円錐角膜を「早くみつける」ことを大事にしています。
必要に応じて、角膜上皮を傷つけない適切なコンタクトレンズを選ぶ。
“乱視が強い”、”コンタクトがあわない”、”コンタクトを装用してもどうしてもみづらい”
などから、円錐角膜が発見されることがあります。
円錐角膜の診療
円錐角膜とは
円錐角膜では黒目(角膜)が突出し、不正乱視をきたします。
顕微鏡でわずかにわかる程度です。
進行性疾患で、炎症を伴いません。
角膜形状解析装置(角膜トポグラフィー)が診断の助けになります。
・不正乱視の悪化
・”急性水腫”から生じる角膜の濁り
によって、高度に視力を障害してしまう可能性があります 1, 2。
◯ 角膜形状解析装置を用いた、円錐角膜の早期発見/精密検査/経過観察
◯ 円錐角膜の形状に対応した特殊なハードコンタクトレンズ処方(Rose Kレンズ)
視能訓練士と一緒に、診療をおこなっています。
円錐角膜の罹患率は2000人にひとり:
緑内障(40歳以上の20人にひとり)よりは少なく、
網膜剥離(10,000人にひとり)よりは多くみられる疾患です 3。
(=円錐角膜の頻度は、網膜剥離の5倍)
コンタクトがあわない、視力が出ない等の症状で受診されたかたの検査:
乱視が強い状態がわかることがあります。
-2D以上の強い乱視のかたに、「角膜形状解析装置」を用いた検査(スクリーニング)。
その結果、円錐角膜が発見されることがあります。
円錐角膜のコンタクトレンズ処方
ソフトコンタクトレンズでは、円錐角膜の形状を矯正することができません。
そのため、ハードコンタクトレンズの処方が必要になります。
通常のハードコンタクトレンズでは、円錐角膜の突出部がこすれてしまい
ゴロゴロするなどの異物感や、こすれた部位の混濁が生じる可能性がある:
適切な形状のコンタクトレンズが必要になります 4。
「Rose K」円錐角膜用のコンタクトレンズ
ニュージーランドの眼科医(Optometrist)Paul Rose氏により開発されたレンズです。
日本では唯一、円錐角膜用として厚生労働省より認可されているハードコンタクトレンズです。
「three point touch」突出部・周辺部の支えを最適化するレンズを選択:
トライアルレンズは、総計960種類。
様々なグレードの円錐角膜に合うよう、プロトコルに則り選びます。
円錐角膜コンタクト処方の方法論に基づいた「最適なレンズの選択」は、担当者毎の高度な調整加工技術に依存しない「再現性」があります。
突出部とハードコンタクトレンズの間にごく僅かな涙液が存在する状態(feather touch;羽毛のような接触)になるように、適切なベースカーブ・レンズ周囲形状を選択します5。
円錐角膜:最新の治療への対応
円錐角膜は、以前は治療法がとても限られた疾患でした。
・急性水腫への対応(ステロイド治療)
・全層角膜移植の適応
角膜専門施設(2001年当時の山口大学眼科)での研修医時に、毎週たくさんの角膜移植患者さんの診療を担当しました。
手術後の合併症:拒絶反応(5人にひとり)、移植角膜の脱落→再手術 等
手術は、後戻りができません。
「手術」以外の方法で、円錐角膜に対応できたらと考えます。
健康な角膜は透明で、免疫反応がなさそうにみえます。
角膜移植後に拒絶反応が起こるのは、角膜にも免疫細胞が存在するためです 6。
現在では新しい治療法が登場し、円錐角膜の早期発見がより重要な時代になりました。
◯ 円錐角膜の進行を抑制する「角膜クロスリンキング」(Corneal collagen cross-linking, CXL) 7
◯ 円錐角膜の進行を抑制する「角膜内リング」(Instastromal corneal ring segment, ICRS) 8
いずれも保険診療外の治療です。
適応の有無を患者さんと相談したうえで、最適な角膜専門施設への紹介/併診をおこなっています。
得意分野を持つ国内外の角膜専門医と、画像を用いて相談する機会もあります。
いつもありがとうございます。
(参考)
1. Jhanji, V., Sharma, N., Vajpayee, R.B., 2011. Management of keratoconus: current scenario. British Journal of Ophthalmology 95, 1044–1050. https://doi.org/10.1136/bjo.2010.185868
2. Fan Gaskin, J.C., Patel, D.V., McGhee, C.N.J., 2014. Acute Corneal Hydrops in Keratoconus—New Perspectives. American Journal of Ophthalmology 157, 921-928.e1. https://doi.org/10.1016/j.ajo.2014.01.017
3. 井手武., 2019. 診療所で円錐角膜を見つけるには 日本の眼科90: 8号 p.1024-28.
4. Leung, K.K., 1999. RGP fitting philosophies for keratoconus. Clinical and Experimental Optometry 82, 230–235. https://doi.org/10.1111/j.1444-0938.1999.tb06653.x
5. Mandathara Sudharman, P., Rathi, V., Dumapati, S., 2010. Rose K Lenses for Keratoconus—An Indian Experience: Eye & Contact Lens: Science & Clinical Practice 36, 220–222. https://doi.org/10.1097/ICL.0b013e3181e5cd0b
6. Hamrah, P., Liu, Y., Zhang, Q., Dana, M.R., 2003. The Corneal Stroma Is Endowed with a Significant Number of Resident Dendritic Cells. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 44, 581–589. https://doi.org/10.1167/iovs.02-0838
7. O’Brart, D.P.S., 2014. Corneal collagen cross-linking: A review. Journal of Optometry 7, 113–124. https://doi.org/10.1016/j.optom.2013.12.001
8. Miraftab, M., Hashemi, H., Hafezi, F., Asgari, S., 2017. Mid-Term Results of a Single Intrastromal Corneal Ring Segment for Mild to Moderate Progressive Keratoconus: Cornea 36, 530–534. https://doi.org/10.1097/ICO.0000000000001115
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