全身性エリテマトーデス・皮膚エリテマトーデスの標準的治療薬として用いられるヒドロキシクロロキンは、長期使用で網膜障害(ヒドロキシクロロキン網膜症)をひきおこすことがあります。
かなり進行するまで、自覚症状が出ません。
膠原病治療薬の合併症:クロロキン網膜症
ヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine, HCQ):プラケニル®(サノフィ株式会社→旭化成ファーマ株式会社)
アメリカ眼科学会からは60年の臨床経験を基にした網膜症スクリーニングのガイドライン1,2があり、
上記を参考として日本眼科学会からも「ヒドロキシクロロキン適正使用のための手引き3」が出されています。
- 本剤投与開始時には、患者が禁忌対象(SLE網膜症を除く網膜症、黄斑症の既往・合併)に該当しないこと。および本剤投与前の眼の状態を正確に把握しておくことを目的として実施する。
- 本剤投与開始後は定期的に、少なくとも年1回の頻度で眼科検査を実施する。
- 本剤による眼障害に対して以下のリスクを有する患者では、年1回よりも頻回に(患者の状態に応じて、例えば半年ごとなど)検査を実施する。
- 本剤の累積投与量が200gを超えた患者
- 高齢者
- 肝機能障害または腎機能障害患者 ・視力障害のある患者、SLE 網膜症患者、投与後に眼科検査異常を発現した患者
「長期にわたって投与する場合には,少なくとも年に 1 回これらの眼科検査を実施すること」
以下の検査に、全て対応しています。
(当日中に終了します)
- 視力検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼圧
- 眼底検査
- 色覚検査
- SD-OCT(スペクトラルドメイン OCT)
- 視野検査(ハンフリー静的視野計:HFA10-2/HFA24-2c)
- 眼底自発蛍光
✔ ヒドロキシクロロキンの処方前
✔ ヒドロキシクロロキン処方後、少なくとも年1回
特に重要なのは、以下です。
網膜の中心部(黄斑部)の変化に留意します。
✔ OCT:網膜の断層をみる
✔ ハンフリー視野計:網膜の感度をみる
プラケニル®は全身性エリテマトーデスの特効薬ですが、目の合併症「ヒドロキシクロロキン網膜症」がとても恐れられます。
1年に1度検査していただくことで、確実に失明を防ぎます。
(参考文献)
1. Marmor, M.F., Kellner, U., Lai, T.Y.Y., Lyons, J.S., Mieler, W.F., 2011. Revised Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy. Ophthalmology 118, 415–422. https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2010.11.017
2. Marmor, M.F., Kellner, U., Lai, T.Y.Y., Melles, R.B., Mieler, W.F., 2016. Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy (2016 Revision). Ophthalmology 123, 1386–1394. https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2016.01.058
3. 近藤 峰生, 篠田 啓, 松本 惣一, 横川 直人, 寺﨑 浩子., 2016.ヒドロキシクロロキン適正使用のための手引き. 日眼会誌120:419-428