「メガネをかけると目が悪くなる？」
メガネの使用が視力に与える影響については、長年にわたりさまざまな誤解が存在してきました。

最新の科学的知見に基づき、メガネの使用と視力の関係について解説します。

メガネは視力を悪化させるか？　科学的根拠に基づく考察

メガネと視力：基本的な理解

メガネは視力を補正する光学機器です。

屈折異常による視力の問題を改善する、重要な役割を果たしています。

近年の研究により、メガネの使用自体が視力を悪化させるという従来の懸念は科学的根拠に欠けることが明確になっています¹。

屈折異常の本質的理解

屈折異常は、眼球の構造的特徴により生じる視覚の問題です。

主な種類には以下があります：

1. 近視：眼軸（眼球の前後の長さ）が正常より長い状態です。
2. 遠視：眼軸が正常より短い状態です。
3. 乱視：角膜の表面が歪んでいる（サッカーボールのような真球ではなく、ラグビーボールのような形）状態です。

これらの状態は、眼球の形状や角膜の曲率といった解剖学的要因によって引き起こされます²。

特に、近視の発症と進行については、遺伝的要因と環境要因の両方が関与していることが最新の研究で明らかになっています。

メガネの作用機序と視力への影響

メガネのレンズは、光の屈折を調整することで網膜上に明確な像を結ぶよう設計されています。

この過程で、以下の重要な作用が生じます：

1. 光線の適切な屈折による像の鮮明化
2. 網膜上での焦点調整の補助
3. 視覚情報処理の効率化

適切に処方されたメガネの使用は、視覚系に悪影響を与えることなく視力を補正することが確認されています³。

近視の進行とメガネの関係

特に注目すべき点は、メガネの使用と近視の進行に関する誤解です。

長期的な追跡調査によれば、適切な度数のメガネの使用は近視の進行を促進しないことが示されています⁴。

むしろ、以下の要因が近視の進行に関与することが明らかになっています：

• 遺伝的素因
• 近距離作業の増加
• 屋外活動の不足
• デジタルデバイスの過度な使用

視力管理の科学的アプローチ

現代の視力管理においては、以下の要素が重要視されています：

1. 定期的な視力検査

視力の変化を早期に発見し、適切な対応を取るために不可欠です。

定期的な視力検査と適切な矯正により、視覚関連のQOL（Quality of Life）が有意に改善することが示されています⁵。

「メガネが合わなくなった」「メガネで見づらい」
と、こどもから気づくことは少ないようです。
（2-3か月に一度くらい）ときどき視力を測ってあげて、近視が進行していたらメガネの度数変更を考慮するのが良いと思われます。

2. 環境要因の管理

視力の保護には、以下の要素が重要です：

• 適切な照明環境の維持
• 定期的な休憩の実施
• 作業距離の適正化
• スクリーンタイムの管理

3. 予防的アプローチ

特に小児期における視力管理では、以下の予防的措置が推奨されています：

• 定期的な屋外活動の実施
• 適切な読書姿勢の維持
• バランスの取れた栄養摂取

コロナの時代には、かなり近視進行がみられました。
こどもの屋外活動時間が減ったことが原因と考えられます。

最新の研究知見

近年の研究では、以下の重要な発見が報告されています：

メガネの早期使用と視力発達の関係

• 適切な時期のメガネ使用は視覚発達を促進
• 未矯正の視力障害は学習能力に影響を与える可能性

デジタルデバイスの影響

• ブルーライトと眼精疲労の関係
• スクリーン使用時の適切な休憩の重要性

環境因子の影響

• 自然光暴露の重要性
• 近距離作業のバランス管理

結論：メガネは視力を悪化させるか？

科学的エビデンスに基づくと、
適切に処方されたメガネの使用は視力を悪化させることはありません。
「メガネをかけると目が悪くなる」ということは、昔の考え方だったようです。

むしろメガネは、視覚機能の維持と生活の質の向上に貢献します。

重要なことは、定期的な検査と適切な使用方法の遵守と考えられます。

参考文献

1. Zadnik, K., Sinnott, L.T., Cotter, S.A., Jones-Jordan, L.A., Kleinstein, R.N., Manny, R.E., Twelker, J.D. & Mutti, D.O., 2020, ‘Prediction of Juvenile-Onset Myopia’, JAMA Ophthalmology, vol. 138, no. 7, pp. 762-768.
2. Morgan, I.G., Wu, P.C., Ostrin, L.A. & Tideman, J.W.L., 2021, ‘IMI Risk Factors for Myopia’, Investigative Ophthalmology & Visual Science, vol. 62, no. 5, p. 3.
3. Cheng, D., Woo, G.C., Drobe, B. & Schmid, K.L., 2019, ‘Effect of bifocal and prismatic bifocal spectacles on myopia progression in children: three-year results of a randomized clinical trial’, JAMA Ophthalmology, vol. 137, no. 7, pp. 769-778.
4. Wu, P.C., Chen, C.T., Lin, K.K., Sun, C.C., Kuo, C.N., Huang, H.M. & Yang, Y.H., 2018, ‘Myopia Prevention and Outdoor Light Intensity in a School-Based Cluster Randomized Trial’, Ophthalmology, vol. 125, no. 8, pp. 1239-1250.
5. McClure, T.M., Choi, D., Wooten, K., Nield, C., Becker, T.M. & Mansberger, S.L., 2011, ‘The impact of eyeglasses on vision-related quality of life in American Indian/Alaska Natives’, American Journal of Ophthalmology, vol. 151, no. 1, pp. 175-182.