「はやり目かも?」陽性か、陰性かを見分けるには

「はやり目かもしれないので、眼科で診てもらってきてください」

保育園・幼稚園や学校でそのように言われ、来院される患者さんは少なくありません。実は、はやり目はその場ですぐに確定できる病気ではないことも多くあります。今回は、その理由を簡潔にご説明します。

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はやり目は、見ただけでは確定できない

「専門医でも判断が難しいのですか」と感じられるかと思います。しかし実際には、見た目だけでほかの結膜炎と見分けるのは難しく、前眼部(角膜・結膜 等)専門の眼科医でも一見しただけで断定するのは容易ではありません。症状や所見だけでの診断には限界があることが、研究でも示されています1。そのため、検査や経過とあわせて判断していきます。

検査をしても「陰性」は決め手にならない

「それでは、診断を確定する検査はあるのでしょうか」と聞かれることがあります。
アデノウイルスを調べる迅速検査キットがあります。

アデノウイルス迅速検査キットの検査手順と結果の見方(陽性・陰性)を示したイラスト

ただ、結果の解釈には注意が必要です。陽性の場合は、はやり目の可能性が高いと判断します。一方、陰性の場合でも「感染していない」とは断定できません。この検査は「陽性ならほぼ確か」な一方で、実際に感染していても陰性と出てしまうこと(偽陰性)が少なくないためです2。研究によっては、感染している人のかなりの割合を陰性と判定してしまうと報告されています3

そのため、陰性のときほど、私たちも「現時点では断定が難しい」とお伝えせざるを得ません。検査にはこうした限界があるため、症状や流行の状況とあわせて総合的に判断しています。

診察でどのように診て、どんなときに追加の検査を行うのかは、関連記事でもう少し詳しくご説明しています。

幼稚園・学校で問われる「判定」の難しさ

このあいまいさで特に苦労されているのが、保育園・幼稚園や学校の先生方です。

はやり目はうつります4。学校保健安全法でも「第三種の感染症」に位置づけられ、医師が感染のおそれがないと認めるまで、登園・登校を控えることになっています5。もし他のお子さんにうつってしまった場合、園や学校として対応の判断が必要になります。そのため現場では、「眼科で適切に判断してもらってください」と案内されることになります。ところが、その眼科でも「判断が難しい」となることがあります。園や学校と医療機関の間で、対応に苦慮する状況が生じるわけです。

特効薬はなく、炎症を抑える治療が中心

はやり目はアデノウイルスによる結膜炎で、ウイルスそのものを退治する特効薬は、今のところありません6。そのため治療は、症状をやわらげ、ウイルスによる炎症を抑える対症療法が中心になります。

ステロイドの点眼薬を使うことがありますが、これはウイルスを殺すものではなく、強い炎症を抑えるためのものです。誰にでも最初から使う薬ではなく、炎症が強いときや、偽膜・角膜の濁りが出たときなどに、必要性を見きわめて慎重に使います7。使いすぎにはかえって不利な面もあるためです。目的が「治す」ではなく「抑える」である点は、知っておいていただきたい点です。

また、はやり目は治ったあとにも注意が必要で、黒目(角膜)に小さな濁りが残り、見え方に影響することがあります。この点とステロイド点眼の使い方については、関連記事で扱っています。

黒目(角膜)の位置を示す図

当院での対応

当院では、症状の経過をふまえ、必要に応じて迅速検査を行います。結果が陰性であっても慎重に対応し、周囲に感染を広げないための注意点をお伝えしています。

タオルを分ける、目をこすった手で共用部分に触らない、登園・登校を再開する時期など、気をつけていただきたいことは診察時に一つずつご説明します(主に視能訓練士が対応します)。あいまいな病気だからこそ、こうした「気をつけること」が大切だと考えます。

ウイルス性結膜炎を周囲にうつさないための注意点をまとめた図

「病院で言われることは、想定と異なる点が多い」と感じられることも多いかもしれません。しかし、はやり目にはこうした事情があります。ご不安のある方、疑問のある方は、診察時になんでもお聴きになってください。

参考文献

  1. Diagnostic accuracy of clinical signs, symptoms and point-of-care testing for early adenoviral conjunctivitis. Clin Exp Optom. 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9081290/
  2. Sambursky R, et al. The AdenoPlus test for diagnosing adenoviral conjunctivitis. JAMA Ophthalmol. 2013. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23307204/
  3. Kam KYR, et al. Sensitivity and specificity of the AdenoPlus point-of-care test in an ophthalmic emergency department. Br J Ophthalmol. 2015. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25824258/
  4. Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Overview of Conjunctivitis. https://www.cdc.gov/conjunctivitis/hcp/clinical-overview/index.html
  5. 厚生労働省. 流行性角結膜炎. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-30.html
  6. Liu SH, et al. Topical pharmacologic interventions versus placebo for epidemic keratoconjunctivitis. Cochrane Database Syst Rev. 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8892837/
  7. American Academy of Ophthalmology. Conjunctivitis Preferred Practice Pattern, 2023. https://www.aao.org/education/preferred-practice-pattern/conjunctivitis-ppp-2023

Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

たける眼科
takeru-eye.com
福岡市早良区「高取商店街」
西新駅/藤崎駅(福岡市地下鉄)

日本眼科学会 眼科専門医
医学博士(九州大学)

当ウェブサイトに掲載されている情報は、一般的な情報提供のみを目的としており、個別の医療アドバイスに代わるものではありません。ご自身の健康状態や治療に関するご質問は、必ず眼科専門医・医療専門家にご相談ください。

「症状」を“Googleする”:医療情報を正しくつかうために
https://takeru-eye.com/blog/04102021-never-google-your-symptoms/

目の炎症とは? https://takeru-eye.com/ocularinflammation/

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