(未成年のかたは、定期検査も含め 必ず保護者と一緒の来院をお願いしています)
2019年春にオルソケラトロジー治療を開始しました。
たくさんのオルソケラトロジー処方を経験して、私たちも多くのことを学ぶことができています。
検査は視能訓練士が担当します。
オルソケラトロジー治療には、眼光学の相応の知識を必要とします。
患者さんそれぞれの背景を考慮しながら進めることは、もっと重要です。
オルソケラトロジーに年齢制限はありませんが、こどもさんに処方することがほとんどです。
その中で、こどものオルソケラトロジーで気をつけること について記載しました。
こどものオルソケラトロジー:気をつけていること
オルソケラトロジー:説明と理解を大切にしています
オルソケラトロジーご希望の方は、先に保険診療の受診をお願いしています。
(予約はしなくてもokです)
この数年で眼科学の常識が変わってきました。
近視の研究が世界中で進んできているためです。
九大の医局にいるときは、免疫学のことばかり考えてきましたが、
「眼光学」「こどもの近視」
のこと、開院前から世界中の知識を学んでみました。
(文献をみるのに、英語で検索したという意味です)
今までの常識が変わっていて、とても興味を持てる分野となりました。
診察でお話している内容は、以下にまとめました。
一般的な近視のお話と、希望があればオルソケラトロジーの概要をご説明しています。
こどものオルソケラトロジー:何歳からが多い?
8歳からはじめる子がとても多いです。
6歳からはじめられた子も数名、
「裸眼でスポーツをしたい」などの気持ちが強いと、うまくいくようです。
慎重に経過をみています。
角膜形状解析装置:画像のよみかた
オルソケラトロジーは、角膜上皮のみの厚みを変える治療です。
角膜形状解析装置(角膜トポグラフィー)で、角膜上皮の形を評価しています。
NIDEK社のOPD-scan IIIを使用します。
角膜の形は、赤→黄色→黄緑→緑→濃い緑 のグラデーションで表現します。
明るい色→ カーブがきつい
暗い色→ カーブがフラット
・治療前の状態のカラーマップ
・治療後の角膜上皮の変化:毎回の診察で説明
目のことを理解するのはとても難しいです、
お聞きになりたいことは全部聞いてください。
当ホームページの記載も、理解の助けにしていただいています。
オルソケラトロジー治療レンズ:シード社ブレスオーコレクトを選択している理由
医師ひとりのクリニックで、安全性を最も重視しました。
国産・割れにくい素材 であること
に加えて、
角膜を専門とする各地の知己の先生たちが、当該レンズを選択されていることも大きな理由となりました。
目に装着しているときに割れる心配をする必要がない点、がメリットと考えます。
こどものオルソケラトロジー:適合検査に進むかどうか
こどもにとって、コンタクトレンズを入れることはとても不安で怖いと思います。
「裸眼でみえたい」気持ちがまさったときに、コンタクトレンズを入れることができるようになります。
「オルソケラトロジーをしたい」こどもの気持ちが強いかどうかを、診察で十分に確認するようにしています。
「オルソケラトロジーをさせたい」お母さん・お父さんの気持ちが強いと、うまくいかないことが多いようです。
ひとつ試していることは、フルオレセイン試験紙の角膜上皮染色です。
ドライアイ・角膜上皮びらんなど、眼科では日常的に行う手技です。
痛くないですが、細い紙が目に近づくのでこどもさんが怖がることもあります。
角膜上皮染色が難しかったら、オルソケラトロジーの適合検査に進むのはやめておきましょうとお話します。
コンタクトレンズを入れるのがいやだったら、こどもはどうしても頑張れないです。
メガネをかけたくない(かけさせたくない)ので、オルソケラトロジーをしたい
メガネの度数が弱めになっていたら、あまり見えない状態に慣れているかもしれません。
先にぴったり合ったメガネを作って、
「わー見える😀」
の体験をすることが大事と思っています。
度をぴったり合わせたメガネをかけたら目が悪くなる?
→昔の常識だったようです。
完全矯正にできるようにします。
でもメガネをかけてきつくないか?
こどもが一番いいと思えるメガネの度数を選択します。
まず正確なメガネを作る検査をして、こどもに買ってあげてください。
「メガネを買ってあげること」は大人しかできないことでしょうか。
メガネをかけるかどうかを決めるのは、こどもの判断に任せるのが良いと思います。
「わー見える😀」と思えたら、メガネをかけたくなる。
「裸眼で見える方法があるんだよー」→「それしたい!」
オルソケラトロジーを本当にしたいのかどうか、こどもさんとゆっくりお話していただければと思います。
指定された日・定期検査に来れるかたのみ、治療の対象となります
(未成年のかたは、必ず保護者と一緒の来院をお願いしています)
角膜感染症の発生に、とても気をつけています。
洗浄液は、ポビドンヨードの含有しているもののみを指定として使用します。
オフテクス社クリアデュー(オルソケラトロジー専用)です。
レンズの汚れ・沈着物の成分を詳しく調べた研究があります。
オルソケラトロジー治療用レンズの汚れに、微生物が付着し角膜感染症の原因となることがわかりました。
Hiraoka, T., Yoshimitsu, M., Santodomingo-Rubido, J., Kondo, H., Oshika, T., 2021. A novel quantitative evaluation of deposits adhered to worn orthokeratology contact lenses. Jpn J Ophthalmol 65, 855–863. https://doi.org/10.1007/s10384-021-00873-1
続報は、
オルソケラトロジーの汚れ・沈着物の成分を実験室で再現したものを作ると、角膜感染症を起こす微生物が付着しやすくなっていることがわかったという研究です。
以上を踏まえて、オルソケラトロジー治療用レンズの状態はとても大事と考えます。
定期検査の際に、角膜の傷の有無・角膜上皮炎症の有無をみます。
同時に、オルソケラトロジー治療用レンズの汚れの有無を顕微鏡でチェックします。
必要あれば、強力な洗浄剤の使用するお話をします。