注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療において重要な役割を果たすメチルフェニデート(コンサータ®)。
目のピントが合いづらくなるなどの副作用を持つことがわかっています。
しかし、その使用にはもっと慎重な眼科的モニタリングが必要かもしれません。
2024年に発表された大規模研究により、
ADHD治療薬が緑内障リスクを高める可能性が明らかになってきました1。
コンサータ®以外に、ストラテラ®・アデラル®についても記載されています。
メチルフェニデート
- 商品名:コンサータ®、リタリン®
- 開放隅角緑内障リスク:23%増加(aIRR 1.23)
- 用途:中枢神経刺激薬/ADHD第一選択薬
アトモキセチン
- 商品名:ストラテラ®
- 閉塞隅角緑内障リスク:2.55倍増加(aIRR 2.55)
- 用途:非中枢刺激薬
アンフェタミン
- 商品名:アデラル®(日本未承認)
- 閉塞隅角緑内障リスク:23%増加(aIRR 1.23)
- 用途:中枢神経刺激薬
メチルフェニデートは、ドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで治療効果を発揮します。これらの神経伝達物質は眼圧調節にも関与しており、その干渉が緑内障リスクの上昇につながる可能性があります。
ADHD治療薬を使うときに気をつけることは、
緑内障リスクを高める影響が投与量に関係なく現れる可能性があるという点です。
ADHD治療薬「コンサータ」の副作用:緑内障リスクを高める可能性

ADHD治療薬「コンサータ」が緑内障リスクを高める可能性:研究結果の詳細

2024年に発表された大規模コホート研究(240,257人のADHD患者対象)では、以下のリスク上昇が確認されました:
- メチルフェニデート使用者:開放隅角緑内障のリスクが23%増加
(調整発生率比[aIRR] 1.23; 95%信頼区間1.05-1.44) - アトモキセチン使用者:閉塞隅角緑内障のリスクが2.55倍に上昇
(aIRR 2.55; 95%信頼区間1.20-5.43) - アンフェタミン使用者:閉塞隅角緑内障のリスクが23%増加
(aIRR 1.23; 95%信頼区間1.05-1.44)


aIRR (adjusted Incidence Rate Ratio:調整発生率比)は、他の要因(年齢、性別、併存疾患など)の影響を統計的に補正した後の、特定の要因による疾患発生率の比率を示します。
例:aIRR 2.55は、他の要因を調整した後で、薬剤非使用群と比較して使用群の疾患発生率が2.55倍高いことを意味します。
95%信頼区間(CI)が1を含まない場合(例:1.20-5.43)、その関連は統計的に有意と判断されます。
の影響を統計的に補正した後の、特定の要因による疾患発生率の比率を示します。-visua-1024x605.webp)
対象患者(平均年齢45歳、女性55%)の薬剤使用内訳:
- アンフェタミン:44.54%
- メチルフェニデート:33.82%
- アトモキセチン:6.59%
- 複数薬剤併用:15.04%
ADHD治療薬使用中に気をつけること:臨床での観察と対応

メチルフェニデート(コンサータ®)の眼圧への影響は、投与量や期間によって様々な症例が報告されています。
低用量(18mg/日)でも眼圧上昇が観察され、投薬中止で正常化したケースがある一方、
60mg/日を2年間投与したケースでは眼圧が30mmHgまで上昇し、点眼治療への抵抗性を示しました。
最も重篤な例では、同様の投与量(60mg/日・2年間)で白内障と緑内障を発症し、点眼治療が無効であったため緑内障手術が必要となった症例が報告されています(Lu et al., 2007)2。
ADHD治療薬使用中には、定期的な眼科的評価の必要性があることを強く示唆しています。
推奨される予防的アプローチ
研究者らは「現時点では重大な公衆衛生上の問題ではないが、注意深い監視が必要」と指摘し、以下を推奨しています:
- 年1回の眼圧測定
- 眼科的症状がある場合の詳細な検査
- 定期的な眼科検診による経過観察
- リスク因子を持つ患者への特別な注意
ADHD治療薬「コンサータ」の副作用:緑内障リスクを高める可能性
ADHD治療薬の使用者では、薬剤の種類によって異なる程度で緑内障リスクが上昇することが明らかになりました。
治療の有効性を維持しながら、定期的な眼科での経過観察が重要です。

参考文献
1. Darwich, R., Etminan, M., He, B., Eadie, B.D., 2024. Medications for attention deficit hyperactivity disorder associated with increased risk of developing glaucoma. Eye 38, 2638–2643. https://doi.org/10.1038/s41433-024-03100-6
2. Lu, C.-K., Kuang, T.-M., Chou, J.C.-K., 2006. Methylphenidate (Ritalin)-associated cataract and glaucoma. J Chin Med Assoc 69, 589–590. https://doi.org/10.1016/S1726-4901(09)70335-1