ものを見る力が片目だけ育っていない「弱視」の状態になっていることもあります。
学校検診の眼科検査のときに、
片目をうまく隠せず、検査結果が不安定になってしまうことがあります。
見えていない目にも、「いい結果」が出てしまっている可能性があります。
弱視を見逃すことは、こどもの将来に渡って大きな不利益につながってしまいます。
弱視は早期に発見・治療を行うことで改善することができます。
一方、弱視を見逃してしまうと治療の機会を逃すことになります。
気づかれていない「弱視」を正確に判断する
眼科学校保険:保険調査としての視力検査
学校の先生(養護の先生)が検査してくれて、
A:1.0以上
B:0.7〜0.9
C:0.3〜0.6
D:0.2以下
の評価が配られます。
(370 方式視力測定法)
学校保健においては、健康診断を適正かつ円滑に実施するために、健診の前にあらかじめ発育、健康状態等に関する保健調査を行うことになっています。
(学校保健安全法 施行規則第 11 条)
小学校・中学校・高等学校・高等専門学校においては全学年、
幼稚園・大学においては必要と認めるとき、に変更になりました。
(平成 28 年 4 月 1 日施行)
― 眼に関する保健調査項目例―
○ 視力、屈折・調節に関して
・良く見えない(黒板の字、天候の悪いときなど)
・見るときの態度(目を細める、上目・横目で見る、テレビを近づいて見るなど)
・眼鏡・コンタクトレンズなどの使用状況
・眼精疲労(疲れやすい、本など読み続けられない、頭痛がしたりする)
視力検査は、一般的に 養護教諭等学校関係者が行う予診的検査とされています。
見えてない目が、予診的検査をすり抜けてしまうことも考えられます。
片目ずつ隠して、見えているかどうかを確かめてあげる
ことが、おうちでできる大事なことと思われます。
脳の“見える力”が育っていないこと=「弱視」
網膜は、脳から伸びてきた繊細な神経の集合が膜になった組織です。
拡大すると、10層構造になっています。
- 目の中でピントが合って、網膜に投影される
- 視神経を伝わって、脳の後頭葉(視覚野)に情報が伝達される
生まれてからたくさんの景色を見ることは、1.2.を続けることです。
その間に、脳の“見える力”が育っていきます。
でも、
・極端な屈折異常(近視・遠視・乱視)
・こどもに眼帯をしてしまって、見えない状態を作ってしまった状態
・先天白内障・網膜芽細胞腫など、網膜まで光が到達できない状態
など、
何らかの原因で、
・1.の段階で網膜にピントが合わなかった場合、
・網膜まで光が到達できない状態となっていた場合
見えている像は網膜に正常に投影されません。
その場合、2. に至ることはありません。
脳の見える力が育っていない=「弱視」の状態
となってしまいます。
弱視の原因で最も多いのは、屈折異常弱視です。
極端な屈折異常(近視・遠視・乱視)で、網膜にピントが合っていない状態になってしまっています。
他の弱視の原因(斜視弱視・形態覚遮断弱視)に対する治療が必要になることもあります。
タイムリミットのある、弱視の治療
こどもの目は生後から3歳にかけて急速に発達して、6歳〜8歳ごろにほぼ完成します。
弱視は、早期発見が何よりも大事です。
なんでも吸収するこどもの脳には、成長のタイムリミットがあります。
早く見つけることができれば、見える力を一生懸命育ててあげることができます。
適切な検査をした上で、網膜にピントを合わせてあげられるメガネを処方:
→ 見える目を隠す治療(アイパッチ)をすることが、最も一般的です。
小さい子にメガネをすること、とてもびっくりして悲しくなるかもしれません。
生涯を通じて見えない状態「弱視」になってしまわないように、眼科では全力を尽くします。
弱視になっているのか、なっていないのか:検査の方法
こどもの検査に慣れている「視能訓練士」が、検査をおこないます。
検眼枠で片目を隠して、片目ずつの視力を測定します。
ときにはアイパッチを使って検査することもあります。
矯正視力が出ない場合、網膜(黄斑部)に異常がないかを確かめます。
検査機械の発展で、負担がなく早く異常を検出できる時代になりました。
まぶしくなくすぐに終わるため、こどもが問題なくできることも多いです。
遠視と近視の違い
遠く? 近く? 漢字の意味を考えると分かりづらいです。
目の長さ(=眼軸)の違いで、区別します。
眼軸長が短い=「遠視」
眼軸長が長い=「近視」
眼軸長を測定することで、遠視の目なのか近視の目なのかを知ることができます。
遠視はプラスレンズ、近視はマイナスレンズで矯正します。
眼軸が短くても近視?:隠れた「遠視」をみつける方法
こどもはピントを調節する能力がとても強く、調節性の近視の状態が出てしまっていることがあります。
正確な「目の度数」が測れていない状態です。
正確な屈折を評価するために、
調節麻痺薬(アトロピン・サイプレジン)を使って、少し時間をかけて検査します。
・眼軸長測定
・調節麻痺薬を用いた検査
隠れた遠視を発見できることがあります。
調節麻痺薬を用いた検査では瞳孔が開くため、同時に眼底検査をおこないます。
乱視:角膜のゆがみ
「通常の生活で使う“乱視”の意味と、眼科で使う“乱視”の意味は異なっています」
乱視の意味とは、
“みえづらい”などのことではなく、角膜がゆがんでいる状態
:単に角膜の形のことをさします。
(水晶体の歪みによる乱視もあります)
生体の角膜はかならず少し歪んでいるため、誰にでも乱視はあります。
円柱レンズで矯正できる状態です。
乱視の程度を知る方法、円錐角膜の有無
視力検査の前におこなう屈折検査
・オートレフ
・スポットビジョンスクリーナー
で、ある程度の乱視の状態がわかります。
乱視が強い状態?と判断されたら、
角膜形状解析装置を用いた検査をおこないます。
・円柱レンズで矯正できる乱視:「正乱視」
・円柱レンズで矯正できない円錐角膜:「不正乱視」
(その他の角膜疾患でも不正乱視となることもあります)
を、判別します。
極端に強い「乱視」があった場合、
- 目の中でピントがあって、網膜に投影される
- 視神経を伝わって、脳の後頭葉に情報が伝達される
1.の段階でピントが合わず、弱視の原因(屈折異常弱視)となってしまっていることがあります。