レーシック後の緑内障:「眼圧が低めに出てしまう」問題点とは

レーシック手術をした影響で緑内障になりやすい、のではありません。
レーシック適応の目(レーシックを必要とする目)
=緑内障になりやすい(リスクが高い)目 となっています。

また眼圧が低めに出てしまうため、緑内障のスクリーニング検査(健康診断の眼圧検査)をすり抜けてしまうことがあります。

緑内障は目の奥「網膜」「視神経」の病気、
レーシック(LASIK, Laser in-situ keratomileusis)は、目の前の方「角膜」だけの治療です。

・レーシック手術をしたこと、と
・緑内障になること
に、直接の関係はありません。

近視が強い「強度近視」のかたは、40代以降に緑内障を発症するリスクが比較的高くなっています。

レーシックの手術がおこなわれる「近視」「強度近視」は、もともと合併症を発症するリスクが高い目です。

レーシック手術中には、suction ringと呼ばれる器具による吸引で一時的に眼圧を上げます。

マイクロケラトームを用いたレーシックでは、122-141 mmHg まで、
フェムトセカンドレーザーを用いると、62-81 mmHg まで眼圧が上がります1

急激に上がった眼圧がきっかけで緑内障を発症する、と科学的な根拠を持つ文献はありませんでした。

レーシックで角膜を手術してピントが後ろに合うようになったため、みえる状態となりました。
近視の戻りがあるのは、薄くなった角膜がまた厚みを増した影響からです。


でも眼軸は伸びたまま
=強度近視に伴うリスクは残ったまま
です。

レーシックが必要となる目
=近視が強い
=眼軸が長い
=緑内障のリスクが高い

レーシックをしたあと、40代になる
=さらに緑内障のリスクが高くなってきます。

目次

レーシック後の緑内障:「眼圧が低めに出てしまう」問題点とは

レーシック後の目では、”正確な” 眼圧がわからない

レーシック後は角膜が薄くなっているため、眼圧が正確に測れない

問題となるのは
レーシック後は、緑内障(疑い)が検出されないことがある
ことです。

レーシック後の眼は、眼圧の値は低く出ます。
角膜が薄くなっているためです。
実際は高い眼圧が、低い眼圧値になってしまっていることがあります2

レーシックを受けた後は眼圧が過小評価されて、
健康診断など、緑内障の“スクリーニング検査”をすりぬけてしまう可能性があります。

眼圧を測定する方法とは

眼圧の測定方法は、主に2つあります。

目に空気をあてる方法(Non-contact Tonometry, NCT)

検査室でおこないます。

ゴールドマンアプラネーショントノメーター(Goldmann Applanation Tonometry, GAT)

診察室でおこないます。

2つの方法で測った眼圧の値には、相違があることがわかっています3

持続的に眼圧をモニターする方法もあります。
現在は実用段階ではありません。

角膜の厚みに依存する「眼圧」の値:緑内障 “疑い”を判別するためには

眼圧測定方法は、どちらも角膜の厚みに依存します。
・角膜が厚い:眼圧の値が高めに出る。
・角膜が薄い:眼圧の値が低めに出る。

緑内障のスクリーニング検査(健康診断)は主に2つ:

  • 眼圧
  • 眼底写真

このうち、眼圧が低く出てくるので
緑内障(疑い)が見逃されてしまっている可能性があります。
眼底写真の結果から、「視神経乳頭陥凹拡大」を指摘されることがあります。

進んでいた近視によって、目の長さ(眼軸長)が長くなっています。

眼軸の長さ


目の前の方「角膜」を扱うレーシック手術を行うことで、裸眼視力が改善します。
そして生活の質が上がることは、素晴らしいことです。
でも眼軸が長い状態は、改善しているわけではありません。

角膜を手術して、ピントが後ろに合うようになった みえる
眼軸は伸びたまま 強度近視のリスクは残ったまま

の状態となっています。

(眼科医を含め 眼科で働くひとは、レーシック・ICL手術を受けずメガネ・コンタクトの方がほとんどのようです)

レーシック後の目:気をつけること

  • レーシックを受けていて、
  • 40歳を越えたかた は、

自分に緑内障の心配があるかどうか
を、判定しておくことが大事です。

レーシック手術後の方は、眼圧が実際の値より低めに出ることがあります。
眼圧が高くなくても(健康診断で高眼圧を指摘されていなくても)、緑内障が隠れている可能性があります。

緑内障疑いとなる所見は、眼底三次元画像解析(Optical Coherence Tomography, OCT)で判定されます。

OCT 緑内障

現代の眼科では画像解析が発達して、OCTは数秒で終わる検査となりました。

でも、過剰に心配されませんように。。

参考文献

  1. Chaurasia, SS, Luengo Gimeno, F, Tan, K, Yu, S, Tan, DT, Beuerman, RW & Mehta, JS 2010, ‘In Vivo Real-Time Intraocular Pressure Variations during LASIK Flap Creation’, Investigative Ophthalmology & Visual Science, vol. 51, no. 9, pp. 4641-4645.
  2. Fournier, A.V., Podtetenev, M., Lemire, J., Thompson, P., Duchesne, R., Perreault, C., Chehade, N., Blondeau, P., 1998. Intraocular pressure change measured by Goldmann tonometry after laser in situ keratomileusis. J Cataract Refract Surg 24, 905–910. https://doi.org/10.1016/s0886-3350(98)80041-2
  3. Wang, P., Song, Y., Lin, F., Wang, Z., Gao, X., Cheng, W., Chen, M., Peng, Y., Liu, Y., Zhang, X., Chen, S., 2022. Comparison of Non-contact Tonometry and Goldmann Applanation Tonometry Measurements in Non-pathologic High Myopia. Frontiers in Medicine 9.
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