外傷性散瞳:目をぶつけたあとの後遺症

目の怪我(鈍的外傷)の後に、瞳孔が広がったままになってしまうことがあります。

目をカメラで例えると、
「瞳孔」は、「絞り」に当たる部分です。
目/カメラに入ってくる光の量を調節します。

目/カメラに入る光線の数を調節する、門番のような役割をしています。

デビッドボウイ(David Bowie, 1947-2014)の目は、片方が緑で片方が黒:
こどものころ吹矢が当たったことがあり、左眼が散瞳してしまったそうです。
瞳孔不同(anisocoria)の状態でした。

そのため、デビッドボウイの目は右眼が緑・左眼が黒という状態になっていました。
右眼:イギリス人の虹彩の色で、緑
(ほとんど全てアジア人の虹彩の色は、茶色です)
左眼:開いたままになってしまった瞳孔から見える目の奥の色は、黒

外傷性散瞳の症状は、「目をぶつけた後に、まぶしい状態が続く」ことです。

瞳孔が広がったままの状態:「散瞳」

原因は、
・虹彩の筋肉“瞳孔括約筋”が緩んでしまった状態 もしくは、
・瞳孔括約筋の動きをつかさどる“副交感神経”の障害
です。

目をぶつけた、目にボールが当たった、
等、外傷を負った目は、

・虹彩(虹彩括約筋・虹彩散大筋)
・虹彩神経
・毛様体

の障害を受けます。

最初は瞳孔が小さくなり、その後瞳孔反応低下に伴って散瞳してくることがわかっています。

毛様体が痙攣(けいれん)することにより目の痛みを伴い、
その後調節麻痺の状態に移行してしまうことがあります。
ピントを合わせる能力が麻痺してしまいます。

毛様体を組織学的に観察すると、炎症細胞が集まってきて組織変化(瘢痕形成・萎縮)を起こしていることがわかっています1
ピント調節の筋肉が炎症を起こして、傷あとの状態になってしまった状態です。

診察室で点眼するアトロピンは、痙攣している毛様体を麻痺させます。
そのため、受傷直後の痛みを軽減する効果があります。

参考文献
1. Kawasaki A: Disorders of pupillary function, accommodation, and lacrimation. In Miller NR, Walsh FB, Hoyt WF (Eds.), Walsh and Hoyt’s clinical neuro-ophthalmology. Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, pp. 739—805, 2005.

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