2026年6月からリジュセア®ミニが「選定療養」に移行します。当院の方針をお伝えします。
選定療養とは何か
2026年1月9日の中医協において、リジュセア®ミニによる近視進行抑制治療を2026年6月より「選定療養」の枠組みへ移行する方向性が示されました。
選定療養になると:
- 診察・検査費用:健康保険が適用される(2〜3割負担)
- 薬剤費(リジュセア®ミニ):引き続き全額自己負担
子ども医療費助成制度の対象となる可能性があります(適用可否は自治体により異なります)。
制度として患者さんの負担が軽くなる方向性であり、近視進行抑制治療が広く届くようになることは、とても意義のあることだと思います。
2026年5月、東京で開催されたアジア太平洋近視管理シンポジウム(APMMS 2026)では、世界各国からの近視研究の専門家が「小児の近視管理はもはや標準治療である」と明言されていました。
日本でも治療の選択肢が急速に整いつつある中で、当院の方針をあらためてお伝えします。
当院が自由診療を継続する理由
当院では、2026年6月以降も自由診療での近視管理を継続することにしました。
その理由を、できるだけ正直にお伝えします。
理由1:3ヶ月ごとの眼軸測定が、治療の核心である


「数か月でもうメガネの度数が変わった」「気づいたら、急激に視力が下がっていた」
近視が進みやすい学童期の子どもは、想像以上に速いペースで眼軸が伸びています。
選定療養では、眼軸長測定の保険算定は年2回が上限です。
当院の近視管理は3ヶ月ごとの眼軸測定を基本としています。これは単なる慣習ではなく、臨床的な根拠があります。
特に日本を含む東アジアの子どもは、欧米と比べて33〜61%速く進行することが報告されています(Chen et al. Graefe’s Arch 2023)。
| 年齢 | 年間の眼軸伸長(近視の場合) | 3ヶ月換算 |
|---|---|---|
| 6〜8歳 | 0.45〜0.58 mm | 0.11〜0.14 mm |
| 8〜10歳 | 0.30〜0.40 mm | 0.07〜0.10 mm |
| 10〜12歳 | 0.20〜0.30 mm | 0.05〜0.07 mm |
(出典:CLEERE Study、上海小児コホート研究ほか)
標準的な推奨では眼軸測定は6ヶ月間隔とされています。ただし、東アジアの子どもは欧州と比較して眼軸伸長が速く、特に若年層でその差が大きいことが報告されています(Brennan et al. Ophthalmic Physiol Opt. 2024)。
当院では、この進行速度の速さを踏まえ、変化をより早期に捉えるために3ヶ月ごとの測定を基本としています。
逆に言えば、6ヶ月間隔では急速進行期の変化を半分ほど見逃したまま、次の診察を迎えることになってしまいます。
近視が1ジオプター進むごとに将来の合併症リスクが統計的に高まることについては、別記事で詳しく解説しています。

理由2:近視の進み方が「早い」と気づいたとき、すぐ次の方法を考えることができる
当院での近視管理の流れは以下の通りです。
- 3ヶ月ごとに眼軸を測定する
- 前回との差から進行速度(mm/年換算)を算出する
- 年齢別の基準と比較し、急速進行かどうか判断する
- 必要であれば治療を強化する
リジュセア®ミニ単独で効果が不十分な場合、オルソケラトロジーやMiSightとの併用療法に切り替えることで、さらに抑制率を上げられることがエビデンスで示されています。

この判断を3ヶ月単位で行えることが、当院の近視管理の強みです。6ヶ月間隔では、この判断が半年遅れることになります。
理由3:「納得して近視の治療を続けたい」という方へ
APMMS 2026でProf. Ian Flitcroft(Centre for Eye Research Ireland)が示した公式があります。
治療の有効性 = 治療効果 × コンプライアンス
コンプライアンス(治療継続率)が0になれば、どんなに優れた治療でも有効性は0です。
選定療養を導入すると、「とりあえず試してみよう」という選択が生まれやすくなります。
でも近視進行抑制治療は、少なくとも2年以上継続して初めて意味があります。
途中でやめると、抑制されていた効果が失われ、近視がふたたび進み始めるリスクがあります。0.025%濃度のリバウンドについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
「継続できる環境」が治療の前提と考えます。
「費用面で始めやすくなった」
→「続けることが難しくなってしまった」
→「近視がふたたび進み始めた」
これは、治療を受けなかったよりも悪い結果になる可能性があります。

当院は、「近視をちゃんと管理したい」と思って来てくださる方に、最善の管理を提供したいと考えています。そのために自由診療を維持することにしました。
お子さんの近視の進行を、できる限り抑えたい——そう思ってご来院いただける方に、当院は丁寧に対応します。
数字で可視化する近視管理
「進行が早い」「抑制できている」——これを感覚ではなく、数字で示せることが重要です。
進行速度を毎回算出する
前回の測定値との差から進行速度(mm/年換算)を自動計算し、年齢別の基準と照らし合わせます。
たとえば8歳のお子さんの場合、年間0.30mm以上の伸びは「急速進行」に相当します。「前回より0.08mm伸びた」という数字を見て「これは年換算0.32mm、急速進行の範囲です。オルソケラトロジーの追加を検討しましょう」という具体的な話ができます。
「なんとなく進んでいる気がする」ではなく、数字に基づいた判断です。
治療強化の目安(年間の眼軸伸長)
- 0.20mm以上:要注意、経過観察を強化
- 0.30mm以上:治療強化を検討(オルソK・MiSight追加など)
- 0.40mm以上:超急速進行、早急に併用療法を考慮する
眼軸グラフを毎回お渡しする
診察のたびに、これまでの眼軸測定値をグラフにして印刷し、お渡しします。
「治療を始めてから、伸びるペースが落ちている」「この時期だけ少し早かった」——お子さんの目の変化を、保護者の方と一緒に確認しながら管理していきます。
近視管理アプリ(保護者向け)
当院では、2026年2月から保護者の方がスマートフォンで眼軸の経過をいつでも確認できる近視管理アプリを提供しています。
- 眼軸長の経時グラフをスマートフォンで確認
- 年齢別のBHVIパーセンタイル曲線と比較
- 兄弟がいる場合は複数人まとめて管理可能
- 3段階のアラート表示
現在、200名近くの患者さんにご利用いただいています。
このアプリは3ヶ月ごとの測定データを蓄積することで、より活用しやすくなります。
年2回の眼軸測定ではデータの蓄積ペースが異なるため、アプリの機能を十分に活かしにくくなります。
近視進行管理アプリの概要:
https://takeru-eye.com/myopia-app-introduction
受診間隔について
基本は3ヶ月ごと(年4回)ですが、学校行事や試験の時期と重なる場合は、2ヶ月後でも4ヶ月後でも構いません。年4回来ていただければ、間隔が多少前後しても管理の質は保てます。
寮生活や遠方から通っているお子さんも複数来院されています。そういった方には、帰省のタイミングに合わせて受診していただいています。「福岡に帰ってくるときに受診する」という形で、無理なく継続できています。
当院の費用体系(自由診療・変更なし)
選定療養への移行後も、当院の費用体系は変更しないことにしました。
| 内容 | 費用(税込) |
|---|---|
| 治療開始時(診察・処方代) | ¥3,300 |
| リジュセア®ミニ(1ヶ月分) | ¥4,380 |
| 年間管理費(3ヶ月ごとの視力検査・眼軸長測定・細隙灯顕微鏡検査含む) | ¥17,600 |
| オルソケラトロジー併用時の診察代 | なし(処方代¥1,100のみ) |
眼軸長測定のグラフは、毎回の診察時に印刷してお渡しします。
選定療養 vs 自由診療 — 比較
| 選定療養 2026年6月〜 |
自由診療 たける眼科の方針 |
|
|---|---|---|
| 診察・検査費 |
保険適用(2〜3割負担)
子ども医療費助成で実質無料になる場合も
|
全額自己負担 |
| 薬剤費 |
全額自己負担(変わらず)
¥4,380 / 箱(1ヶ月分)
|
全額自己負担
¥4,380 / 箱(1ヶ月分)
|
| 眼軸測定の頻度 |
年2回まで(保険)
3回目以降は保険適用外
半年間の変化を見逃す可能性 |
3ヶ月ごと
進行速度をリアルタイムで把握
急速進行を早期に発見できる |
| 進行速度の把握 |
半年ごとの評価
急速進行期の早期発見が遅れる場合がある
|
毎回 mm/年で算出
年齢別基準と比較して
急速進行かどうか判断できる |
| 眼軸グラフ | 医療機関により異なる |
毎回印刷してお渡し
これまでの全データをグラフで可視化
|
| 近視管理アプリ |
実質困難
眼軸測定が年2回ではデータが蓄積されない
|
利用できる
保護者がスマホで眼軸の経過をいつでも確認
約200名が利用中 |
| 治療強化の タイミング |
最大6ヶ月遅れる
次の測定まで進行の確認ができない
|
3ヶ月単位で判断
効果不十分ならオルソK・MiSightへの
切り替えを早期に判断 |
| オルソK・ MiSightとの 組み合わせ |
同日は全額自己負担
別日の受診が必要になる場合あり
|
一体管理できる
同日に眼軸測定・処方・
レンズ管理をまとめて対応 |
| 医療費控除 |
対象
診察費・薬剤費ともに控除対象になる見込み
|
対象
薬機法承認済み医薬品のため
確定申告で控除できる見込み |
※ 医療費控除の最終的な判断は税務署によります。領収書は大切に保管してください。
※ オルソケラトロジー・MiSight併用時の選定療養の取り扱いは、今後変更になる可能性があります。
自由診療と選定療養の違いと、たける眼科の方針
たける眼科は2018年の開院当初から近視進行抑制の科学的知見を追い続け、新しいエビデンスが出るたびにブログ記事としてまとめてきました。
2018年の0.01%アトロピン点眼、2019年のNature誌「近視ブーム」の紹介、オルソケラトロジー導入(2019年)、リジュセア®ミニ(2025年4月)、MiSight(2026年2月)へと、結果的に世界の近視研究の流れを追う形となりました。
長い間 免疫学・ぶどう膜炎のことばかり考えていて、眼光学は得意分野ではありませんでした。近視の論文を参照して勉強しながら追いかけていたら、結果的にこうなっていました。

今回の選定療養についても、その延長線上で当院の方針を決めました。
選定療養を導入すると、診察・検査費が保険適用になります。年2回の眼軸測定も保険で受けられます。
当院では選定療養には移行せず、3ヶ月ごとの眼軸測定、進行速度の定量評価、オルソケラトロジー・MiSightとの一体管理、眼軸グラフの毎回提供・近視管理アプリの活用——これらを組み合わせた包括的な管理を自費診療として提供し続けることとしました。
なお、オルソケラトロジー・MiSightを自由診療で併用している場合は、選定療養の対象外となります。
近視管理は、続けることが最も大切です。当院は、その「継続」を丁寧に支えられる体制で診療にあたります。
参考文献
- Chen J, Liu S, Zhu Z, et al. Axial length changes in progressive and non-progressive myopic children in China. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2023;261(5):1493-1501. https://doi.org/10.1007/s00417-022-05901-5
- Jones LA, Mitchell GL, Mutti DO, Hayes JR, Moeschberger ML, Zadnik K. Comparison of Ocular Component Growth Curves among Refractive Error Groups in Children. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005;46(7):2317-2327. https://doi.org/10.1167/iovs.04-0945
- Brennan NA, et al. Regional/ethnic differences in ocular axial elongation and refractive error progression in myopic and non-myopic children. Ophthalmic Physiol Opt. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11629838/
- Bullimore MA, Brennan NA. Myopia Control: Why Each Diopter Matters. Optom Vis Sci. 2019;96(6):463-465. https://doi.org/10.1097/OPX.0000000000001371
- Yam JC, et al. Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP Study) Phase 3. Ophthalmology. 2022;129(3):308-321. https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2021.09.016
- Flitcroft IA, Bullimore MA, Gifford KL, et al. Myopia Correction, Myopia Control and Myopia Management: Definitions and Recommended Usage. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2025;66(6):41. https://doi.org/10.1167/iovs.25-37268
- Flitcroft IA. 近視の管理:最新知見と臨床的意義の見極め. 第6回アジア太平洋近視管理シンポジウム(APMMS 2026). 2026年5月10日; 東京. CooperVision Japan主催.
- Rogers RW. A Protection Motivation Theory of Fear Appeals and Attitude Change. J Psychol. 1975;91:93-114.
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