コンタクトでまぶたが下がる

長年ハードコンタクトをされている方は、若年性の眼瞼下垂(まぶたが下がること)をきたすことがあります。
40年近く前から示されていたコンタクトレンズの合併症です1, 2

目次

コンタクトでまぶたが下がる

まぶたを上げる筋肉・骨組み(腱板)をつなぐ“すじ”がはずれる

ハードコンタクトレンズの取りはずしの際には、
上まぶたを外側に引っ張った状態で、まばたきをします。

それを長年続けることで、levator aponeurosis dehiscence (挙筋腱膜の離開)の状態になってしまいます3
(=まぶたを上げる筋肉とまぶたの骨組み(腱板)をつなぐすじ(挙筋腱膜)がはずれてしまうこと)
Blepharoptosis in RGP and PMMA hard contact lens wearers

ソフトコンタクトレンズ(使い捨て)でも眼瞼下垂をおこす

ソフトコンタクトレンズでも、眼瞼下垂を引き起こすことが示されています4
[オランダにて、2002-2005年のうち18-50歳の計35人を対象とした研究]

コンタクトレンズを使わない人と比べてのリスク(オッズ比):
ハードコンタクトレンズ使用者の眼瞼下垂→ 97.8倍
ソフトコンタクトレンズ使用者の眼瞼下垂→ 14.7倍

ハードコンタクトレンズによる眼瞼下垂に比べて、ソフトコンタクトレンズによる眼瞼下垂は頻度が少ないです。

Not only hard contact lens wear but also soft contact lens wear may be associated with blepharoptosis

コンタクトレンズと眼瞼下垂との関係:文献のご紹介

多くの文献からも、コンタクトレンズと眼瞼下垂の関係が明らかにされています5

[“コンタクトレンズと眼瞼下垂”に関して過去に発表された393の論文のうち、条件を満たした5つの論文からの解析(メタ解析)]
コンタクトレンズを使わない人と比べてのリスク(オッズ比):
ハードコンタクトレンズ使用者の眼瞼下垂→ 17.38倍(5つの論文より)
ソフトコンタクトレンズ使用者の眼瞼下垂→ 8.12倍(1つの論文より)

The Risk of Blepharoptosis in Contact Lens Wearers

眼瞼下垂を引き起こす原因の違い:ハードとソフトの差

コンタクトレンズ装用中の眼瞼下垂について、
ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズ(1日使い捨てタイプも含む)で、病態生理(病気の成り立ち)が違うと思われます。

○ ハードコンタクトレンズ:機械的刺激による眼瞼下垂
(コンタクトでこすれてまぶたが下がる)

○ ソフトコンタクトレンズ:炎症性変化による眼瞼下垂
(コンタクトによるアレルギー性結膜炎をおこした結果、まぶたが下がる)

アレルギー性の結膜炎から、眼瞼下垂をきたす原因

ソフトコンタクトレンズ装用中の方の上まぶたの裏(結膜)をみてみると、アレルギー性の炎症を起こしていることもあります。

・すぐにコンタクトがくもる
・コンタクトをしていてかゆみや違和感が強い

などの症状あるかたは、

結膜の炎症による分泌物がコンタクトレンズに溜まり、更に炎症を起こす悪循環になっていることがしばしばみられます。

状態によって眼科医の判断によりコンタクトレンズ装用中止、(主に点眼にて)上まぶたの裏の炎症を抑える必要もあります。

結膜と挙筋腱膜はとても近い場所に位置するため、
“ソフトコンタクトレンズ装用中の結膜の炎症性変化が、挙筋腱膜の変化を介して眼瞼下垂に関与している” 
可能性がありそうです。

眼瞼下垂が長引くことになれば、手術をする他に方法がなくなってしまいます。
手術は負担になりますので、なるべく避けたいところです。

“長年ハードコンタクトなので、いまさら変えたくない”
→以前と違って、現在は多種の良いコンタクトから自分の目に合うものが選べるようになっています。

気をつけるべきこと

○ 上まぶたをなるべく引っ張らないようにする
 ハードコンタクトレンズは、専用のスポイトを使って外す。
 ソフトコンタクトのつけ外しは、なるべく下まぶただけを触るようにする。

○ 使い捨てソフトコンタクトレンズ装用中の、かゆみや違和感等の症状に留意する。

○ アレルギーの強い方は、2週間装用よりも1日使い捨て(ワンデー)のコンタクトレンズ使用を優先させる。

○ 目をなるべくこすらないようにする。

コンタクトでまぶたが下がること、
気になられるかたは、どうぞご相談ください。

(参考)

1. Epstein, G., Putterman, A.M., 1981. Acquired Blepharoptosis Secondary to Contact-Lens Wear. American Journal of Ophthalmology 91, 634–639. https://doi.org/10.1016/0002-9394(81)90065-9
2. Fonn, D., Holden, B.A., 1986. Extended Wear of Hard Gas Permeable Contact Lenses Can Induce Ptosis. Eye & Contact Lens 12, 93.
3. Thean, J.H., McNab, A.A., 2004. Blepharoptosis in RGP and PMMA hard contact lens wearers. Clinical and Experimental Optometry 87, 11–14. https://doi.org/10.1111/j.1444-0938.2004.tb03139.x
4. Bleyen, I., Hiemstra, C.A., Devogelaere, T., van den Bosch, W.A., Wubbels, R.J., Paridaens, D.A., 2011. Not only hard contact lens wear but also soft contact lens wear may be associated with blepharoptosis. Can. J. Ophthalmol. 46, 333–336. https://doi.org/10.1016/j.jcjo.2011.06.010
5. Hwang, K., Kim, J.H., 2015. The Risk of Blepharoptosis in Contact Lens Wearers. J Craniofac Surg 26, e373-374. https://doi.org/10.1097/SCS.0000000000001876

(追記)
オルソケラトロジーのハードコンタクトレンズは、すべてスポイトによって外すようにしています。

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