ドライアイについて:日本眼科学会雑誌より

ドライアイの定義:
「様々な要因により涙液層の安定性a)が低下する疾患であり、眼不快感b)や視機能異常c)を生じ、眼表面の障害d)を伴うことがある」(2016)

目次

ドライアイについて:日本眼科学会雑誌より


日本眼科学会雑誌「ドライアイ診療ガイドライン」(2019年5月)からのご紹介です。

「ドライアイの病態生理の考え方は、時代とともに変化し、今なお進化し続けている」

本邦でのドライアイの定義と診断基準の変遷

1995年「涙液(層)の質的または量的な異常により引き起こされた角結膜上皮障害」
2006年「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」
その後10年でさらに多くの研究成果が蓄積され、2016年に上記のように改定されました。

ドライアイの主なメカニズム(コアメカニズム):

  • 涙液層の不安定化(まばたきのたびに目の表面に張る なみだの状態が不安定になっている)
  • 瞬目時の摩擦亢進(まばたきをすることで黒目の表面がこすれる)


本邦では、「炎症」は2つの悪循環の結果
諸外国(特に米国)では、「炎症」が主なドライアイのメカニズム
とされています。

留学当初に眼免疫~眼表面疾患の研究に携わった経緯より、「ドライアイは炎症性疾患」という認識をもっています。
:リンパ球のうち、CD4陽性T細胞による炎症(欧米では免疫抑制剤を用いた治療; 日本では保険適用外)

帰国後も、ドライアイ診療の中心に「炎症をおさえる」考え方を続けています。
日本人と欧米人の差はありますが、治療効果は得られていると考えています。

ドライアイの診療


a) 涙液層の安定性
フルオレセイン試験紙により眼の表面を染色し、涙液層破壊時間(Breakup time, BUT)の測定により涙液の3層構造(油層/水層/ムチン層)の安定性を評価します。

b) 眼不快感
問診により判断します。遠慮なくおっしゃってください。
質問票(Dry Eye related Quality of life Score (DEQS))を用いることも可能です。

c) 視機能異常
必要に応じて、視力検査・角膜形状解析・波面収差解析などを行うことができます。

d) 眼表面の障害
1.と同時に評価します。
シェーグレン症候群に伴う角膜上皮障害等。

ドライアイの有病率


ドライアイの有病率はどのくらいか?
日本での40歳以上の住民を対象にした大規模疫学調査(Koumi Study)では、男性12.5%、女性21.6%であった。
ドライアイ発症に及ぼす、外的因子(地域、人種、年齢、季節、性別)は?
地域差   :明確なエビデンスはない
人種間の差 :白人の女性よりもヒスパニック系およびアジア系の女性では有病率が高い
季節    :冬から春にかけて有病率が高い
性別    :女性の有病率が高い
年齢    :加齢が危険因子

ドライアイに及ぼす、ライフスタイルの影響(喫煙、VDT作業、コンタクトレンズ装用)


ドライアイ発症に及ぼす、ライフスタイルの影響(喫煙、VDT作業、コンタクトレンズ装用)は?
喫煙    :ドライアイ発症の危険因子
長時間のVDT作業作業/オメガ3脂肪酸よりオメガ6脂肪酸の摂取量が多いこと
      :ドライアイ発症の危険因子
コンタクトレンズ装用
      :危険因子かどうかは不明

ドライアイ関連疾患

薬剤性角膜上皮障害


 各種点眼により、防腐剤の影響が出ることがあります。他に抗緑内障薬の影響等。
 点眼薬を減らす/中止、または防腐剤の入っていない点眼薬を使用することもあります。

マイボーム腺機能不全

 まぶたの縁に、アクネ菌の感染アレルギーが生じていることがある。

上輪部角結膜炎

 甲状腺眼症にともなうもの 等。

神経麻痺性格膜症


 脳外科手術後、角膜ヘルペス罹患後など 三叉神経の障害。

糸状角膜炎

結膜弛緩症

 結膜がゆるんだ状態:日常診療では数多く遭遇しています。

lid-wiper epitheliopathy

 まぶたの裏の結膜の障害。ソフトコンタクトレンズを使用されている方に多く生じます。
 * 必要に応じて、涙点プラグ・ジクアホソルナトリウム点眼の治療等も考慮します。

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