2023.4月〜 新しい機械を使えるようになりました。

2025.4月21日〜 日本で承認された近視進行抑制点眼薬を使えるようになりました。


小児の近視に対する研究は世界中で進んでいて、眼科関連の学会でも重要な話題になっています。
「眼光学」の分野:
まだわかっていないことも多いです。現時点での最新の知識を共有します。
(近視に関して、2018開院時から今まで書いてきた内容のまとめです)
目の検査は、視能訓練士が担当します。
近視進行抑制(予防):
「こどものうちに安全にしてあげられること」を、お話ししています。
診察時には、お聴きになりたいことを全部聴いてください。
診察時に使っているスライド:
https://www.icloud.com/keynote/07b6Xo3524zr28pMJfbHAp-tw
年々進む「子どもの視力低下」寝ている間に防げる!?【シリタカ!】
2024.5.20放送 KBC NEWS in JAPAN 出演:
https://youtu.be/JbLoxDcXwR4?si=Hi9HQVjA7HpNg8zJ&t=269

こどもの近視:説明の方針

近視がなるべく進まないように:小学生のうちに、こどもにしてあげられること

近視進行抑制とは:
成長が止まるまで伸び続ける「目の長さ(眼軸長)」を、なるべく長くしないことです。
- 2時間以上の外遊び
- 低濃度アトロピン点眼
- オルソケラトロジー
近視の分野の研究に関して、科学的根拠のお話をしています。

低濃度アトロピンによる
近視進行抑制治療
科学的根拠に基づいた、こどもの目のための有効な選択肢を理解する

“目が悪くなる” = 近視が進む = 「目の奥行き(眼軸長)が伸びる」

「近視ブーム」
2015年にNature誌から





リジュセア®ミニ点眼液0.025%(自由診療)
点眼開始後は眼鏡・CL処方も含めて、自由診療となります。
低濃度アトロピン点眼液による近視進行抑制治療を行う際の注意点(2025.4.11 日本眼科医会 社会保険 総務企画 資料より)
弱めに合わせたメガネ:近視が進む(“目が悪くなる”方向へ)

「メガネをかけたら目が悪くなるって思っています」
→今は常識が変わっていました





以上の研究結果を前提に、なるべく「完全矯正」のメガネを合わせるようにしています。
理論と現実(こどもの希望 等)との違いもお話しながら、
かけてみてきつくないかなど、視能訓練士が検査をおこないます。
視力検査はどのくらいのタイミングで
「弱めの度数のメガネ/合わないメガネをかけ続けてたら、近視は進行する」
こどもは、
「メガネで見えづらくなった👦」と言わないようです。
メガネで見えてる?って聴いたら、「見えてる👧」と答えるようです。
その間に近視が進んでいて、合わないメガネになってしまっているかもしれません。
弱めのメガネをかけていると、近視が進む(=眼軸が伸びる)ことがわかっています。
- 眼軸の伸びかたの程度は?
- メガネが合わなくなってないか?
成長の間は、2-3か月くらいで視力検査してあげるのが良さそうです。
近視が進んでいたら、なるべく完全矯正になるようにします。
「完全矯正の状態にしておくこと」も、近視進行抑制に大事です。

メガネは授業中だけ?スポーツするときは?

目が悪くなってきて、
いつからメガネをかけたら良いでしょうか..?
授業中だけかけたら良いでしょうか..?

度の合ったメガネを買ってあげて、「みえる😀」ってうれしくなるかな。
メガネをかけるかどうか、こどもさん自身が決めるのが良さそうです。

スポーツ用のメガネ、公式に安全性が担保されていることがわかりました。

「スポーツ用メガネは危険なので禁止する」ことにはつながらないようです。
スマホ・タブレット・ゲームは時間制限? →ときどき遠くをみるといいです

“マスクなしの会話😧”
“ソーシャルディスタンス..?”
“ブランコは消毒してる..?”
→ 2020年〜 時代が変わって、今はアフターコロナの時代となりました。

スマホ・タブレット・テレビを見る時間が多い
勉強時間が長い
“近くを見る時間が長い”と、目が悪くなる理由/近視が進む原因になる:
ピントを合わせる「毛様体筋(もうようたいきん)」の状態をグラフにします。


近くを見続けることで、毛様体筋の緊張が強くなる
→眼軸長が伸びる方向へ進む
→近視が進む(“目が悪くなる”)
ときどき遠くを見る「20-20-20ルール」のお話をします。

こどもがしたいだけやって、時間を分断・少しお休み:
ときどき遠くをみると良いのでは、とお話します。
お散歩に連れていってあげたり、スポーツ・楽器など他に楽しいことがみつかったりするのも良いでしょうか。


“視力の左右差” が進む:「不同視」

近視の左右差が出てくると、数年後にその差が拡大します。
- 片方の目は、ピントがぼやけた状態になる
→眼軸長が伸びる要因となる(=片方だけ近視が進む/“目が悪く”なる) - “目が悪い” 方の、片方の目だけを矯正するのが難しい
理由:(近視になっていない/“目が悪く”なっていない)もう片方の目が、矯正無しで見えているから - 矯正できない状態が続き、眼軸長が伸びる(=近視が進行する)
1.-3.が続くことで、片方だけ近視が進んだ状態になってしまいます。
小学生の間には、メガネ・コンタクトの矯正が困難:
片方だけのオルソケラトロジーが良いかと考えます。
(自由診療のため、ご紹介するのみにとどめています)
ミドリンM(トロピカミド)の点眼・視力回復トレーニングの効果
ミドリンM(トロピカミド)には毛様体筋の緊張を緩和する、薬理作用があります。
“ワック”、 “ガボール・アイ” 等のいわゆる視力回復トレーニングも使われてきました。
いずれも、軸性近視/近視進行抑制に対して大規模な無作為化比較試験や長期追跡調査による科学的根拠は存在しません。
そのため、当院ではおこなわないこととしています。
開院当初より、現在の眼科学で科学的根拠があることのみの説明としました。
「山を見ると目が良くなる」「緑を見ると目にいい」:正しいです
どちらも、「遠くを見る」の意味でしょうか。
お茶畑の風景🍵(福岡県八女市)↓
遠くを見ること:
毛様体筋の緊張を、自然に緩和します。
「20-20-20ルール」とも共通します。
山あいの小学校には、近視が進む子が少ないようです。

ブルーライトカット:必要ありません
コンピューター用眼鏡(ブルーライトカット)は推奨しない
アメリカ眼科学会(American Academy of Ophthalmology)の2019年11月の記事・見解
小児にブルーライトカット眼鏡の装用を推奨する根拠はなく、
むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねません。
日本眼科学会・日本眼科医会・日本近視学会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会
の共同声明(2021年4月)
以上をご紹介しています。

オルソケラトロジーの近視進行抑制効果

メガネ・コンタクトは、真ん中のピントが合う
オルソケラトロジーは、真ん中とその周りにもピントが合う
そのことで、オルソケラトロジーの方がより近視進行抑制に作用するとの研究結果が相次いでいます。
オルソケラトロジー、2019年にはじめました。
わたしたちも近視抑制効果を実感しています。
:レンズ度数交換になる子がほとんどいないこと、からの“印象”です。
夜つけるコンタクトレンズのこと、将来の近視進行を抑える効果:

こどもにとっては、将来のことより いま見えるかどうかが大事でしょうか:
「メガネなし・裸眼で見えたい」自分の気持ちが強いこと、確認します。

近視の程度を測るのに、「眼軸長」の測定が不可欠です。
眼軸のデータを取りはじめて、眼軸伸長の状態もグラフで可視化できてきました。
(眼軸が伸びがゆるい=近視の進行がゆるくなっている状態)
近視が進んだら手術?
こどもの成長が終わるころ、近視の状態が固定されます。
大人になって進行が止まった目の長さ「眼軸長」は、変えることができないです。
角膜をレーザーで削る「LASIK」
眼内レンズを挿入する「ICL」
:大人になってから、近視矯正の手術を考える機会もあるかもしれません。
慎重な判断が求められます。






免疫学との違い・安全性
免疫学・分子生物学の研究に没頭していた時期(九州大学生体防御医学研究所在籍時)は、
細胞→動物→ヒトの順番に研究結果が出ると思っていました。
眼光学の世界は、ヒト(臨床研究)の多くの研究結果が先に出ています。
近視進行抑制できる理由:
低濃度アトロピン点眼により網膜より奥の層「脈絡膜」の厚みを増やすことで、眼軸長を伸ばさない方向へ進むとの理論が有力となっています。
個々の方法・理論がなぜ近視抑制に効いているのかな?を一字一句読み込んでいくと
「precise mechanism is unknown(詳細な分子機構は明らかになっていない)」
などの記載に行き着きます。
まだわからないことが多いですが、小児の近視に関しては研究が加速度的に進んできました。
2025年4月21日から、効果・安全性を担保された点眼薬を使うことができるようになりました。

よくある質問(FAQ)
- こどもの近視はなぜ進むのですか?近視が進むと何か問題がありますか?
-
近視が進む主な原因は、目の奥行きである「眼軸長(がんじくちょう)」が成長とともに伸びすぎてしまうことです。単に視力が悪くなるだけでなく、将来的に緑内障や網膜剥離といった重い目の病気につながるリスクが高まります。こどもの目の健康を生涯にわたって守るためにも、近視の進行をできるだけ早く抑えることが非常に重要です。
- こどもの近視の進行を抑えるには、どのような方法がありますか?
-
いくつか効果的な方法があります。
- 低濃度アトロピン点眼薬: 日本で承認された「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」のような点眼薬を使用します。これは寝る前に1日1回点眼することで、近視の進行を約65%抑制する効果が報告されています。副作用も少なく、安全性が高いとされています。
- オルソケラトロジー: 寝ている間に特殊なコンタクトレンズを装着し、角膜の形を一時的に変えることで、日中の視力改善と近視進行の抑制を目指す治療法です。
- 外遊びの時間を増やす: 1日2時間以上の屋外での活動は、近視の進行を抑える効果があると言われています。
2025.4月〜 こどもの近視進行抑制の点眼は、保険適応になりませんでした(厚生労働省)。
- 「低濃度アトロピン点眼薬」について、もう少し詳しく教えてください。安全性は大丈夫ですか?
-
低濃度アトロピン点眼薬は、特に0.025%の濃度が推奨されています。これは近視抑制効果と安全性のバランスが非常に優れているためです。保護者の方が心配される「リバウンド」(治療中止後に近視が急激に進むこと)は、高濃度のアトロピンでみられる現象であり、低濃度(0.01%や0.025%)ではそのリスクはほとんどないことが研究で示されています。日本で承認された安全な薬剤ですのでご安心ください。
- 低濃度アトロピン点眼薬での治療はどのように進めるのですか?
-
眼科専門医と相談しながら計画的に進めます。一般的な流れは以下の通りです。
- 初回相談・適応検査: こどもの目の状態や近視の進行度を詳しく検査し、治療が適切かを判断します。
- 治療開始・点眼指導: 治療計画に同意後、点眼薬が処方されます。ご家庭での正しい点眼方法(1日1回、就寝前)を指導します。
- 定期的な検査・経過観察: 治療開始後は、定期的に通院し、近視の進行が抑制されているか、副作用がないかなどを確認します。通常は3ヶ月ごとの検査が推奨され、眼軸長の推移をグラフで確認できます。
- 治療の継続・中止の判断: こどもの成長や近視の進行状況を見ながら、医師と相談して治療の継続や中止を決定します。通常、2年以上の継続が推奨されています。
- 日常生活で近視の進行を抑えるためにできることはありますか?
-
はい、いくつかあります。
- スマホやタブレット、ゲームの時間を制限する: 近くを見る時間が長くなりすぎないよう、利用時間に制限を設けましょう。
- 時々遠くを見る: 近くで作業をする際は、休憩中に遠くの景色を見るように促しましょう。
- 屋外で遊ぶ時間を増やす: 日中、外で体を動かす時間を十分に確保しましょう。
- 適切なメガネの使用: 近視が進むことを避けるため、度数を弱めに合わせたメガネは避けるべきとされています。適切な度数のメガネを眼科医と相談して選びましょう。
- 定期的な視力検査: お子様の視力を定期的に確認することが大切です。
小さい頃は「外で遊んでばっかりいる」がOK、「そのうちしたくなった頃から勉強する」が良さそうです。
都会で遊ぶ場所があんまりない・暑くて外に出れないなど、制限は多いかもしれません。
「お散歩行こうよー」は如何でしょうか。 - 「山を見ると目が良くなる」「緑を見ると目にいい」というのは本当ですか?
-
はい、本当です。遠くの景色を見たり、自然の中で過ごしたりすることは、目の調節機能をリラックスさせ、近視の進行抑制に良い影響を与えるとされています。
- ブルーライトカットは近視の予防に効果がありますか?
-
現在、近視進行抑制においてブルーライトカットが必要であるという科学的根拠はありません。