[糖尿病とは]
血液中のブドウ糖(血糖)は血管にとって悪い働きをすることが知られています。
食事により血糖値が上がると、胃の裏側にあるすい臓は瞬時にインスリンを分泌して血糖を下げます。
この働きが悪くなり血糖値が上がったままになると、血管が内側から傷つけられてしまいます。
長い間この状態が続くことにより、からだの中で最も細い血管を持つ組織(腎臓/末梢神経/網膜)から糖尿病の合併症が現れます。
[目の合併症:糖尿病網膜症]
血管の働きが悪くなると、目の奥の神経(網膜)に血液が行き渡らなくなります(虚血)。
虚血の状態になった網膜は諸悪の根源です。
網膜の細胞が炎症をおこし様々な蛋白(サイトカイン)が目の中にたまって、網膜の血管にさらに悪い働きをします。
・網膜血管の透過性亢進:血管の壁が弱くなり、水が漏れ出てくる
→網膜の中心部(黄斑部)にたまり視力低下
・網膜血管新生:網膜の酸素不足に反応して、新しく弱い血管が作られる
→目の中に出血(硝子体出血)
・その他 網膜剥離(牽引性網膜剥離)、続発緑内障 等
目の中の状態が悪循環となり、糖尿病網膜症が進行します。
かなり悪くなるまで、目の自覚症状は出ません。
糖尿病と診断されている方は必ず眼科を受診することが重要です。
[診察・診断]
2021.8.29 追記:以下を使用できるようになりました。
» 網膜画像診断の進歩:超広角眼底撮影
眼底診察を行い網膜症の有無/虚血の進行度を判定、次の受診の目安をお伝えします。
必要に応じて眼底写真、光干渉断層計、光干渉断層血管撮影、静的視野検査等の機器を用い、全ての検査結果は画像を提示してご説明します。
[治療]
網膜光凝固(レーザー治療)
:虚血状態となった網膜の機能を停止することによって、病状の進行を抑えます。
ステロイド後部テノン嚢下注射
:眼球の外側に懸濁ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)を注入、目の中の炎症を抑えます。
抗VEGF硝子体内投与
:目の中のサイトカインのうちVEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑えることにより病状の進行を抑えます。
硝子体手術
:目のなかにたまるサイトカインを除去することが主な目的です。その他増殖膜の除去、眼内光凝固、網膜剥離の修復等、かなり進行した糖尿病網膜症に対して行われます。
近年の眼科診療の発展により、早くに対処できれば視力が下がることを防げる時代になりました。
病態を把握し最適な時期を見極めた上で、連携先の病院とも協力したうえ最適な治療を行います。どうぞよろしくお願い致します。