小児近視抑制「マイサイト」は保険? 自費?:2026.1月の情報

「近視進行抑制のコンタクトレンズ(マイサイト)は保険でできますか?」
「こどもの近視治療、もうすぐ保険がきくようになるってニュースで見ましたけど……」

開院以来より取り組んでいるこどもの近視抑制の診療も多く、
診察室で、保護者の方からこのようなご質問をいただくことが急増しています。

私たち眼科医としても、「まだわかりません」。心苦しく感じております。
メーカーのクーパービジョンさんに問い合わせても「現時点では未定です」という回答にとどまります。
国からの正式な通知も、まだ届いていないのが実情です。

「小児近視進行抑制」の意義

「目が悪く」なる
=目の奥行き「眼軸長」が伸びる
→ 眼が構造的に弱くなる
→ 30年後(こどもが歳をとったとき)の疾患発症

以上を予防する目的です。

小児近視進行抑制の意義

近視進行抑制点眼薬のリジュセアミニ、2025.4月の時点では「保険が使えません」という話でした。
その時点で、状況を詳しくまとめています。

しかし、先日「近視進行抑制点眼薬(リジュセア®ミニ)などが、選定療養の枠組みに入る方向で調整されている」という重要なニュースが流れました。

これを受けて、「それではコンタクトレンズ(マイサイト)はどうなるのでしょうか?」「いつから保険が使えるの?」との疑問になりますね!

現状の結論として、当院では「2026.1.12現在 今はまだ完全自費診療(自由診療)で対応する」という方針としました。

なぜそのような判断になるのか。その理由は、厚生労働省から出された資料の「考え方」を読み解くと見えてきます。

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そもそも「マイサイト」とは

マイサイト(MiSight® 1 day)は、近視の矯正と同時に、進行を抑制する機能を持った使い捨てソフトコンタクトレンズです。

通常、眼鏡やコンタクトで近視を矯正すると、網膜の周辺部でピントが後ろにずれる現象(遠視性デフォーカス)が起き、これが眼軸(眼球の長さ)を伸ばすスイッチになると考えられています。

マイサイトは、レンズの中に「ぼやけ」を作る特殊なゾーン(治療ゾーン)を設けることで、このスイッチが入らないように設計されています。臨床データでは、眼軸長の伸びを約52%抑制したという報告もあります。

アメリカなど 世界に遅れること6年、やっと日本での導入が開始されます。

なぜ今は「保険」が使えないのか

近視進行抑制治療には保険が使えない?
最大の理由は、日本の医療制度における「混合診療の禁止」というルールです。

現在の日本の公的医療保険(3割負担など)は、原則として「すでに起こった病気の治療」を対象としています。近視の進行を抑える治療は、現時点では「予防医療」に近い扱いとなるため、保険の対象外とみなされることが一般的です。

ここで問題になるのが、「診察代だけ保険を使って、レンズ代は自費で」というやり方です。これを安易に行うと、保険診療と自費診療を混ぜて行う「混合診療」とみなされ、法律で禁止されている行為に該当してしまいます。

もし混合診療と判断された場合、本来保険が適用されるはずの診察代も含めて、すべて患者さんの全額自己負担になってしまうリスクがあります。
そのため、多くの医療機関では、患者さんを守るために「近視進行抑制治療開始からすべて自費」というルールを徹底しています。

国が示した新しい「考え方」

この状況を変えるために、国(厚生労働省・中央社会保険医療協議会)も動き出しました。

2024年末に承認された新しい点眼薬(リジュセア®ミニ)等について、「選定療養(せんていりょうよう)」という、「保険と自費の併用を認める制度」の対象に追加するかどうかの議論が行われています。

実際に公開された資料の中に、国の現在の「考え方」が記されています。やや難解な文章ですが、非常に重要な部分ですので、そのまま引用してご紹介します。

(考え方)
令和6年12月に近視の進行抑制を効能又は効果とするアトロピン硫酸塩水和物が薬事承認されたが、当該医薬品については薬価収載されていないところである。
裸眼視力 1.0 未満の小中学生の割合は年々増加しており、近視の進行抑制については一定のニーズが存在することが想定される。また、コンタクトレンズの装用を目的として受診した患者が、アトロピン硫酸塩水和物の処方も希望した場合、コンタクトレンズの処方のために行う検査は保険診療であるが、アトロピン硫酸塩水和物の処方は保険外診療であり、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和 32 年厚生省令第 15 号)第 19 条第 1 項(保険医の使用医薬品)に抵触するおそれがある。
こうしたことを踏まえ、近視に係る治療を円滑に受けられるようにするため、近視の進行抑制を効能又は効果とし、薬事承認を受けている医薬品を選定療養の対象とする。
中央社会保険医療協議会 総会(第640回) 議事次第 令和8年1月9日(金)

この文章から読み取れるポイントは2つあります。

  1. 混合診療の問題を解決しようとしている
    国も、「コンタクトの検査(保険)」と「近視進行抑制薬(自費)」が混ざるとルール違反になる恐れがあることを認識しており、その問題を解消するために「選定療養」にしようとしています。
  2. 主語はあくまで「医薬品(アトロピン)」である
    この「考え方」の中で具体的に挙げられているのは、「アトロピン硫酸塩水和物(点眼薬)」のことです。コンタクトレンズ(マイサイトなど)については、文脈上含まれる可能性はあるものの、現時点では明記されておらず、解釈が定まっていません。

今後の見通しと当院の方針

では、マイサイトもこの流れに乗って選定療養になるのでしょうか?

現時点では、「まだ明確な結論は出ていない」状況です。

資料のタイトルには「医薬品、医療機器等」という言葉が含まれていますが、上記の「考え方」を読む限り、議論の中心は点眼薬にあります。点眼薬が先行して制度化され、コンタクトレンズはその後になるかもしれませんし、対象外となる可能性もゼロではありません。

確定していない情報により患者さんを混乱させてはなりませんので、当院では以下のスタンスをとることにしました。

1. 正式決定までは「全額自己負担による自由診療」を継続します

国の制度が確定し、私たち医療機関に正式な通知が来るまでは、コンプライアンスを遵守し、現行の自費診療を続けます。これが、あとになって「やっぱり全額負担でした」といったトラブルを防ぎ、患者さんを守ることにつながるからです。

2. 情報はすぐに共有します

2026年6月に向けて、状況は今後も変化していくことが見込まれます。新しい情報が確定次第、ホームページですぐにお知らせします。

マイサイトをご検討中の方、あるいはすでに始めている方も、制度の狭間でご不安やご心配をお感じになることもあるかもしれません。
しかし近視の進行は、制度が決まるのを待ってはくれません。お子さまの眼の成長は非常に早いです。「制度が決まってから」と待っている間に、近視が進んでしまうこともあります。

まずは現在のルールの中で、ベストな治療を一緒に考えていきたいと思います。
ご不明な点がございましたら、診察時に遠慮なくお尋ねください。


参考文献

  1. Chamberlain P, et al. A 3-year Randomized Clinical Trial of MiSight Lenses for Myopia Control. Optom Vis Sci. 2019.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31343513/
  2. CooperVision. How Do MiSight® 1 Day Contact Lenses Work?
    https://www.misight.com/blog/how-do-misight-1-day-contact-lenses-work
  3. Chamberlain P, et al. Long-term Effect of Dual-Focus Contact Lenses on Myopia Progression in Children: A 6-year Multicenter Clinical Trial. Optom Vis Sci. 2022.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35086120/
  4. CooperVision. MiSight® 1 day | CooperVision Practitioner.
    https://coopervision.com/practitioner/our-products/misight-1-day/misight-1-day
  5. 厚生労働省 保険局医療課. 中央社会保険医療協議会 総会(第595回)資料: 選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果への対応等について(中医協総-2). 2024.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001629047.pdf
  6. Santen. Santen launches RYJUSEA Mini ophthalmic solution 0.025% Japan’s first ophthalmic solution for slowing myopia progression.
    https://www.santen.com/en/news/2025/2025_1/20250318
  7. Yam JC, et al. Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study. Ophthalmology. 2019.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30514630/
  8. Kinoshita N, et al. Efficacy and Safety of Low-Concentration Atropine in Slowing Myopia Progression in Children in Japan: The Randomized, Double-Blind Phase II/III ORANGE Study.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12651634/

Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

たける眼科
takeru-eye.com
福岡市早良区「高取商店街」
西新駅/藤崎駅(福岡市地下鉄)

日本眼科学会 眼科専門医
医学博士(九州大学)

当ウェブサイトに掲載されている情報は、一般的な情報提供のみを目的としており、個別の医療アドバイスに代わるものではありません。ご自身の健康状態や治療に関するご質問は、必ず眼科専門医・医療専門家にご相談ください。

「症状」を“Googleする”:医療情報を正しくつかうために
https://takeru-eye.com/blog/04102021-never-google-your-symptoms/

目の炎症とは? https://takeru-eye.com/ocularinflammation/

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