「スマホの使いすぎで白内障になりますか?」という質問を受けるようになりました。
ネットのニュースやSNSなどで「スマホ白内障」という言葉を目にして、不安を感じる方が多くなったようです。
文献検索をしてみると、
スマートフォンの使用が直接的に白内障を引き起こすという科学的な証拠は、現時点では確認されていませんでした。
実際、スマートフォンは白内障の原因ではなく、研究では白内障の検出ツールとして活用の可能性が示されています(Askarian et al. 2021)1。
「スマホ白内障」は存在する? 若年性の白内障とは

デジタル機器による目への影響:
デジタル眼精疲労(Digital Eye Strain, DES)
“白内障かも” と思った症状の多くは、デジタルデバイスの使用による一時的な変化かもしれません。

デジタル眼精疲労(DES)の主な症状には、以下のようなものがあります2:
- 目の疲れ
- ドライアイ
- 一時的なぼやけ感
- 肩こり・頭痛
- 近視の進行(特に成長期のこども)
これらの症状の多くは、適切な使用習慣と休息により改善が期待できます。
必要があれば、眼科で精査のうえ点眼処方がおこなわれることもあります。
デジタル眼精疲労(Digital Eye Strain, DES):スマホ老眼と称されるものと近いです。

ブルーライトカットは、必要がありませんでした。
以下の見解となっています。
- デジタル眼精疲労はブルーライトで引き起こされるものではありません。
- 小児にブルーライトカット眼鏡の装用を推奨する根拠はなく、むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねません。

一方、白内障の症状は休息をとっても改善しない傾向があり、徐々に進行していくという特徴があります。
白内障の実際の原因

一般的に高齢者に多いと考えられている白内障ですが、若年層でも発症することがあります。
白内障は、眼の中の水晶体が濁り、光が正常に入らなくなることで起こります。
40歳未満での早期白内障(若年性の白内障)の主な原因として、以下のような要因が明らかになっています:
- 糖尿病や高血圧などの基礎疾患の管理が不十分な場合
- アトピー性皮膚炎などの慢性疾患
- ステロイド薬の長期使用
- 目への外傷や強い衝撃
- 副甲状腺機能亢進症・甲状腺機能亢進症などの代謝疾患
- 遺伝的な要因
- パイロットなど、長期的な紫外線曝露のある職業
- 電波や放射線への慢性的な曝露
先天性白内障の場合は、遺伝子の変異や、妊娠中の母体の感染症(麻疹、インフルエンザ、風疹など)が原因となることがあります。
白内障の一般的な症状

白内障による視界の変化には、以下のような特徴があります:
- かすみやぼやけを感じる
- まぶしさが増す
- 視界が黄色みを帯びる
- コントラストが低下する
- 夜間の視界が特に悪化する
これらの症状は通常、両目に現れますが、片目から始まることもあります。
白内障手術を検討する前に

白内障手術は、視機能を回復させる確立された治療法です。
でも後戻りができない治療法であるため、手術の判断には以下のような点を総合的に検討することが推奨されます:
- 現在の視力低下が日常生活にどの程度影響しているか
- 手術後の生活スタイルの変化
- 手術後は調節力を失うため、若年発症の白内障ではより慎重な判断が必要
- 手術後は違和感が続くこと
- 他の眼疾患(緑内障や糖尿病網膜症など)の有無
- 年齢や全身状態
手術の判断は、医師との十分な相談を通じて、患者さんの生活スタイルや不便さの程度を考慮しながら、最適なタイミングを決めることが重要です。
手術を急ぐ必要がない場合は、定期的な経過観察で進行を管理することも選択肢の一つです。

デジタル機器を安全に使用するために

目の健康を守るための基本的な対策をご紹介します:
使用時の基本ルール

- 20-20-20ルール:20分ごとに、20フィート(約6m)先を20秒見る
- 画面と目の距離を30-40cm確保
- 適切な画面の明るさとコントラストに調整

環境の整備

- 部屋の明るさを適切に保つ
- 画面の位置や角度の調整
- 定期的な休憩時間の確保
近くを見る時間が極端に長いと、“寄り目”が戻らなくなってしまうことがあります。

目の病気:早期発見の意義

視覚の変化は緩やかに進行することが多く、気付きにくい特徴があります。
特に以下のような方は、視覚の変化に注意が必要です:
- デジタル機器を長時間使用する方
- 糖尿病や高血圧などの基礎疾患をお持ちの方
- 視界のかすみや目の違和感を感じる方
- 目の病気の家族歴がある方
片方の目を隠してみてみることが、大事です。

参考文献
- Askarian B, Ho P, Chong JW. Detecting Cataract Using Smartphones. IEEE J Transl Eng Health Med. 2021 Apr 20;9:3800110. doi: 10.1109/JTEHM.2021.3074597. PMID: 34786216; PMCID: PMC8580365. https://doi.org/10.1109/JTEHM.2021.3074597
- Pucker, A.D., Kerr, A.M., Sanderson, J., Lievens, C., 2024. Digital Eye Strain: Updated Perspectives. Clinical Optometry 16, 233–246. https://doi.org/10.2147/OPTO.S412382