新しいメガネをかけても見えにくい、頭痛がする、違和感があるといった症状となってしまうこともあります。
視能訓練士が検査を行い、
眼科で適切な検査を受けて処方されたメガネでも、様々な要因により期待通りの効果が得られない場合があります。
メガネが合わない主な原因

調節痙攣による処方の不正確性
調節痙攣は、眼の水晶体を調節する毛様体筋が過度に緊張し、適切にリラックスできない状態です。
長時間の近業作業やデジタルデバイスの使用により発症することが多く、特に若年者に頻繁に見られます。
調節痙攣が起きている状態で屈折検査を行うと、実際の屈折度数よりも近視が強く測定される傾向があります。結果として、過矯正されたメガネが処方され、装用時に眼精疲労や頭痛を引き起こすことになります。

検査時の体調変化
視力検査を受けた日の体調と、メガネを受け取った後の体調が異なる場合、見え方に違いが生じることがあります。
疲労状態、睡眠不足、ストレスレベルの変化は眼の調節機能に影響を与えます。
また、女性の場合は月経周期によるホルモンバランスの変化が視力に影響することがあります。
妊娠中や授乳期においても、体内の水分バランスの変化により一時的に屈折度数が変わることが知られています。

慣れの期間が必要な場合
新しいメガネに慣れるまで一定の期間を要することは珍しくありません。特に初回のメガネ装用者や、度数に大きな変更があった場合は、脳が新しい視覚情報に適応するのに時間がかかります。


遠近両用レンズや累進多焦点レンズの場合、視線の使い方を覚える必要があるため、慣れるまでに数週間を要することもあります。適切な視線移動や頭の動かし方を身につけることで、快適に使用できるようになります。
レンズの選択や加工の問題
処方箋通りに作られていても、レンズの種類や加工方法が使用者の生活スタイルに適していない場合があります。単焦点レンズで処方されているにも関わらず、実際には中間距離や近距離での作業が多い場合、眼精疲労を感じることがあります。
また、フレームの形状やサイズがレンズの光学的性能に影響することもあります。特に度数が強い場合、フレームの選択により見え方の質が大きく左右されます。
フィッティングの不備
メガネの物理的な装用感も見え方に大きく影響します。鼻パッドの高さや幅、テンプル(メガネの”つる”の部分)の角度が適切でないと、レンズの光学中心と瞳孔の位置がずれ、適切な矯正効果が得られません。
特に遠近両用レンズの場合、わずかなフィッティングのずれが使用感を大きく損なうことがあります。レンズの累進帯の位置と視線の高さが合わないと、遠用部分や近用部分を適切に使用できなくなります。
斜視の存在

通常の検査では発見されにくい軽度の斜視が隠れていることがあります。
斜視とは、両眼の視軸が完全に平行ではない状態で、日常生活では両眼視により代償されているため自覚症状がない場合が多くあります。
しかし、メガネ装用により視力が向上すると、今まで気づかなかった微妙な斜視による眼精疲労や複視感が顕在化することがあります。特に長時間の近業作業時に症状が現れやすく、頭痛や眼の疲れとして感じられます。
プリズム補正により斜視を矯正することで、快適な両眼視が得られるようになります。
ただし、プリズム処方には専門的な検査と判断が必要になります。
対処方法

再検査の検討
メガネが合わない症状が1〜2週間続く場合、処方を見直す必要があるかもしれません。
調節痙攣が疑われる場合、調節麻痺薬(ミドリンP・サイプレジン点眼等)を使用した検査により、より正確な屈折度数を測定することができます。
また、調節緊張を緩和するための点眼薬処方が検討されることもあります。
検査時の環境や体調を変えて再度測定することで、より正確な処方を得られる場合があります。
自覚症状を詳しく伝えることで、使用目的に応じた最適な処方を受けることができます。
眼鏡店での対応

多忙等で再度眼科を受診することが困難な場合、取り急ぎ眼鏡店で直接合わせ直すことも一つの解決方法です。
眼鏡店では現在装用中のメガネの度数を測定し、使用者の症状や要望に応じて微調整を行うこともできます。
その場合、視能訓練士の検査を元に処方箋を発行した時点での検査結果と異なることになります。
大幅な度数変更や眼疾患が疑われる場合は、眼科での再検査が必要になるかもしれません。
フィッティング調整
多くの場合、適切なフィッティング調整により問題が解決されます。眼鏡店での専門的な調整により、レンズの光学中心と瞳孔の位置を正確に合わせることができます。
鼻パッドの位置や角度、テンプル(メガネの”つる”の部分)の曲がり具合など、細かな調整により装用感が大幅に改善されることがあります。定期的なメンテナンスにより、長期間快適に使用することが可能になります。
段階的な度数変更
大幅な度数変更が必要な場合、一度に完全矯正するのではなく、段階的に度数を上げていく方法があります。眼が新しい度数に徐々に適応できるため、違和感を最小限に抑えることができます。
特に老視の進行により初めて遠近両用レンズを使用する場合、加入度数を段階的に上げることで、スムーズな移行が可能になります。
生活習慣の改善をはかる
調節痙攣や眼精疲労を根本的に改善するため、デジタルデバイスの使用時間を見直すことが重要です。
20-20-20ルール(20分ごとに20フィート(5-6m) 先を20秒間見る)の実践により、眼の負担を軽減できます。

適切な照明環境の確保、定期的な休憩、十分な睡眠も眼の健康維持に重要と考えられます。
まとめ
眼科で処方されたメガネが合わない場合、調節痙攣、体調変化、慣れの問題、レンズ選択の不適切さ、フィッティング不備など様々な原因が考えられます。
視能訓練士・眼科医は、その適切な原因の特定と対処を考えます。
必要に応じて、担当眼鏡店と連絡・調整を行います。
症状が続く場合は、早めに相談して最適な解決策を見つけることが大切です。