①結膜が新型コロナウイルスの侵入サイトになる可能性がある.
②新型コロナウイルスは結膜に存在する可能性がある.
③新型コロナウイルスは結膜炎を起こす可能性がある.
④潜伏感染者の結膜に新型コロナウイルスが存在するのか否かは不明である.
⑤新型コロナウイルスが結膜→結膜で感染するのか否かについては不明である.
現時点では,頻度などはともかく「結膜を介する感染の可能性は考えられる」という答えとなります。

しかし,新型コロナウイルス感染症を必要以上に警戒するあまり、通常の眼科診療に大きな影響が及ばないように配慮することもまた非常に重要です。

Q1. 新型コロナウイルス感染症において、結膜炎の合併率は?

A1. 武漢における結膜炎の頻度は0.8%という論文は出ていますが、すべての感染者に対して眼科的な検査をしたわけではないので、十分なデータではありません。しかし、頻度は少ないながらも新型コロナウイルス感染症に結膜炎を併発する可能性があるのは確かなことです。

Q2. 新型コロナウイルスは、通常どのように感染しますか?結膜からも感染しますか?

A2.
a. 飛沫感染(咳・くしゃみ・会話中の唾液など約1mで床に落下する5μm以上の飛沫による感染:インフルエンザ、風疹など)
b. 接触感染(手や皮膚の接触や汚染された物品を介しての感染:アデノウイルス結膜炎、MRSAなど)
の2経路の他、
c. エアロゾルを介した感染気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子で、診療現場では、呼気中に含まれる水蒸気などがこれに該当し、ウイルスが長く空気中に留まります)
も指摘されています。

結膜からの新型コロナウイルスの感染(患者から医師への感染,診療を介しての患者間伝播)は、咳やくしゃみなどの飛沫感染と比べれば,可能性は高くないと考えられます。

ただし、新型コロナウイルス感染を発症している可能性がある患者を診察する際には、口、鼻に加えて眼も防護することを推奨します。

Q3 通常の眼科診療においてどうすればいいのですか?

A3. 結膜を介して新型コロナウイルスに感染するリスクは低いと考えられます.しかし,感染者数の増加を背景に病院やクリニックに新型コロナウイルス感染者が来院している可能性は十分に考えられます.そこで,すべての来院者に関して,標準プリコーション(手指衛生,接触器具の消毒など)を徹底することはもちろん,しばらくの間は,問診をしっかり行い、発熱やせき・息切れ、だるさ(倦怠感)などの強い症状がある方は、受付にその旨を申し出て貰うようにしましょう。発熱,咳、感冒様症状が軽微な状態で、眼科受診の必要な患者に対しては、アデノウイルス結膜炎患者同様の十分な感染拡大防止策を施してください。

Q4 では、具体的に感染拡大防止策とは、どうすればいいのですか?

A4.
a. 標準予防策(standard precaution)の徹底
b. 個人防護具(personal protective equipment: PPE)の使用が重要です。
具体的には、マスク、手洗い(石鹸による十分な手洗い、あるいはアルコール消毒)を行うこと、加えて眼科診療機器や環境もアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒に努めることが大切です。とくに結膜炎を有する患者の診察で手袋を使用する際には診察毎に交換し、手袋表面を介しての感染に留意します。

標準予防策(standard precaution):
全ての患者の湿性生体物質(血液、唾液、鼻汁、喀痰、尿、便、涙液、体液、粘液、損傷した皮膚分泌液など)を感染の対象として対応します。手指衛生はその基本です。湿性生体物質を扱う際は手袋、分泌物が飛散する可能性がある場合にはマスク、ゴーグル、ビニールエプロンを使用するなど、処置行為に対して、それぞれの予防策を行います。咳エチケットも標準予防策の一環です。咳エチケットには、咳やくしゃみがあるときにはマスクなどを用いて鼻や口を覆い、分泌物で汚染されたら手指衛生を行うことが含まれます。

個人防護具(personal protective equipment: PPE):
ガウン、手袋、マスク、キャップ、 エプロン、シューカバー、フェイスシールド、ゴーグルなどがあります。場面に応じて、着用します。患者毎の交換、着脱方法にも気を付けます。

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