はやり目のあとの角膜の濁り:治療を長く続けるときに気をつけること

はやり目(流行性角結膜炎)にかかる方が今年はとても多く、当院では、角膜の濁りが長引く方が多いと感じています。

お子さんがはやり目にかかり、看病していた親御さんがうつり、その親御さんの黒目(角膜)に細かい濁りがたくさん出て、なかなか引かない。
知り合いの眼科医とも「濁りが長引く患者さんが多い」という話題になっています。

この記事では、まず「今年は本当に多いのか」を公的なデータで確かめます。
そのうえで、角膜の濁りの正体と治療、そして治療中に注意する眼圧の話を、順番に整理します。

Table of Contents

この記事の要点

今年のはやり目は、全国的に多いわけではありません。
福岡県だけが突出して多く、8月下旬からは全国で最も多い県になっていることがわかりました1,2

全国の検出報告では、2023年ごろから増加している54型のアデノウイルスが多くを占めています。ただし、今回の福岡県の流行を担う型そのものは確認できておらず、54型の特徴が関係している可能性があります3,4
「新しい変異ウイルス」の報告は、2026年9月の時点で確認できませんでした。
54型は、もともと角膜に濁り(多発性角膜上皮下浸潤)を残しやすいことが知られている型です4,5

濁りの治療にはステロイド点眼を使いますが、主な目的は、見え方に影響する炎症を抑えることです。
弱いステロイドから始め、効き目と眼圧を見ながら調節するのが、一般的な考え方です6
治療が長引くときほど、眼圧を定期的に測ることが大切になります。

今年のはやり目は、どのくらい多いのか

はやり目(流行性角結膜炎)は、全国の約690か所の眼科が毎週、患者さんの数を報告しています1
「1つの眼科あたり、1週間に何人」という数字(定点当たり報告数)で、流行の大きさを比べます。

2026年第37週(9月7日〜13日)の福岡県は4.81人でした2
前週(第36週)の全国は0.65人で、福岡県はその約7倍です2
昨年の同じ週は1.23人でしたので、昨年の3〜4倍でもあります2

都道府県別で見ると、第36週の福岡県は4.15人で全国1位。2位の福島県(2.08人)を大きく引き離しています8
全国の眼科定点から報告された448例のうち、108例(約24%)が福岡県の患者さんでした8

福岡市に限ると、第34〜37週は2〜3人で推移しています9
市の「警報」の基準(8人)には届いていませんが、2022〜2025年の同じ時期(おおむね0〜1.5人)と比べると、はっきり多い状態です9,10
県内では、久留米市や筑後・筑豊地域の保健所管内で警報レベル(8人以上)を超えています2

一方、全国ではここまでの報告数を見ると、2026年は昨年より少ない状況です。
コロナ禍前の2016〜2019年と比べても、少なめの水準です11
つまり「今年はやり目が多い」という実感は、全国の話ではなく、福岡県の話だと言えます。

原因のウイルスは変わったのか

はやり目を起こすアデノウイルスには、8型、37型、53型、54型、56型、64型など、いくつかの型があります1
国の病原体サーベイランスによると、2025年に検出されたはやり目のウイルスは54型が最も多く、116件でした3
2024年(45件)から急に増えています3。今年の福岡県の流行を担う型そのものは確認されていませんが、全国的な傾向から54型が関与している可能性があります。
日本眼科学会のガイドライン(2025年版)も、54型について「2023年に再び検出が増加し、感染拡大に留意が必要な状況」と書いています4

では、ウイルスが「変異」したのでしょうか。
2026年9月の時点で、国内外の公的な報告を調べた限り、はやり目の新しい型や変異株の報告は確認できませんでした。
流行の主体は、2009年に日本で初めて報告された、すでに知られている54型です12

なぜ今年、福岡で多いのか。
その理由は、公的な資料には書かれていません。
はっきりした理由は、現時点では分かっていない、というのが正直なところです。

54型の特徴
54型のはやり目は、最初の結膜炎は中くらいの強さで、偽膜(まぶたの裏にできる白い膜)も少なめです。
その代わり、角膜の濁り(多発性角膜上皮下浸潤)が70〜80%と高い頻度で起こり、治ったあとも濁りが残る人が多いことが知られています4
福岡県内の眼科での2018年の報告でも、評価できた31例中24例(約77%)に角膜の濁りが見られました5
「濁りが多い、長引く」という今年の印象は、新しい変異株というより、54型がもともと持つ性質で説明できる可能性があります。

角膜の濁り(MSI)とは何か

眼球の断面図。角膜・虹彩・水晶体・網膜など眼球各部位の名称を示すシェーマー。角膜の位置を赤枠で強調
角膜は、黒目の表面を覆う透明な膜です(画像提供:参天製薬株式会社)

はやり目の発症から1週間ほどたつと、黒目(角膜)に白い小さな点が、たくさん散らばって出てくることがあります4
これが多発性角膜上皮下浸潤(multiple subepithelial infiltrates, MSI)です。
「浸潤」というのは、炎症を起こす細胞が組織の中に入り込んでいる状態を指します。
角膜の表面のすぐ下、実質と呼ばれる層の一番浅いところに、白血球が集まっている状態です。

大切なのは、MSIは「ウイルスが増えている」わけではない、という点です。
角膜に残ったウイルスのかけら(抗原)に対して、体の免疫が反応して起こる炎症です4
動物実験では、増える力のない空っぽのウイルス粒子だけでも、角膜に同じような炎症が起こることが確かめられています13
つまりMSIは、はやり目という感染症の「あと」に起こる、免疫の反応です。

角膜の断面図。上皮・ボーマン膜・実質・デスメ膜・内皮の層構造と、ボーマン膜直下の実質表層にできる多発性角膜上皮下浸潤(MSI)の位置を示す
MSI(多発性角膜上皮下浸潤)は、角膜の表層(ボーマン膜のすぐ下)にできる小さな濁りで、ウイルスの増殖ではなく免疫反応によるものです

濁りは自然に消えるのか

多くの場合、数週間から数か月かけて薄くなっていきます。
ただ、長引く方も一定数いらっしゃいます。

アメリカの大学病院の54人のデータでは、約4人に1人(25.9%)が45日を超えて症状のある濁りが続きました14
2026年に発表されたドイツの実臨床データ(146眼、治療を受けた患者を含む観察研究)では、角膜の濁りが残っていた割合は、6週間後で45%、6か月後で39%、1年後で9.5%でした15
古い研究ですが、8型のはやり目72人を平均2.3年追った報告では、47%に濁りが残っていました16

濁りが残ると、視力そのものはあまり落ちなくても、「まぶしい」「にじむ」「コントラストが落ちる」と感じることがあります。
角膜の表面がわずかに不規則になる(不正乱視)ためで、検査でもコントラスト感度の低下や収差の増加が確認されています17

治療の目的と、ステロイド点眼の使い分け

MSIの治療には、ステロイドの点眼薬を使います。
ここで最初に押さえておきたいのは、治療の「目的」です。

ステロイド点眼は、濁りを溶かして消す薬ではありません。
見え方に影響している炎症を抑え、まぶしさや視力低下をやわらげるための薬です6

ですから、濁りが少しあっても見え方に困っていなければ、点眼なしで経過を見る選択もあります。
逆に、視力が落ちている、まぶしくて仕事や運転に支障がある、という場合には点眼を使います。

ステロイド点眼には、効き目の強さが違う何種類かがあります。
弱いもの(フルオロメトロンなど)と、強いもの(ベタメタゾン、デキサメタゾンなど)です。

当院では、個々の状態に応じてまず弱いステロイドから始め、効果が足りなければ強いものに切り替える、という順序で検討することが多いです6
弱いステロイドは、目の奥に入りにくい分、眼圧が上がったり白内障が進んだりする副作用が少ないとされています6
実際、弱いステロイド(0.1%フルオロメトロン)だけでも、6か月の臨床試験で70%の症例で濁りが消えたという報告があります18

ただし、この「弱いものから」という開始順序そのものを直接検証した比較試験は限られています。ロテプレドノールとデキサメタゾンを比較した研究はありますが、これは製剤ごとの効果比較であり、「弱いものから始めて必要に応じて強めていく」という順序自体を検証したものではありません。
効き目が足りないときに強いものへ、あるいは最初から強いものを短期間、という判断は、濁りの程度や視力への影響、年齢、眼圧の状況を見て、眼科医が個別に行います。

治療中に眼圧が上がることがあります

ステロイド点眼の副作用で、いちばん注意したいのが眼圧の上昇です。
眼圧が上がったまま放置すると、緑内障と同じように視神経が傷むことがあります。

強いステロイド点眼を4〜6週間使うと、およそ3人に1人で眼圧が上がり、20人に1人では大きく上がる(15 mmHg以上)ことが、古典的な研究で示されています19,20
上がりやすいのは、緑内障の方やそのご家族、強い近視の方、糖尿病の方、そして子どもです21

子どもでは反応が早くて強いことが知られています。
10歳未満のお子さんに強いステロイド(0.1%デキサメタゾン)を点眼した試験では、半数以上で眼圧が大きく上がり、多くは1週間ほどでピークになりました22
同じお子さんのもう片方の目に弱いステロイド(0.1%フルオロメトロン)を使った場合、大きく上がったのは16人中1人でした22
大人でも、弱いステロイドのほうが眼圧は上がりにくいことが、日本の研究で確かめられています23

眼圧が上がった場合は、ステロイドを減らす・弱いものに変える・中止する、といった対応をします。
MSIの治療がまだ必要なときは、眼圧を上げない別の点眼(免疫抑制薬の点眼)に切り替える方法があります4。国内ではMSIへの使用は適応外であり、使うかどうかは診察のうえで個別に判断します。
眼圧を下げる点眼薬を一時的に併用することもあります。

多くの場合、ステロイドをやめれば眼圧は数週間で元に戻ります24
ただ、長い期間使い続けたあとでは戻りにくくなることがあるため、定期的な眼圧の測定が欠かせません24

治療が長引くとき

濁りがなかなか引かず、点眼を何か月も続ける方もいらっしゃいます。
ここで大切なのは「漫然と、ステロイド点眼を続けない」ことです。

ステロイド点眼を長く続けるほど、眼圧が元に戻りにくくなったり、白内障が進行したりすることがあります24
治療終了後などに濁りが再び濃くなる(再燃する)方も報告されており、特定の試験では15〜16%ほどとされています18,25

そのため、点眼は「減らしながら」やめていきます(テーパリング)。
見え方が落ち着いたら、濁りが少し残っていても回数を減らし始めます。
減らして再燃したら、一段階戻して様子を見ます。
減らすたびに再燃する場合や、眼圧が上がった場合には、免疫抑制薬の点眼に切り替えることが日本眼科学会のガイドラインでも提案されています4

治療を続けている間は、2〜4週に1回程度、眼圧と濁りの状態を確認します。
自己判断で点眼をやめたり、逆に手元に残った点眼薬を長く使い続けたりしないよう、お願いしています。

たける眼科(福岡市早良区高取商店街)での対応

当院では、はやり目の患者さんには、発症から1〜2週間後を目安に一度再診していただいています。
結膜炎の症状(充血・目やになど)が落ち着いてから、角膜に濁りが出ていないかを確認することが大切です4

濁りが出た場合は、見え方への影響を確認したうえで、弱いステロイド点眼から始めることが多いです。
点眼を始める前と、開始から2週間ほどで眼圧を測ります。
お子さんの場合は、もう少し早めに測ります。
その後は、点眼を続けている間、2〜4週に1回を目安に眼圧を測定しています。
効き目が足りないとき、眼圧が上がったとき、減らすと再燃するときは、点眼の種類や強さを変えて対応します。

また、はやり目は学校保健安全法上の「第三種感染症」に定められています。そのため、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となります26
登園・登校・出勤の目安についても、診察時にご案内しています。

患者さんへお伝えしたいこと

はやり目のあとの角膜の濁りは、感染ではなく、免疫の反応です。ただし、濁りの有無だけで周囲へうつす可能性がなくなったと判断することはできません。
多くは時間とともに薄くなりますが、長引く方も一定数いらっしゃいます。

ステロイド点眼は、見え方に影響する炎症を抑えるための薬であり、眼圧を見ながら、減らしながら使う薬です。
「点眼薬をもらったけれど、いつまで使えばよいのか分からない」「まぶしさが続いている」「点眼をやめたら濁りが戻った気がする」といったことがあれば、診察時に何でもお尋ねください。

もう少し詳しく:眼科医向けの整理(2026年9月)

ここから先は、より詳しい医学的根拠の整理です。専門的な内容のため、患者さんは読み飛ばしていただいて構いません。
本記事で紹介する治療方針は、文献や学会ガイドラインに基づく一般的な情報です。実際の治療内容は診察のうえで個別に判断しますので、費用や適応を含め、詳しくは診察時にご相談ください。

1. 疫学:福岡県の数字と全国の数字

全国の眼科定点は、実測ベースで約680〜690か所です(第35週:573件/0.84=約682)8
JIHSの解説文は「約600か所」のままですが、2025年第15週に定点数が変更されています11
2026年の全国は第33週まで定点当たり0.3〜0.5で、2025年(0.8〜0.9)より低く、コロナ禍前(2016〜2020年、0.6〜1.0)も下回ります11

福岡県の第34〜37週の定点当たり報告数(4.23/4.88/4.15/4.81)は、県の週報上、2025年のピーク(第42週、2.00)の2倍を超えています2
県内の分布は筑後・筑豊主導で、福岡市は2〜3です2,9
福岡市は2024年第52週で区単位の公表を終えているため、早良区のデータは追えません9

2. ウイルス学:54型の再興と「変異」の有無

JIHS病原体検出情報のEKC由来分離株では、54型が2023年45件、2024年45件、2025年116件、2026年(第38週まで)34件で、2025年以降は最多の型です3
福岡県保健環境研究所の検出情報では、2025年4月〜2026年7月にEKC検体の搬入はなく、型別データは県内には存在しません。
咽頭結膜熱検体から2026年5月と7月に54型が福岡ブロックで検出されており、県内での54型の循環は間接的に確認できます。
新型・組換え型の報告は、IASR、地方衛生研究所報告、PubMed、Eurosurveillance、EID、ProMEDのいずれでも2025〜2026年に確認できませんでした。

54型は8型と進化的に近縁の組換え型で、2009年に日本から報告され、海外報告はほとんどありません12,33

ヒトアデノウイルスの主要カプシド遺伝子(ペントン塩基・ヘキソン・ファイバー)の組み合わせパターン別の遺伝子型数を示す棒グラフ。非組換え型(P1H1F1)が51種類の遺伝子型で最多、以下複数の組換え型パターンが続く
上のグラフ(Figure 6)は、主要カプシド遺伝子の組み合わせパターン別に遺伝子型の数を集計したものです。54型はペントン塩基・ヘキソンは独自でも、ファイバー遺伝子は8型に由来する組換え型(P54H54F8、Table 2)です。アデノウイルスにはこのような複数の親株に由来する組換え型が一定数存在します(出典:Dadkhah et al. Viruses 2026;18(2):251, Figure 6CC BY 4.0、改変なし)

細胞培養での増殖が遅く、病期の遷延に関与しうるという報告もあります27
南九州の250例の検討では、8型・37型・54型は53型・56型より角膜合併症が有意に多く、罹病期間も長いことが示されています28
「MSIが多く、長引く」という状況は、54型の既知の性質と、今回の流行規模の組み合わせで説明できます。

3. ステロイドの選択:エビデンスの実際

弱いステロイドと強いステロイドを直接比較したRCTは見当たりません。
判断材料になるのは、次の間接データです。

研究デザイン比較結果
Gouider 202118前向き二重盲検RCT、72眼0.1%フルオロメトロン vs 0.5%シクロスポリン6か月でMSI消失70% vs 47%(p=0.068)。再燃16% vs 9%。眼圧上昇なし
Bhargava 201925二重盲検RCT、各45例0.03%タクロリムス軟膏 vs 0.05%デキサメタゾン軟膏、6か月成功率92.5% vs 85%。デキサメタゾン群の15.6%で眼圧上昇(平均1.24か月)。再燃7.5% vs 15%
Koçluk 201729両眼比較ロテプレドノール vs デキサメタゾン改善速度に有意差なし。両群とも再燃あり
Liu P 20237メタ解析(5 RCT+1コホート、286例)急性期ステロイドの期間7日間ではMSI発生に差なし、21〜28日間で減少。慢性期は免疫抑制薬と比べ6か月時の消失率に差なく、眼圧は有意に上昇

出典:各原著(PubMed確認済み)。試験ごとに対象・薬剤・期間が異なるため、治療法どうしの単純比較はできません。

AAO PPP(2023年承認版)の記述は「視力低下・羞明があれば最小有効量のステロイドを考慮」「最小有効量まで緩徐に漸減」「フルオロメトロンやロテプレドノールなど眼内移行の少ない薬剤は眼圧上昇・白内障が少ない可能性」です6
日本眼科学会ガイドライン2025は、MSIにステロイド点眼が有用としつつ、製剤・濃度・期間・漸減法・眼圧測定間隔を規定していません4

したがって、「0.1%フルオロメトロンから開始し、効果が不十分なら0.1%ベタメタゾンへ切り替える」という段階的治療は、AAOの見解と日本の臨床現場の実情に沿った、合理的な専門家の提案といえます。ただし、RCTで優越性が示されているわけではありません。

急性期については別で、ウサギモデルでは0.1%フルオロメトロンのような低力価ステロイドでも3日間の使用でウイルス排出が延長しました30
ガイドライン2025のCQ2は、急性期のステロイド点眼を「病因診断確定下で、重症例か、ヨード系点眼併用の条件付きで弱く推奨」としています4
EKCとして届け出られた症例の4.3%に単純ヘルペスウイルス結膜炎が含まれていた、という記載も同ガイドラインにあり、急性期にステロイドを安易に開始しないよう注意を促しています4

4. ステロイド性眼圧上昇:頻度・薬剤差・可逆性

Armaly(1965)とBecker(1965)の古典的データでは、0.1%デキサメタゾンまたはベタメタゾンを4〜6週使用した健常者のうち、高反応(15 mmHg超の上昇)約5%、中等度反応(6〜15 mmHg)約30%、非反応約65%です19,20
リスク因子はPOAG患者とその第一度近親者、強度近視、糖尿病、膠原病、小児、過去のステロイドレスポンスです21

小児:10歳未満で0.1%デキサメタゾンを1日6回4週使用した両眼比較RCTでは、高反応56%、中等度反応37.5%、高反応者の89%が8日以内にピーク。僚眼の0.1%フルオロメトロンでは高反応1/16(6%)でした22

薬剤差(日本):ベタメタゾン高反応者12例で、眼圧上昇力は0.1%ベタメタゾン>0.05%>テトラヒドロトリアムシノロン1.25%>0.02%ベタメタゾン>0.1%フルオロメトロン。0.05%以下のフルオロメトロンでは有意な上昇なし23

長期:DMEK後11か月のRCTで、1%プレドニゾロン酢酸エステル群22% vs 0.1%フルオロメトロン群6%で眼圧上昇がみられました(p=0.0005)31

可逆性:中止後、通常1〜4週で回復。ある症例集積では、使用8週未満で全例が正常化した一方、数年間使用した場合は戻らず、治療を要した報告があります32。薬物で下がらず手術を要するとの報告もあります(約1〜5%)24

対応の整理(総説の記述に基づく専門家の意見)24

  1. ステロイドの減量・中止、または低力価薬(フルオロメトロン、ロテプレドノール)への変更。
  2. MSI治療の継続が必要なら免疫抑制薬点眼への切り替え(ガイドライン2025 CQ3:弱い推奨。国内ではシクロスポリン・タクロリムス点眼のMSIへの使用は適応外)4
  3. 眼圧下降薬は房水産生抑制薬(β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、α2作動薬)が第一選択。プロスタグランジン関連薬は炎症眼での使用を避ける意見が多い。
  4. 眼圧測定の目安:開始前、開始2週後(小児・POAG血縁者・既知の高反応者は1週後)、以後4〜6週ごと、中止後に1回。AAO PPPは「定期的な眼圧測定」を求めるが数値間隔は示していない6
角膜の濁り(MSI)に対する当院での対応の一例を示すフローチャート。発症から1〜2週間後を目安に再診・MSIを確認したうえで、見え方に影響があるかで分岐する。影響がなければ経過観察、影響があれば眼圧を測定してから弱いステロイド点眼を開始し、治療中は2〜4週ごとに眼圧・濁りを確認する(お子さんなどは早めに)。効果不十分・眼圧上昇・再燃それぞれの対応までの流れ
角膜の濁り(MSI)に対する当院での対応の一例です。見え方への影響で経過観察とステロイド開始を分け、弱いステロイド点眼から開始して、定期的な眼圧測定をしながら経過をみていきます

5. 治療の長期化と中止のタイミング

MSIの治療期間に上限を示した文献はありません。
ドイツの実臨床データでは1年後にも9.5%でMSIが残存し、初診時にステロイドを開始した群で慢性化がみられた割合が高かったとの報告がありますが、因果関係が証明されたわけではありません15

長期使用のリスクは、眼圧上昇の不可逆化24、後嚢下白内障(点眼での閾値は不明。年単位の使用で問題化しやすい)、感染症の誘発です。

中止の考え方は次のように整理できます(専門家意見)。

  • 目標は混濁の消失ではなく、視機能に影響する炎症の制御。矯正視力・自覚症状が改善したら、混濁が残っていても減量開始。
  • 減量は段階的に(1日4回→2回→1回→隔日)。再燃したら一段階戻す。
  • 減量のたびに再燃する「ステロイド依存」、または眼圧上昇があれば、免疫抑制薬点眼へ4
  • 0.1%フルオロメトロン1日1〜2回の少量維持で数か月見る方法は、日本の臨床現場でよく行われています(専門家意見)。
  • 中止後の再燃は15〜16%18,25。症状が戻れば早期再診を案内。

参考文献

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Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

たける眼科
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福岡市早良区「高取商店街」
西新駅/藤崎駅(福岡市地下鉄)

日本眼科学会 眼科専門医
医学博士(九州大学)

Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

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