コンタクトで減る目の細胞:「角膜内皮細胞」

目次

酸素透過性の高いコンタクトレンズを使用する理由

Injection of Cultured Cells with a ROCK Inhibitor for Bullous Keratopathy

角膜内皮細胞とは

眼球の表面の透明な組織は、角膜と呼ばれます(”くろめ”、”茶目”)。

厚みは0.5mm(中心部)~0.8mm(周辺部)のとても薄い膜:

体内で唯一血管を持たない組織で、きれいな透明性が維持されています1

そして、

角膜の内側を裏打ちしている「角膜内皮細胞」:角膜の透明性の維持に重要。

角膜内皮細胞の特徴

✔ ポンプ機能がある2

角膜は、涙液(外側)・前房水(内側)と、水にひたされた状態になっています。

角膜内皮細胞には、内側の「前房水」を押し出す作用があります。

この機能が失われてしまうと、透明な角膜に水が入ってぶよぶよになってしまいます(=水疱性角膜症)。

✔ 再生しない3

白内障手術など、眼内手術の際に必ず少し損傷されます。

少なくなっても、穴をあけてしまうことはありません。

ひとつひとつの細胞が大きくなって、代償性に角膜の裏のスペースを埋める性質があります。

✔ 年齢を重ねるごとに、少しずつ減少する4

上記の理由で、年齢に応じて大きくなった角膜内皮細胞が観察されます。

大小不同の状態になっていることもあります。

角膜内皮細胞:実際の細胞の数

健康な人では、1mm2あたり2,500-3,000個程度の角膜内皮細胞が観察されます。

2,000個/mm2程度までは、通常問題になりません。

400個/mm2以下になると、ポンプ機能が破綻し「水疱性角膜症」の状態になってしまいます。

高度に視力を障害し角膜移植が必要な状態になります。

コンタクト装用で減る目の細胞:「角膜内皮細胞」

酸素透過性の高いコンタクトレンズを使用することが大事な理由

コンタクト装用時には、角膜が酸素不足になります。

酸素不足に陥った角膜は、新しい血管を生やしてしまうこともあります(角膜パンヌス)。

» 酸素不足で黒目に血管が生える(角膜パンヌス)

大事なこと:

✔ 酸素不足の状態が続くと、角膜内皮細胞は減少する

角膜内皮細胞の減少を予防する方法として、

○ 酸素透過性の高いコンタクトレンズを使用すること
○ コンタクトレンズの装用時間が長くなりすぎないように気をつけること

が、とても大事です。

数十年後に発症してしまうかもしれない「水疱性角膜症」を予防します5

(参考)

1. Ambati, B.K., Nozaki, M., Singh, N., Takeda, A., Jani, P.D., Suthar, T., Albuquerque, R.J.C., Richter, E., Sakurai, E., Newcomb, M.T., Kleinman, M.E., Caldwell, R.B., Lin, Q., Ogura, Y., Orecchia, A., Samuelson, D.A., Agnew, D.W., Leger, J.St., Green, W.R., Mahasreshti, P.J., Curiel, D.T., Kwan, D., Marsh, H., Ikeda, S., Leiper, L.J., Collinson, J.M., Bogdanovich, S., Khurana, T.S., Shibuya, M., Baldwin, M.E., Ferrara, N., Gerber, H.-P., Falco, S.D., Witta, J., Baffi, J.Z., Raisler, B.J., Ambati, J., 2006. Corneal avascularity is due to soluble VEGF receptor-1. Nature 443, 993–997. https://doi.org/10.1038/nature05249

2. Bonanno, J.A., 2012. Molecular mechanisms underlying the corneal endothelial pump. Experimental Eye Research, Corneal Endothelium in Health and Disease 95, 2–7. https://doi.org/10.1016/j.exer.2011.06.004

3. Rao, G.N., Shaw, E.L., Arthur, E.J., Aquavella, J.V., 1979. Endothelial cell morphology and corneal deturgescence. Ann Ophthalmol 11, 885–899.

4. Schoessler, J.P., Orsborn, G.N., 1987. A theory of corneal endothelial polymegethism and aging. Curr. Eye Res. 6, 301–306. https://doi.org/10.3109/02713688709025182

5. Bourne, W.M., 2001. The effect of long-term contact lens wear on the cells of the cornea. CLAO J 27, 225–230.

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