コンタクトをしたまま寝る「危険性」:その理由と、6つの実例

コンタクトをつけたまま寝てしまうと、一晩でも失明につながる「角膜感染症」の危険があります。
角膜感染症の主な原因は、まぶたが閉じた状態で黒目(角膜)が急激に酸素不足になることです。


黒目と白目からなる“眼表面”は外界に接しており、微生物を含むあらゆるものが容易に入ってきます。

前眼部

酸素は眼表面(涙液、角膜上皮、結膜)において微生物と戦う免疫システムの前提として必要です。
つまり、酸素が不足していると、微生物との戦いが十分にできなくなります。

まぶたを閉じたまま寝てしまうと、微生物(細菌・真菌・アメーバなど)が増える好環境となります。

コンタクトレンズは正しく使用する限り安全な医療器具ですが、使い方を誤ると重大な眼障害を引き起こす可能性があります。
そのため、コンタクトレンズは医薬品医療機器等法(旧薬事法)により高度管理医療機器クラスIIIに分類されています。

コンタクトを目の中で紛失したまま寝ることも、同じように危険です。

目の裏にコンタクトが入らない理由は、結膜(瞼結膜と球結膜)が折り返されているからです。

目の中で紛失したコンタクトレンズがどうしても見つからない時は、急ぎ眼科受診をされると良いかと思います。

目次

コンタクトをしたまま寝る「危険性」:その理由と、6つの実例

角膜感染症のリスクが高くなる理由

✔ コンタクトレンズに付着した微生物の持ち込み
✔ 微生物増殖に適した環境
酸素不足

コンタクトをつけたまま寝ると、
主にこの3点による角膜感染症のリスクが上昇すると考えられます。

生体で炎症が起こると、治ったあとは程度により組織に瘢痕化(きずあと)を残します。

眼の炎症は特殊で、その透明性を最大限に残したままで治癒することが大切です。

眼組織に瘢痕を残して治った場合、一生の視力に影響を及ぼします。

異常を感じたら早い段階で眼科専門医の診察を受け、なるべく瘢痕を残さずに治すことが重要と考えます。

» 炎症性疾患への考え方

Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病管理予防センター)の総説より

Corneal Infections Associated with Sleeping in Contact Lenses — Six Cases, United States, 2016–2018
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6732a2.htm

✔ CLを装用したまま就寝することによって、CL関連眼感染症のリスクが6-8倍高くなる。
✔ 3人のうち1人のコンタクトレンズ装用者は就寝時にCLをはずしていない

コンタクトレンズ関連の眼感染症

○ ひどい視力低下/失明をきたす可能性がある
○ (角膜移植等の)手術が必要になる可能性がある
○ 強い抗生剤点眼を必要とする

ケース1
34歳の男性。17歳からソフトコンタクトレンズ装用歴有り。
左目が充血・みえづらくなり眼科受診。
週3−4回はコンタクトレンズをつけたまま寝ていて、プールで泳ぐときもコンタクトレンズをはずしていなかった。

近医眼科にて細菌性角膜炎・真菌性角膜炎の診断で2か月加療を受けるも改善無し。

大学病院にて共焦点顕微鏡での検査の結果、アカントアメーバ角膜炎の診断を受けた。
1時間おきの消毒液点眼を半年以上行った結果、矯正視力(0.5)まで回復した。

ケース2
59歳の男性。狩猟のため外出中はコンタクトレンズを終日はずさずにいたが、3日目に目の痛みを自覚。
市販の目薬を点眼するも改善なし。

近医眼科にて角膜上皮剥離(黒目の表面の皮がはがれること)に対して、治療用CLと1日4回抗生剤点眼の加療をうけるも症状悪化。
抗生剤を変更し、2時間おきに点眼。

治療期間中、シャワーを浴びてタオルで顔を拭いたときに左目からぽん(popping sound)と音がして、その直後から激痛を感じた。
すぐに眼科受診、角膜穿孔と診断された(黒目に穴があいた状態)。

緊急角膜移植を受け、術後も抗生剤点眼。

1年後には白内障手術を受け、奇跡的に矯正視力(0.8)まで回復した。

ケース3
34歳の女性。3日間続く右目の痛みで受診。
連続装用で定められている期間より長くコンタクトレンズを装用していたうえ、いつもつけたまま寝ていた。

数年間は眼科を受診しておらず、5年以上はインターネットでコンタクトレンズを購入していた。

右目は1.5mm径の浸潤(黒目の中の白い円形病巣)と前房混濁わずか(黒目の後ろに炎症)。

抗生剤点眼にて症状改善したが、1週間後の再診予定に現れなかった。

ケース4
57歳の男性。両目の視力低下と痛みで救急外来を受診。2週間程度同じソフトコンタクトレンズを装用していた。
毎日のコンタクトレンズケアをしておらず、いつもコンタクトレンズをつけたまま就寝、交換も行っていなかった。

受診時右目視力は光覚弁(光がわかる程度)、左目は手動弁(手の動きがわかる程度)。

右目は中心部角膜浸潤と角膜穿孔(黒目が炎症で白くなり穴があいた)。左目も角膜浸潤と前房蓄膿(黒目の後ろの炎症が非常に強い状態)。

両目の細菌性角膜炎の診断にて強力な抗生剤治療。右目には、角膜移植がおこなわれた。

左目は点眼治療に反応し、中心部瘢痕(黒目の真ん中が白くなった)を残して矯正視力(0.5)まで回復した。

ケース5
17歳の女性。眼科医の診察を受けずお店で購入したソフトコンタクトレンズを装用し就寝、右目は緑膿菌による角膜潰瘍と診断された。

右目視力は光覚弁(光がわかる程度)、炎症は非常に強い状態であった。

強力な抗生剤治療を受け炎症は落ち着いたが、角膜瘢痕および菲薄化を残した(黒目が白くなった状態)。

ケース6
18歳の男性。左目の痛み/充血/まぶしさ/流涙が3日間止まらないため救急外来を受診。

1年前に眼科医の診察無しで繁華街にある店舗からカラーコンタクトレンズを購入し装用を続けていた。就寝時もはずしていなかった。

すぐに抗生剤点眼を処方され、近くの眼科通院。矯正視力右(0.8)左(0.4)。強力な抗生剤治療を受け10日後に症状は改善。

左目も矯正視力(0.8)まで回復したが、角膜実質瘢痕を残した(黒目が白くなった状態)。

コンタクトレンズのケースからは、増殖した細菌が検出された。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次