ブルーライトとデジタル眼精疲労

「コンピューター用眼鏡(ブルーライトカット)は推奨しない」

アメリカ眼科学会(American Academy of Ophthalmology)の2019年11月の記事・見解のご紹介です。

目次

ブルーライトとデジタル眼精疲労

ブルーライト眼鏡

Are eyeglasses with special blue light-blocking filters worth the expense?
(コンピューター用ブルーライトカット眼鏡は使う価値があるか)

コンピューター用眼鏡(ブルーライトカット)は、
・睡眠を改善する
・デジタル眼精疲労を軽減する
・眼疾患を予防する
とされています。

上記は皆の願いでもありますが、コンピューター用の特別な眼鏡にお金をかける必要はありません。

その理由として:
○ コンピューター由来のブルーライトは眼疾患の発症と関係ない。
太陽からのブルーライトと紫外線は眼疾患のリスクを上げることは、現在までに多く示された真実であるが、
コンピューター由来のブルーライトが眼に悪影響を及ぼすことが示されたことはない。

○ 特別な眼鏡無しでも睡眠は改善される。
睡眠を改善するために高価な眼鏡を購入する必要はありません。
単に夜はコンピューターやデジタルデバイスをみる時間を短くして、ナイトモードに設定すると良いです。

○ デジタル眼精疲労はブルーライトで引き起こされるものではありません。
眼精疲労の徴候がでるのはデジタルデバイスの使い方によるもので、デバイスからのブルーライトが原因ではありません。

» “Digital eye strain” (デジタル眼精疲労)

コンピューター/デジタル眼精疲労

デバイスを使うこと自体には、眼に永続的なダメージを与えることにはないと考えられます。
でも、長時間デジタルデバイスを注視することは一時的な眼精疲労を引き起こしてしまいます。
様々な症状としてあらわれます:
・ドライアイ
・ものがぼやける
・なみだが出る
・頭痛がする

デジタルデバイスを注視するときに、まばたきが減る
→これがデジタル眼精疲労の原因となります。

ひとは通常1分間に15回程度まばたきをします。この”まばたき率”は、コンピューターデバイス画面の凝視や読書などの近見作業で半分程度になってしまいます。

○ ”20-20-20ルール”を使うことで、目に定期的な休息をとってください。
20分毎にモニターから目を離して、20フィート(6メートル程度)、20秒程度 みてください。
これによって、目の調節緊張はリセットされます。

○ 目が乾くときは、人工涙液を使用することで目の表面を潤滑にしてみてください。

○ モニターまでの距離は25インチ(63.5センチメートル)、高さは少しだけ下をみる位置に調節してください。
(*日本人の体格では、50センチメートル程度が適当と思われます)

○ ガラス製のモニターはグレア(光の不快感、まぶしさ)を引き起こしていることがあります。
デジタルデバイスには、半光沢のモニターフィルターを使うことを考慮。明るさとコントラストを調節することやモニター近くの照明を抑えることで、眼精疲労を軽減することができる可能性があります。

○ コンタクトレンズよりも眼鏡の使用をすすめます。
コンタクトは目の乾きや不快感につながることがあります。コンピューターを長く使う仕事では、眼鏡を使用することが推奨されます。

こどものデジタルデバイス使用時間について

赤ちゃんや小さなこどもを持つと、親は”コンピューターやスマートフォン等のデジタルデバイスを使う時間をどの程度まで許すか”を考えます。

使用時間を制限する正当な理由は多くありますが、こどもの目や視覚の成長に有害であるという科学的なエビデンスはありません。

でも、デジタルデバイスの長い使用時間が健康に関わるという研究はあります:
○ 注意に関連した障害
カナダの研究では、1日に2時間以上デジタルデバイスを使うこどもは、時間が短いこどもに比べて8倍ADHD(Attenuation Deficit Hyperactivity Disorder, 注意欠如多動性障害)を発症することが報告されています。

○ 肥満
デジタルデバイスの仕様が長いと、健康を保つ上で大切な外での活動が短くなってしまいます。その結果、こどもの肥満のリスクが高くなります。

○ 近視(”目が悪い”)
アメリカとアジアの近視人口は、1970年代から急増しました。
デジタルデバイスの使用の長さと、屋内活動の長さについての研究があります:
小さなころから外遊びの時間を長くすることは、近視進行を遅らせる科学的なエビデンスがあることが報告されています。

デジタルデバイスの使用に対して、ガイドラインは存在しません。

アメリカ小児科学会では、以下のように推奨しています。

○ 2歳までは、デジタルデバイスを全く使わないようにしましょう。
(FaceTimeやSkypeのようなビデオチャットを除く)

○ 2歳から5歳までは1時間以上のデジタルデバイスの使用をしないようにしましょう。
体を動かすことや家庭のあそびに時間を使うことは、こどもの体と知能の成長の基盤となります。

Blue Light and Digital Eye Strain – American Academy of Ophthalmology
https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/blue-light-digital-eye-strain

Are Computer Glasses Worth It? – American Academy of Ophthalmology
https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/are-computer-glasses-worth-it

小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見

2021年4月に、
日本眼科学会・日本眼科医会・日本近視学会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会
の共同声明として、以下が示されました。

小児にブルーライトカット眼鏡の装用を推奨する根拠はなく、むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねません。

(引用)
現在、一般に販売されているブルーライトカット眼鏡は、デジタル端末使用時の睡眠障害や眼精疲労の軽減、また眼球への障害を予防すると謳っています。このうち、いわゆる体内時計とブルーライトの関係についてはいくつかの論文があり、夜遅くまでデジタル端 末の強い光を浴びると、睡眠障害をきたす恐れが指摘されています。従って、夕方以降にブルーライトをカットすることには、一定の効果が見込まれる可能性はあります。しかしながら、その他の点はエビデンスに乏しく、いくつかの問題点があります。

  1. デジタル端末の液晶画面から発せられるブルーライトは、曇天や窓越しの自然光よりも少なく、網膜に障害を生じることはないレベルであり、いたずらにブルーライトを恐れる必要はないと報告されています。
  2. 小児にとって太陽光は、心身の発育に好影響を与えるものです。なかでも十分な太陽光 を浴びない場合、小児の近視進行のリスクが高まります。ブルーライトカット眼鏡の装用は、ブルーライトの曝露自体よりも有害である可能性が否定できません。
  3. 最新の米国一流科学誌に掲載されたランダム化比較試験では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されています。
  4. 体内時計を考慮した場合、就寝前ならともかく、日中にブルーライトカット眼鏡をあえて装用する有用性は根拠に欠けます。産業衛生分野では、日中の仕事は窓ぎわの明るい環 境下で行うことが奨められています。

» 小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見

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