花粉症は予防できるでしょうか

スギ花粉症(Japanese Cedar Pollinosis)の予防治療(Prophylactic Treatment)について、耳鼻科領域ではエビデンスが示されているものがありました1

スギ花粉が飛散する前にlevocetirizine(抗ヒスタミン薬)を使用することで、アレルギー性鼻炎の重症度をコントロールすることができた。生活の快適さ/医療コストの削減の両方に対して、この結果は重要と考えられる1

花粉症は、アレルギー性結膜炎のうち「季節性」に分類されるものです。

かゆみは「ヒスタミン」と呼ばれる化学物質によって引き起こされます。

抗ヒスタミン薬点眼により、
結膜の中にいる「肥満細胞」が破裂し、ヒスタミンが排出されるのを抑えます。
アレジオン®・パタノール®・インタール®・リボスチン®・リザベン®点眼 等
花粉症とドライアイ

花粉が飛散する前から点眼する「予防治療」は、アレルギー性結膜疾患に関する日本眼科学会のガイドライン2には記載されていません。

免疫学的に鼻炎と結膜炎の発症機序(なぜおこるか)は共通しているため、スギ花粉症の予防治療の効果はあるものと考えます。

以下は、日本眼科学会アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)を参考にしたものです。
予防(セルフケア)について、参考にされてください。

治療では、
○ 抗ヒスタミン薬の使用
○ ステロイドの使用(点眼濃度の調整)
○ ドライアイに対する評価
を主軸にして、

強い炎症(春季カタル)に対しては、
○ 免疫抑制薬点眼
○ ステロイド懸濁液(ケナコルト)の瞼板下注射
の対応をおこなっています。

アレルギー性結膜炎
目の表面は外界に接しているので、あらゆるものが入ってきて炎症をおこすことがあります。
多いのは、花粉。
 スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサ・ヨモギ 等

ダニ・ハウスダストによるものもあります。
コンタクトレンズも目の表面に接するので、アレルギーの炎症を引き起こします。

症状
かゆみ・充血・くしゃみ・鼻汁・鼻閉・眼脂(めやに)・流涙(なみだが出る)・異物感(ごろごろすする)・皮膚掻痒(まぶたがかゆい)・眼痛・眼瞼腫脹(まぶたの腫れ)・視力障害(みえづらい)・喉の掻

眼科ではまぶたの裏を返して、結膜を観察します:
・充血、腫れ、でこぼこ(濾胞・乳頭)、浮腫(炎症によって血管から漏れ出てきた水) 等

炎症が非常に強いと、まぶたに接する黒目(角膜)の障害がみられることがあります。
黒目と白目の境目(輪部)の腫れ(Trantas斑):「春季カタル」の強いアレルギー性炎症で、免疫反応の強い角膜輪部にみられます。

季節性有り→「花粉症」(季節性アレルギー性結膜炎)
季節性無し→「ダニ・ハウスダストによるアレルギー性結膜炎」(通年性アレルギー性結膜炎)、「アトピー性皮膚炎に伴うアレルギー性結膜炎」(アトピー性角結膜炎)

コンタクトレンズによるアレルギーでは、まぶたの裏側の凸凹が非常に強いことがあります(巨大乳頭結膜炎)

予防(セルフケア) 「抗原になるべくさらされないようにする」

1. 室内ダニの除去
 寝具対策
 空気清浄機の使用
 家庭用電気掃除機の使用

2. 真菌(カビ)
 除湿、
 夏季の換気
 冬季は結露を生じないような工夫
 ほこりがたまりやすいカーペット、畳、クロス張りの壁、ソファーなど なるべく避ける

3. 花粉
○ 花粉情報の活用(福岡県内版・九州各県版)
https://cgi.fukuoka.med.or.jp/kafun/kafun.htm
○ メガネ:通常のメガネだけでも目の表面に入ってくる花粉量を減らすことができる
○ コンタクトレンズ→なるべく中止してメガネに切り替える
○ 目を洗う:人工涙液の点眼で!
 カップの洗眼器具は薦められないです:
 ✔ 皮膚に付着した抗原を目の表面に入れてしまうこと
 ✔ 防腐剤が高濃度に含まれていること
 ✔ 涙の中の良い成分も洗い流してしまうことがある
○ まぶたを濡れタオルなどで冷やす
○ 外出時の衣類 コートはなるべくすべりの良い生地・玄関に入る前に脱ぐ 等
 花粉を室内に持ち込まない

(参考)
1. Yonekura, S., Okamoto, Y., Yamamoto, H., Sakurai, T., Iinuma, T., Sakurai, D., Hanazawa, T., 2013. Randomized Double-Blind Study of Prophylactic Treatment with an Antihistamine for Seasonal Allergic Rhinitis. IAA 162, 71–78. https://doi.org/10.1159/000350926
2. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版), 日本眼科學会雑誌 114(10), 829-870, 2010-10-10

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