「スマホ内斜視」(スマートフォンの使いすぎによる “寄り目”)

数年前と比べて、スマートフォン利用者は急激に増えました。

スマホの使いすぎやVDT作業により、目を内側に向かせる筋肉(内直筋)に負担がかかり“寄り目”になってしまいます(内斜視):「急性内斜視」

スマホ内斜視の治し方:
スマートフォンの長時間使用の結果「急性内斜視」が戻らなくなれば、斜視手術が必要となることもあります。
手術は、大きな負担になってしまいます。

近くをみるときは、寄り目になりピントをあわせる筋肉を緊張させています(輻輳/毛様体筋による調節緊張)。

“目が良い” 遠くがよくみえるひとは、特に調節緊張も強い状態になります。

「スマホ内斜視」
(スマートフォンの使いすぎによる “寄り目”)

「急性内斜視」:
急性後天性内斜視 (acute acquired comitant esotropia, AACE)は30年前よりあった疾患概念でしたが、まれなものとされていました1

韓国の忠南大学(Chungnam National University)からの論文の紹介です2
2010年には5.8%~2011年には36.2%、
2013年には81.5%の人がスマートフォンを使うようになりました。

忠南大学小児眼科の2009~2014のカルテより12人を対象とした研究:
○ 年齢は7-16歳:平均13.33(±3.31)歳
○ 発症して平均5.83(±2.89)か月で来院。
○ スマートフォン使用は1日あたり平均6.08(±1.78)時間、10.5(±5.13)か月。
○ 全ての患者さんが30cm以下の距離でスマートフォンを使用。
○ 9人が水平複視(だぶってみえる状態)
○ そのうち5人は遠くをみるときにときどき複視があった。
○ 生活に重大な支障のある患者さんはいなかった。

✓ スマートフォンの使用を制限することで、全員に内斜の改善があった。

✓ 制限後も内斜が残った患者さん5人には、斜視手術を推奨し3人が手術を受け内斜視が改善した。

* まだ症例が少ないため、エビデンスの蓄積が必要と思われます。(同論文より)

Acute acquired comitant esotropia (急性後天性内斜視:AACE)

(1) Swan type:

esotropia due to the disruption of fusion (precipitated by monocular occlusion or loss of vision in one eye);
内斜視で立体視ができない状態になっている
片目をかくすと楽になる/片目が見えていない状態になっている(抑制)

(2) Burian-Franceschetti type:

esotropia characterized by minimal hypermetropia and diplopia, often associated with physical or psychological stress;
遠視や複視を特徴とした内斜視、身体的・精神的ストレスがあるかたに発症することが多い

(3) Bielschowsky type:

esotropia that occurs in adolescents and adults with varying degrees of myopia, and shows equal deviation at distance and near fixation
思春期や成人に起こる内斜視
軽度~高度の近視、遠くをみるときも近くをみるときも両眼のバランスが同じになっている状態

スマホ内斜視の検査・治療

スマホ内斜視の検査では、視能訓練士が以下の手順を通じて眼位の評価を行います。

検査手順

  1. 問診
    まず、視能訓練士は患者さんの視覚症状やスマートフォンの使用状況について詳しく聞き取ります。
    どのくらいの時間スマートフォンを使用しているか、症状がいつから始まったか、どのような症状があるかなどを確認します。

  2. 視力検査
    次に、基本的な視力検査を行います。
    視力の低下が他の視覚異常と関連していないか確認するために、とても大事な検査です。

  3. 眼位検査/眼筋の評価
    視能訓練士は、患者さんの眼球の位置と動きを詳細に観察します。
    眼球の動きが正常であるかを確認するために、眼筋の評価となります。
    眼位検査は、外斜視や内斜視などの斜視のタイプを特定するために重要です。

    患者さんが特定の視標を見つめる際の眼球の動きを追跡、
    9方向眼位(上下左右・正面・斜め)の写真を撮ります。

    9Gazeのアプリを使います:
    https://apps.apple.com/jp/app/9-gaze/id1173442389?l=en-US

  4. スマートフォン使用時の評価
    スマートフォンを実際に使用しているときの眼位を評価するため、患者さんには通常の使用方法でスマートフォンを操作してもらいます。この際、眼球の動きや位置に変化があるかを確認します。

  5. 追加の視覚テスト
    必要に応じて、さらに詳細な視覚機能のテストを行うこともあります。例えば、立体視や深視力の検査、視野の評価などが含まれます。

スマホ内斜視への対処・治療

1. スマートフォン使用時間の制限
スマートフォンの使用時間を制限し、定期的な休憩を取ることを推奨します。
20分ごとに20秒程度遠くを見つめる「20-20-20ルール」を実践することが有効です。

2. 適切なメガネやコンタクトレンズを合わせる
必要に応じて、メガネやコンタクトレンズなどの視力矯正器具の適切な処方を検討します。
調節機能解析装置(アコモレフ)を用います。

3. 環境の改善
スマートフォンの使用環境を改善することも重要です。
適切な照明、画面の明るさ調整、画面からの距離を保つことなどが含まれます。

スマホの通知は切っておくことがおすすめです

4. その他の治療法
斜視の程度が重い場合や改善が見られない場合は、外科的治療「斜視手術」が検討されることがあります。

参考文献

1.Clark, A.C., Nelson, L.B., Simon, J.W., Wagner, R., Rubin, S.E.. Acute acquired comitant esotropia. Br J Ophthalmol. 1989 Aug; 73(8): 636–638.
2.Lee, H.S., Park, S.W., Heo, H., 2016. Acute acquired comitant esotropia related to excessive Smartphone use. BMC Ophthalmol 16.
https://doi.org/10.1186/s12886-016-0213-5

» 「デジタルデバイスの小児および若年者に与える影響」

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