こどもの近視進行を管理する機械

眼軸の長さ

光干渉式眼軸長測定装置「AL-Scan M」と近視管理ソフトウェア「MV-1」を導入しました。

  • こどもの近視がどのくらい進んでいるか?
  • 標準と離れているのか、進み方が早く/遅くなっているか?

「今日の視力いくつやったね?」
裸眼視力は、近視進行の基準になりません。
こどもはピント調節の力が強く、毎回の検査ごとに裸眼視力は変動します。

まぶしくなる点眼「調節麻痺薬」を使って、正確な近視の度数を測ることがあります。

もう一つ近視進行の程度を測る方法として、
眼球の奥行き「眼軸」を測ることが大事です。

機械を用いて瞬時に計測することができます。

数か月ごとに眼軸を測定して、グラフにしていきます。
今まではお借りしていた機械から手入力をして、グラフを作っていました。

今回ニデック社の新しい機械「AL-scan M」と、ソフトウェア「MV-1」を使うことによって、

  • こどもの現在の近視の程度
  • 標準と比較した、近視の進み具合

を知ることができるようになりました。

目次

こどもの近視進行を管理する機械

近視:大人になったあとの合併症

背が伸びるにつれて、眼軸も伸びて近視が進行します。

こどもが成長して大人になり、数十年経った時に近視による様々な疾患が出てくることがあります。

2012年の総説に、近視の合併症がまとめられました1

そして2020年のメタ解析には、

正視と比較して、
6D以上の強度近視は
・近視性黄斑症のリスクが845倍高く
・網膜剥離は12.6倍
・核白内障は2.87倍、開放隅角緑内障は2.92倍、そして矯正視力0.3未満の低視力となるリスクが5.5倍
であることが示されています2

上記の疾患は、矯正視力が下がる結果となってしまいます。
(いずれのレンズを入れても手術をしても、視力が出ない状態)

緑内障・網膜剥離・近視性黄斑変性・(早期発症の)白内障を予防するために:
こどものうちになるべく近視を進ませないようにする
ことは、とても重要と考えられます3

近視進行の程度を知る、2つの指標

こどもの近視がどの程度進んでいるのか
:正確に知る方法(指標)は2つです。

  • 調節麻痺薬点眼後の屈折(目の度数)
  • 眼軸長

調節麻痺薬点眼後の屈折(目の度数)

ピント調節を強くかけている目は、近視の度数が強めに出ています。
そのままメガネ処方(コンタクトレンズ処方)をすると、過矯正の処方となってしまいます。
:「度の強すぎるメガネ・コンタクト」

こどもはピント調節の力が強いため、
ミドリン・サイプレジン等の調節麻痺薬を使用して検査をおこなうことがあります。
ミドリンでは4-5時間・サイプレジンでは2日間程度、まぶしい状態が続いてしまいます。
調節麻痺薬使用後の目の度数は、近視の進行程度の判定基準として適切な数字です。

眼軸長

眼軸の長さ

角膜上皮から網膜までの距離:眼軸長
「光干渉式」の仕組みを用いて、瞬時に計測します。

近視の強さは、眼軸長に比例します。

近視進行の程度:標準化グラフ作成の試み

こどもの近視がどのくらい進んで行くのか

近視進行の程度を、標準化する試みが行われています。

オランダのTideman先生たちの研究グループは、12,386人のヨーロッパの子供たちの眼軸の長さを測って標準を算出しました4

横軸に年齢(Age)、縦軸に眼軸長(Axial length)

年齢ごとにグラフとして示されています。

近視進行解析ソフトMV-1でできること

今回導入した眼軸長測定装置に付属した解析ソフト「MV-1」には、
Tideman先生たちの研究結果4より、データが格納されています。

その中に、診察ごとの検査で得られたこどもの眼軸のデータが組み込まれていきます。

成長曲線のように、

・近視の標準から外れているかどうか
・近視の進行が早いのか、遅くなっているのか

を知ることができます。

比較対象がヨーロッパのこどもたちのため、アジア人とは相違があります。
そのため、参考程度に捉えるのが良いです。

グラフをお渡しして、進行具合を共有します。

参考文献

  1. Flitcroft, D.I., 2012. The complex interactions of retinal, optical and environmental factors in myopia aetiology. Progress in Retinal and Eye Research 31, 622–660. https://doi.org/10.1016/j.preteyeres.2012.06.004
  2. Haarman, A.E.G., Enthoven, C.A., Tideman, J.W.L., Tedja, M.S., Verhoeven, V.J.M., Klaver, C.C.W., 2020. The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis. Investigative Ophthalmology & Visual Science 61, 49. https://doi.org/10.1167/iovs.61.4.49
  3. Tideman, J.W.L., Snabel, M.C.C., Tedja, M.S., van Rijn, G.A., Wong, K.T., Kuijpers, R.W.A.M., Vingerling, J.R., Hofman, A., Buitendijk, G.H.S., Keunen, J.E.E., Boon, C.J.F., Geerards, A.J.M., Luyten, G.P.M., Verhoeven, V.J.M., Klaver, C.C.W., 2016. Association of Axial Length With Risk of Uncorrectable Visual Impairment for Europeans With Myopia. JAMA Ophthalmol 134, 1355–1363. https://doi.org/10.1001/jamaophthalmol.2016.4009
  4. Tideman, J.W.L., Polling, J.R., Vingerling, J.R., Jaddoe, V.W.V., Williams, C., Guggenheim, J.A., Klaver, C.C.W., 2018. Axial length growth and the risk of developing myopia in European children. Acta Ophthalmologica 96, 301–309. https://doi.org/10.1111/aos.13603
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