新しい眼科診療:網膜をみる「ミランテ」超広角眼底カメラ導入後3年

2021年夏から超広角眼底画像解析装置を導入する機会に恵まれ、格段に眼科診療が変わりました。
良かったことがほとんどです。

以下に項目を列挙します。

目次

新しい眼科診療(網膜):「ミランテ」超広角眼底カメラ導入後4年

負担のかかる「散瞳」が不要になりました

ミランテを使用することで、瞳孔を広げる薬を使わずに眼底検査が可能になりました。
患者さんの負担が軽減され、検査後すぐに日常生活に戻ることができます。

従来の眼底検査では、瞳孔を開く目薬(ミドリンP・ネオシネジン点眼液)を使用し、20〜30分の待ち時間が必要でした。

また光がまぶしくなり、「見えづらい」「まぶしい」「ぼやける」などの症状が4-5時間続くことがありました。
妊娠中の方には散瞳点眼薬のリスクもあり、運転を控える必要があるなど、不便な状態でした。

しかし、ミランテの導入により、車で来院されても十分な眼底検査が可能となりました。
妊娠中(可能性のある)方にも安全な眼底検査が提供できるようになりました。

顕微鏡で眼底を詳細に観察する必要があるときは、従来通りの散瞳後眼底検査をおこないます。

目の中の濁り「硝子体混濁」が鮮明に撮影できるようになりました

ミランテは硝子体混濁を非常に鮮明に撮影することができます。

ぶどう膜炎の炎症が起こると、硝子体の濁りが出てくることがあります。
硝子体混濁の状態をモニターすることができるようになりました。

硝子体出血や飛蚊症などの状態を正確に診断し、経過を追跡することも容易になりました。

患者さん自身の症状を視覚的に確認でき、治療の意義・効果を理解することの助けになります。

網膜血管炎症の観察が容易になりました

ぶどう膜炎などの後眼部炎症を見やすくなり、早期発見と適切な治療が可能になりました。

ぶどう膜炎では、周辺部血管から炎症が出てくることがあります。
前眼部だけの炎症と思っても、網膜周辺部の血管の状態を見ることが重要です。

特に素晴らしいのは、周辺部血管の状態を鮮明に捉えることができることです。
経時的に網膜周辺部の画像を記録して、炎症の状態を把握します。

後眼部の炎症性疾患も、透明性を保てるように診断・治療を進めることが重要です。

ミランテの高解像度画像は、炎症の広がりや程度を正確に把握するのに役立ち、治療効果のモニタリングにも優れています。

大切な時間が有効活用できるようになりました

忙しい診療時間の中でも迅速に後眼部の状態を確認できるため、網膜裂孔や網膜剥離などの重大な疾患を見逃すことがありません。

診療の効率が向上し、より多くの患者さんを短時間で対応できるようになりました。

また、検査結果が即座に得られるため、患者さんに対する説明や次のステップの決定が迅速に行えます。

いままでの状態との比較(経過観察)が容易になりました

散瞳せずに高品質な画像を取得できるため、過去の画像と比較しやすく、病状の進行や治療効果を正確に評価することができます。

ミランテの画像は高解像度かつ広範囲をカバーしているため、微細な変化も見逃すことなく確認できます。

治療方針の決定や変更が適切に行えるようになっています。

患者さんの快適さが向上し、定期検査をしやすくなりました

散瞳が不要なため、患者さんの快適さが向上し、定期的な眼科検査への抵抗感が減少します。

これにより、早期発見と適切な管理が促進されます。

特に、散瞳に伴う視覚障害や眩しさが軽減されるため、患者は安心して検査を受けることができます。

短時間で済む検査は、忙しい日常生活を送る患者さんにとっても大きな利点です。

糖尿病網膜症:定期検査がしやすくなりました

超広角眼底カメラは、糖尿病網膜症(DR)の診断と管理において特に有用です。

従来の眼底カメラでは見逃されがちな周辺網膜の病変を検出することができ、DRの進行リスクをより正確に評価することが可能です。

これにより、適切な治療と予防策を講じることで、視力を守ることにつながります。

また、定期検査における患者の負担も軽減されるため、長期的なフォローアップが容易になります。

RGB画像:網膜の綺麗な画像を得ることができるようになりました

ミランテはRGB(赤・緑・青)の3色の組み合わせによる合成画像を提供し、
非常に綺麗な眼底イメージを得ることができます。

これにより、眼底の詳細な観察が可能となり、診断精度が向上します。

高品質な画像は、「今の目の状態」の説明においても非常に有効であり、治療の理解と納得を得やすくなりました。

163度の画角でわかること

ミランテは163度の広い視野を持ち、網膜の周辺部近くまで詳細に撮影できます。

これにより、網膜裂孔やぶどう膜炎の炎症など、周辺部に多い病変を見逃すことなく検出できます。

広範囲をカバーする眼底画像は、特に未病の段階での病変検出において有用です。

89度の画角でわかること

Nidek Mirante

ミランテは89度の視野で黄斑部を鮮明に撮影することができ、黄斑部の病変を詳細に観察することが可能です。代表的な黄斑疾患には、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、黄斑円孔などがあります。
黄斑部の詳細な観察は、視力維持に直結する重要な診断項目です。

パノラマ撮影

パノラマ撮影は、複数の写真をつなぎ合わせて広範囲を一枚の写真に収める技術です。
写真では、広大な風景や大規模なシーンを一度に撮影することができます。

ミランテのアプリのアップデート:
複数枚の画像を自動で繋ぎ合わせることができて、検査時間が大幅に短縮されました。
眼底のほぼ全ての範囲が、描出されてしまいます。

網膜裂孔やぶどう膜炎の炎症など、周辺部に多い病変を詳細に観察するのに役立ちます。

網膜の画像の組み合わせ:
複数の角度からの視点を統合することで、より総合的な診断が可能となります。

自発蛍光(Autofluorescence)でわかること

ミランテは自発蛍光(FAF)も検出することができます。
FAFは、網膜色素上皮(RPE)内のリポフスチンなどの内因性蛍光物質を可視化する非侵襲的なイメージング技術です。

これにより、加齢黄斑変性(AMD)、スターガルト病、ベスト病、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)などの疾患の診断と管理が可能です。FAFを用いることで、疾患の早期発見と治療の進行度の評価がより正確になります。

総じて、ミランテ超広角眼底カメラの導入により、診断能力が向上し、患者さんの体験も大幅に改善されました。

全ての眼科検査は、視能訓練士が担当します。

新しい時代になり、技術の発展は患者さん・医療者双方に大きな進歩となりました。

機械の進歩の素晴らしさを享受できることと併せて、
さらに拡げる網膜疾患・ぶどう膜炎への知識を、患者さんの診療に役立てます。

参考文献

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