レーシック後の緑内障:「眼圧が低めに出てしまう」問題点とは

レーシック手術をした影響で緑内障になりやすい、のではありません。
レーシック適応の目(レーシックを必要とする目)
=緑内障になりやすい(リスクが高い)目 となっています。

また眼圧が低めに出てしまうため、緑内障のスクリーニング検査(健康診断の眼圧検査)をすり抜けてしまうことがあります。

緑内障は目の奥「網膜」「視神経」の病気、
レーシック(LASIK, Laser in-situ keratomileusis)は、目の前の方「角膜」だけの治療です。

・レーシック手術をしたこと、と
・緑内障になること
に、直接の関係はありません。

近視が強い「強度近視」のかたは、40代以降に緑内障を発症するリスクが比較的高くなっています。

レーシックの手術がおこなわれる「近視」「強度近視」は、もともと合併症を発症するリスクが高い目です。

レーシック手術中には、suction ringと呼ばれる器具による吸引で一時的に眼圧を上げます。
急激に上がった眼圧がきっかけで緑内障を発症する、と記載している文献はないようです。

レーシックで角膜を手術してピントが後ろに合うようになったため、みえる状態となりました。
近視の戻りがあるのは、薄くなった角膜がまた厚みを増した影響からです。


でも眼軸は伸びたまま
=強度近視に伴うリスクは残ったまま
です。

レーシックが必要となる目
=近視が強い
=眼軸が長い
=緑内障のリスクが高い

レーシックをしたあと、40代になる
=さらにリスクが高くなってきます。

目次

レーシック後の緑内障:「眼圧が低めに出てしまう」問題点とは

レーシック後の目では、”正確な” 眼圧がわからない

レーシック後は角膜が薄くなっているため、眼圧が正確に測れない

問題となるのは
レーシック後は、緑内障(疑い)が検出されないことがある
ことです。

レーシック後の眼は、眼圧の値は低く出ます。
角膜が薄くなっているためです。
実際は高い眼圧が、低い眼圧値になってしまっていることがあります1

健康診断でおこなっている、緑内障の“スクリーニング検査”をすりぬけてしまっているかもしれません。

眼圧を測定する方法とは

眼圧の測定方法は、主に2つあります。

目に空気をあてる方法(Non-contact Tonometry, NCT)

検査室でおこないます。

ゴールドマンアプラネーショントノメーター(Goldmann Applanation Tonometry, GAT)

診察室でおこないます。

2つの方法で測った眼圧の値には、相違があることがわかっています2

持続的に眼圧をモニターする方法もあります。
現在は実用段階ではありません。

角膜の厚みに依存する「眼圧」の値:緑内障 “疑い”を判別するためには

眼圧測定方法は、どちらも角膜の厚みに依存します。
・角膜が厚い:眼圧の値が高めに出る。
・角膜が薄い:眼圧の値が低めに出る。

緑内障のスクリーニング検査(健康診断)は主に2つ:

  • 眼圧
  • 眼底写真

このうち、眼圧が低く出てくるので
緑内障(疑い)が見逃されてしまっている可能性があります。
眼底写真の結果から、「視神経乳頭陥凹拡大」を指摘されることがあります。

進んでいた近視によって、目の長さ(眼軸長)が長くなっています。

眼軸の長さ


目の前の方「角膜」を扱うレーシック手術を行うことで、裸眼視力が改善します。
そして生活の質が上がることは、素晴らしいことです。
でも眼軸が長い状態は、改善しているわけではありません。

角膜を手術して、ピントが後ろに合うようになった みえる
眼軸は伸びたまま 強度近視のリスクは残ったまま

の状態となっています。

(眼科医を含め 眼科で働くひとは、レーシック・ICL手術を受けずメガネ・コンタクトの方がほとんどのようです)

レーシック後の目:気をつけること

  • レーシックを受けていて、
  • 40歳を越えたかた は、

自分に緑内障の心配があるかどうか
を、判定しておくことが大事です。

レーシック手術後の方は、眼圧が実際の値より低めに出ることがあります。
眼圧が高くなくても(健康診断で高眼圧を指摘されていなくても)、緑内障が隠れている可能性があります。

緑内障疑いとなる所見は、眼底三次元画像解析(Optical Coherence Tomography, OCT)で判定されます。

OCT 緑内障

現代の眼科では画像解析が発達して、OCTは数秒で終わる検査となりました。

でも、過剰に心配されませんように。。

参考文献

  1. Fournier, A.V., Podtetenev, M., Lemire, J., Thompson, P., Duchesne, R., Perreault, C., Chehade, N., Blondeau, P., 1998. Intraocular pressure change measured by Goldmann tonometry after laser in situ keratomileusis. J Cataract Refract Surg 24, 905–910. https://doi.org/10.1016/s0886-3350(98)80041-2
  2. Wang, P., Song, Y., Lin, F., Wang, Z., Gao, X., Cheng, W., Chen, M., Peng, Y., Liu, Y., Zhang, X., Chen, S., 2022. Comparison of Non-contact Tonometry and Goldmann Applanation Tonometry Measurements in Non-pathologic High Myopia. Frontiers in Medicine 9.
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