「結膜炎」と言われたら、
・学校・保育園・幼稚園をお休みにしないと
・プールに行けるのか
・習い事はお休みしないと
・保育園の陰性証明書は
一瞬で頭によぎってしまうかもしれません。
「結膜」とは、
まぶたの裏〜白目までつながる透明な膜のことをさします。
血管もリンパ管も多い組織です1。
「結膜」は、あらゆるものに反応するという特徴があります。
外から入ってきたものに対して反応すること:「炎症」
結膜が炎症を起こすことの総称が、結膜炎と呼ばれます。
(=「結膜炎」は、まぶたの裏と白目に起こる炎症 全部のことをさす 広い意味の言葉)
あらゆるものが目の表面に入ってきて、炎症を起こす原因となります。
・ばい菌が入った?→ ばい菌はもともと身体中たくさんいます
(表皮ブドウ球菌・黄色ブドウ球菌などの”常在菌”)
・かぜ(感冒)に伴って、肺炎球菌が結膜炎の原因となることもあります
・花粉
・黄砂
・PM2.5
・ハウスダスト
・季節的なもの?
どれも、結膜炎の原因になります。
ほとんどの結膜炎は、ひとにうつらない結膜炎です。
「ものもらい」とも、別です。
うつる結膜炎・はやり目とは?
多くは、ウイルス性の結膜炎です。
アデノウイルスが結膜に侵入し、炎症を引き起こします。
炎症がおさまった後に、黒目に濁りを残してしまうこともあります。
結膜炎:「うつる」か「うつらない」の判断基準
今回の記事は、日常診療での一般的なお話に限定しています。
うつる結膜炎:見た目・症状は?
結膜が炎症を起こすと、血管が拡張します。
白目は、見た目として明らかになります:「充血」
うつる結膜炎の原因:多くは「アデノウイルス」が引き起こす結膜炎
ウイルス性の結膜炎のほとんどは、アデノウイルスによって引き起こされます:「流行性角結膜炎」
流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルス8型, 19型, 37型, 53型, 54型, 56型 が原因になるとされています。
耳前のリンパ節が腫れる・痛みが出ることがあります。
その他に、
・単純ヘルペス
・水疱帯状疱疹ウイルス
・新型コロナウイルス(COVID-19)
も、ウイルス性結膜炎を引き起こすことがあります。
いずれも、とてもうつりやすい結膜炎です。
注意が必要となります。
「流行性角結膜炎」の症状
・充血
・涙が出る
・ざらざらした感覚
・かゆみ、不快感、熱感
・めやに 等
うつる結膜炎・はやり目:
多くの場合、うつらない結膜炎と症状で区別するのが困難です。
うつる結膜炎:どうやってうつるか
もし何かを触って、そこにウイルスがいたとする
→その手で自分の目を触る
→24-72時間後、ウイルス性の結膜炎を発症
・本、雑誌
・おもちゃ
・タオル
・コンタクトレンズ
・コンタクトレンズケース
など、感染源になってしまうことがあります。
結膜炎がうつるかうつらないかの判断:眼科でおこなうこと
初めに、
「見た目」で判断されます。
細隙灯顕微鏡を使った診察です。
写真:
https://eyewiki.aao.org/Epidemic_Keratoconjunctivitis
肉眼でも、以下をある程度みることができます。
・腫れがひどくないか
・下眼瞼の濾胞(ぶつぶつ)があるかどうか
・白目(球結膜)の充血があるかどうか
もし流行性角結膜炎が疑われた場合には、
検査をおこなうことがあります。
アデノウイルスの抗原を検出するキットです。
今は、クイックチェイサーAdenoを使っています。
細い紙に染み込ませて涙を採取、検査をおこないます。
採取時の痛みがほとんどありません。
はっきりと2本線が出た場合、間違いなく陽性(強陽性)。
うっすらと出た場合も、陽性。
陽性なら、迷わず
「流行性角結膜炎」の判断となります。
(EKC: Epidemic Keratoconjunctivitis)
判断が不安定になるのは、
検査が陰性であった場合です。
陰性が確定したことにはなりません。
偽陰性の可能性があり、
「疑わしきは・・」
の判断で、気をつけて生活することをお話されることになります(後述)。
ウイルスに効く目薬がありません。
2週間(14日間)程度炎症が続いた後、
はやり目(流行性角結膜炎)の症状は自然に軽快してきます。
炎症を抑える目薬(ステロイド点眼)を処方されることが一般的です。
結膜炎:診断的治療
うつる結膜炎か、うつらない結膜炎か?
もう一つ判断する方法があります。
目薬が効いたか、効かなかったか で判断します。
「診断的治療」という言葉があります。
- 抗生剤
- ステロイド 等 の点眼薬
目薬で炎症がおさまってしまえば、
はやり目(流行性角結膜炎)ではなかった
という判断となります。
流行性角結膜炎ではなかった際に、示唆される結膜炎の原因:
・アレルギー性結膜炎
・細菌性結膜炎
・化学物質による結膜炎
等の、うつらない結膜炎
ウイルスと比べて、
他の病原体・アレルゲンは、大きさが違います。
ウイルス性結膜炎とは違う、それぞれの治療方針となります。
ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎):うつさないために気をつけること
はやり目(流行性角結膜炎):気をつけること
- 目をさわらないようにする
- 毎日タオルを交換する
- 洗濯物は別にする
- ひんぱんに手を洗う
- 使った化粧品は捨てる
- 持ちものを共有しない
結膜炎:治ったあとコンタクトはいつから使える?
流行性角結膜炎に罹患したあと、黒目(角膜)の濁りが出ることがあります。
ウイルスによる炎症が続いていることが考えられます。
流行性角結膜炎と判断されていた場合、治ったあとの角膜の状態が重要です。
角膜に濁りがないことを診察で確認されてから、コンタクト装用を再開されるのが良いと思われます。
参考文献
- Nakao, S., Hafezi-Moghadam, A., Ishibashi, T., 2012. Lymphatics and Lymphangiogenesis in the Eye. Journal of Ophthalmology 2012, e783163. https://doi.org/10.1155/2012/783163