春季カタルは、若い世代に多く見られる慢性的なアレルギー性の目の病気です。
特に、スポーツをしている中学生・高校生の男子に多く見られます。
サッカー、野球(甲子園を目指している選手など)、柔道などのスポーツをしている生徒さんによく発症します。
重症化したアレルギー性結膜炎(春季カタル)
春季カタル:特徴的な患者層と症状の特徴
春季カタルは慢性疾患で、60%以上のかたが年間を通じて再発・寛解を繰り返します。
20歳以下の患者では男性が女性より3.2倍多いとの記載があります1。
20歳を超えると、男女比は一緒になるようです。
春季カタルは、幸いなことに「治る」ことのほうが多い疾患です(予後の良い疾患)。
春季カタル:主な症状と特徴
強い炎症を起こしている「結膜」は、いつも角膜(くろめ)と接しています。
長い間の炎症を原因とする角膜障害を伴ってしまうと、視力低下の”後遺症”をきたしてしまうことがあります。
そのため、早いタイミングでの診断と適切な対処を必要とします。

春季カタルでは、
主に上まぶたの裏の「結膜」が、ひどく炎症をおこしてしまいます。
その結膜は「石垣状」になり、多くの分泌物を出します:「石垣状乳頭増殖」
強いかゆみ・痛み・異物感・羞明(まぶしさ)など、さまざまな症状を引き起こします。
春季カタル:合併症と注意点
春季カタルで最も注意が必要なのは、長期の炎症による角膜への影響です。
結膜が常に角膜と接触していることで:
- 角膜のびらん
- シールド潰瘍と呼ばれる状態の発生
- 治療が遅れた場合の視力低下のリスク
があります。
分泌物の多くを占める「サイトカイン」は、黒目(角膜)に障害を起こし、びらんをつくります。
液性免疫(アレルギー)に関わる「Th2サイトカイン」が影響を及ぼす角膜障害
春季カタルでは、角膜(くろめ)の状態をよく観察することが重要です。
Tリンパ球のうちの「Th2」の集団が悪さをして、炎症を悪化させています2。
結膜と接する角膜に影響を及ぼしてしまうことがあります。
「シールド潰瘍(Shield ulcer)」と呼ばれる状態です。
びらんをつくってしまうと、角膜が濁ることにより生涯の視力に影響を及ぼしてしまうことがあります。
春季カタル:治療
治療の基本は、目の組織の透明性を保ちながら炎症を抑えることです。

そのため、診断をつけたうえで如何に早い段階で炎症を抑えていけるかがとても重要です。
(そのため、しばらく眼科に通ってくださいねとお願いすることがあります)
治療の基本はステロイドで、全体の炎症を強く抑えることを図ります。
○ リンデロン点眼
○ フルオロメトロン点眼
○ ステロイド懸濁液(ケナコルト)瞼板下注射
強めの治療(回数・程度)から、炎症抑制を弱くしていきます3。
治療中は必ず眼圧をモニターします。
ステロイド治療をしている間に問題になってくるのが、ステロイド緑内障です。
小児や若年者は眼圧が上がる傾向が強く、治療にとても苦労することがあります。
2010年より保険適応となった、免疫抑制剤を使うことができます。
高分子であるため、全身への副作用は殆どありません。
○ 0.1%タクロリムス点眼薬(タリムス点眼液®)
○ 0.1%シクロスポリン点眼薬(パピロックミニ点眼液®)
免疫抑制剤を用いることによって、
アレルギーの炎症をつかさどるT細胞の機能を抑えます。
感染症に留意した上で、
T細胞(リンパ球)の免疫状態を考えながら、治療を進めます。
参考文献
1. Bonini, Stefano, Bonini, Sergio, Lambiase, A., Marchi, S., Pasqualetti, P., Zuccaro, O., Rama, P., Magrini, L., Juhas, T., Bucci, M.G., 2000. Vernal keratoconjunctivitis revisited. Ophthalmology 107, 1157–1163. https://doi.org/10.1016/S0161-6420(00)00092-0
2. Bonini, S., Coassin, M., Aronni, S., Lambiase, A., 2004. Vernal keratoconjunctivitis. Eye 18, 345–351. https://doi.org/10.1038/sj.eye.6700675
3. Kumar, S., 2009. Vernal keratoconjunctivitis: a major review. Acta Ophthalmologica 87, 133–147. https://doi.org/10.1111/j.1755-3768.2008.01347.x