加齢黄斑変性(AMD):診療ガイドライン改定・クリニックでの対応

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration, AMD)の診療は、2024年の日本眼科学会による診療ガイドライン改訂により大きな転換期となりました。

年齢にとらわれない診断の重要性と、パキコロイドという新しい疾患概念の確立です。

これにより、40代という比較的若い年齢での発症例も視野に入れた診療が求められるようになりました。

新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(日本眼科学会雑誌 128巻 9号)1 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/nvAMD.pdf

加齢黄斑変性(AMD):診療ガイドライン改定・クリニックでの対応

目次

AMDの新しい理解と早期発見の重要性

従来、AMDは高齢者特有の疾患として捉えられてきました。

現在では年齢に関わらず発症する可能性のある疾患として認識されています。特にアジア人に多いパキコロイドという病態が、AMDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。

パキコロイドとは、脈絡膜(網膜の裏側にある血管の層)の血管が拡張し、その機能に異常をきたした状態を指します。

最新の研究では、パキコロイド新生血管症(PNV)がAMDの新しいサブタイプとして認識されており、日本人患者の約26%がこのカテゴリーに分類される可能性があることが示されています2

網膜・黄斑部異常の心配があるかどうか:
OCTとOCTA, 双方の画像診断装置を用いることで、このような変化を早期に発見することができます。

医師ひとりの眼科でできる診断と管理

OCTとOCTA(OCT血管撮影)を活用することで、AMDの早期発見と継続的な管理を行うことができます。

特に重要なのは、以下の3つのポイントです。

第一は、定期的な画像検査による詳細な観察です。

OCTでは網膜の断層構造を観察し、ドルーゼンと呼ばれる沈着物や網膜色素上皮の変化を詳細に評価できます。OCTAでは血管の状態を造影剤なしで観察でき、特にパキコロイドの特徴である脈絡膜血管の拡張を確認することができます。

第二は、生活習慣の改善についてお話をすることです。

加齢黄斑変性の発症と進行には、喫煙や食生活が大きく関係することが分かっています。特に喫煙は最も重要な環境因子であり、禁煙指導は予防的管理の中核を成します。
また、緑黄色野菜を中心とした食事も加齢黄斑変性の予防に重要な役割を果たします。

第三は、継続的な経過観察です。
AMDは徐々に進行する疾患であり、定期的な検査による変化の把握が極めて重要です。特に、新生血管(MNV)の出現を早期に発見することで、適切なタイミングでの専門医療機関への紹介が可能となります。

新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン 日眼会誌 128巻 9号

患者さんご自身でできる観察と予防

AMDの管理において、患者さんご自身による定期的な観察も重要な役割を果たします。

アムスラーグリッドと呼ばれる格子状の図を用いた自己チェックを、日に同じ時間に行ってみてください。
片目を隠してチェックすることが大事です。
格子の歪みや見えない部分の出現は、病状の変化を示す重要なサインとなります。

また、予防的な観点から、以下の生活習慣の改善を推奨しています:

抗酸化物質を多く含む緑黄色野菜を積極的に摂取すること。
ホウレンソウやブロッコリーなどの濃い緑色の野菜は、網膜の健康維持に重要な栄養素を含んでいます。

運動習慣の確立も重要です。適度な運動は血流を改善し、網膜の健康維持に寄与します。
ただし、激しい運動は避け、ウォーキングなどの軽い運動を継続的に行うことをお勧めしています。

専門医療機関との連携

AMDの管理において、クリニックと専門医療機関の緊密な連携は不可欠です。
特に新生血管型AMDと診断された場合には、抗VEGF薬による治療が必要となることがあります。
このような場合は九州大学病院・基幹病院と連携し、適切な治療が速やかに開始できる体制を整えています。

治療開始後も、定期的な経過観察やOCT検査による評価を行い、治療効果の確認や再発の早期発見に努めています。

患者さんにとって一番いい方向になるように:
当ホームページの資料も用いて、現在の目の状態・今後のことなどを ご説明します。

参考文献

  1. 日本眼科学会(2024)新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン.日眼会誌 128巻9号
  2. Kuranami, A., Maruko, I., Maruko, R., Nishihara, S., Iida, T., 2022. Age-related macular degeneration and new entity of pachychoroid neovasculopathy in Japanese patients. Investigative Ophthalmology & Visual Science 63, 335-F0166.

※ 個々の症例により適切な対応は異なります。
気になる症状がありましたら、いつでもご相談ください。

Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

たける眼科
takeru-eye.com
福岡市早良区「高取商店街」
西新駅/藤崎駅(福岡市地下鉄)

日本眼科学会 眼科専門医
医学博士(九州大学)

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